おしまいの日。
「笹原」
それは二限の授業が終わったタイミングだった。
担任の馬場が僕に声をかけてきた。
「はい?」
返事をしてそっちを向くと、馬場はずいぶんと似合わない表情をしていた。
似合わない表情とは真面目な顔ということ。
年がら年中、がははと笑っている豪快な先生が、ずいぶんと真面目な顔をしている。
似合わない。
こんなにも似合わないものなのか。
と、余計なことを考えていると馬場が僕の肩を掴んで促した。
「ちょっと来い」
「え? もう三限始まりますよ」
「いいから来るんだ」
僕は引きずられるように立ち上がった。
「ちょっ……ちょっと馬場先生」
「いいから」
引きずりつつ、委員長の水川に声をかける。
「笹原は俺が連れていくから。次は英語だから村田先生だよな。俺が連れていったと、そう伝えてくれればわかるから」
何だって?
何か、ひどく大事になっている気がする。
嫌な予感。
何か……。
おかしい……。
眩暈が……する。
おかしい……。
おかしい……。
視界が……崩れていく。
一体……何が……。
吐き気がして。
僕は……。
僕は……。
吐き気が治まらないうちに、僕は一つの扉の前に辿り着いた。
「校長室……」
色が……?
世界の色が……。
何だ?
気持ち悪い。
気持ち悪い。
何?
僕がいったい何をした?
「校長、笹原を連れてきました」
馬場の声が、ずいぶんとざらついたものになっていた。
校長室の中には校長と教頭。そして、英語担当の間瀬。たしか、先輩のいる二年二組の担任だ。
それと……見たことのない二人の男。
何が……起きた?
「君は二年二組の佐藤君と親しかったそうだね」
「え?」
先……輩?
「昨日、どうしていたかね。佐藤君とは会っていたのかね?」
「え……」
「どうだったのかね?」
校長はもう一度、言った。
少し疲れたような、だけど鋭い視線で僕を見た。
「な……何があったんですか……?」
校長は一つ、ため息をついてから、口を開いた。
「君には先に伝えておこうと思ったのだよ。どうか気を強く持って聞いてほしい」
校長は渋い顔で言った。
「佐藤君が死体で発見されたのだよ」




