冬の手紙。
「ららら、ららら……」
先輩が何か口ずさんでいた。
夕暮れの図書準備室。
耳聡い僕は、それを聞き逃さなかった。
流行のポップスというよりも、どちらかというと「みんなのうた_」系。
最近、アニメの主題歌なんかでそんな曲あったかな?
そう思いつつ、耳をすます。
ふと、先輩が気づいた。
自分が口ずさんでいたことに。
耳まで真っ赤になって僕の方を見る。
「聞……、聞いた?」
僕は笑いながら頷いた。
先輩の顔が一層赤くなった。
そんなに恥ずかしかったのかな?
この間行ったカラオケでは平気で唱ってたのに。
「あ……あ……」
「今の歌、何の歌ですか? あまり聞いたことない歌でしたけど」
「……」
先輩は黙ってうつむいてしまった。
ヤバい。何か地雷を踏んだんだろうか?
「オリジナル……」
そっと囁くように言う。
え?
「オ……オリジナルなんですか?」
思わず聞き返す。
先輩は真っ赤な顔のまま頷く。
「す、凄いじゃないですか、先輩」
「凄くないよ。別に。ただ口ずさむくらいだし」
「いえいえ。凄いですよ。作詞とか作曲とかって、何かやってるんですか?」
「昔、ヤマハ音楽教室、通わされたくらいよ」
「へー」
本気でびっくりした。
そして、ちょっと嬉しかった。
「詞は、どんな風なんです?」
「ま、まだできてないよっ! 全部は……」
「途中まではできてるんですね」
「馨くん、性格悪くなった」
「先輩の教えがいいので」
ぷうとふくれた先輩。
「雪の歌……」
「雪?」
「あたしね、昔は長野に住んでたんだ。雪が綺麗でね」
「雪……ですか」
「冬の手紙っていうんだ」
先輩は恥ずかしそうに言った。




