晩餐。
ここまで派手にやったら、それこそ明日だとか言ってる余裕はない。
今日だ。
今日片付けるしか。
僕は隠しておいた服に着替え、一旦市街から離れようとした。
だけど。
待て。春山ははたして、自宅に逃げ帰ったのか?
いや。
有り得ない。
有り得ない。
ふと気づいた。
ライター。
近藤のライター。
ホテルシャングリラ。
可能性は……ある。
僕は向きを変えた。
夜の闇に浮かぶガラスのホテル。
シャングリラ。
楽園という名のホテル。
「こんなところへどうしたの? ヤツらは死んだの?」
日が暮れて、先輩の時間。
「うん。三人目が死んだ」
「くすくす」
「先輩、頼みがあるんだけど」
「なあに?」
「四人目がこのホテルにいるはずなんだ。どの部屋にいるのか、見てきてくれないかい?」
「部屋が知りたいの?」
「そう。ここか、自宅かのどっちかなんだ。だから確認したいんだけど」
「わかったわ。ちょっと待っててね」
「ふう」
ちょっと疲れた。
マカロフを取り出す。
たしか、八発入るはずだよな。
弾倉を抜き、一発ずつ抜いてみる。
一発、使ってしまったから七発で間違いなし。
あの時はあわてて安全装置なんかチェックしなかったけど、当たり前のように外れている。よく暴発しなかったものだ。
もう一丁も同じように取り出す。
弾倉の中の弾丸数をチェックした後、遊底を引き薬室内の弾丸を抜く。
全部で十七発。
殴り込みには少し不十分な気がする。
せめてマシンガンとかアサルトライフル。
ついでに弾丸の切れないハリウッド仕様が望ましい。
けど。
今はこれとペッパースプレーのみ。
ガーバーのフォールディングナイフは高かっただけにちょっと悔しい。
ふう。
ガラスの城に隠れたターゲット。
あんたにとっては遊びだったのかもしれない。
だけど。
その遊びがいかに高くつくか。
思い知るがいい。
今晩中に殺してやるよ。
だけど、お腹へったな。
何か、食べたい。
ココイチのカレーかな。
うん。チキンカツのせて、チキンカツには別にソースをたっぷりかけて。
最後の晩餐?
安いな。僕。
くすくす。
つい笑ってしまう。
先輩のがうつったみたいだ。
「馨くん。いたよ。一三〇一号室」
先輩の声。
「他に誰かいた?」
「うん。廊下とかあちこちに」
「十人くらい?」
「そんなものかな」
「先輩?」
「何?」
「今日で終わります。だからごはん食べてきていいですか?」
「うん。いいよ。あたしも行く」
「じゃあ、行きましょう」
ココイチはあまり混んでいなかった。
だから、一人客だけどテーブル席にしてもらえた。
先輩は僕の前に座る。
「えっと、ポークカレーにチキンカツ乗せて。量と辛さは普通で。それとハヤシライスの量は少なめで。ついでに、コップももう一つください」
店員は不思議そうな顔をしつつうなずいた。
しばらくすると僕の前にカレーとハヤシライスが置かれた。
ハヤシライスの方を先輩の前へ。
「先輩、カレー好きじゃなかったですよね」
「うーん。そうだったっけ?」
「心配しなくても、先輩の分まで僕が覚えてますから」
「ありがと。馨くん」
くすくすと笑っている。
笑い続けている。
僕はゆっくりとカレーを平らげ、そしてハヤシライスも平らげた。
「ドラッグストア、寄っていきましょうか」
僕はそう呟いた。
先輩は嬉しそうに、くすくす笑いながらついてくる。




