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眠れぬ夜と灰色の朝。  作者: 阿月
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出会い。

「えっと……」

 僕は本棚に並ぶ背表紙を眺めながら直感を磨いていた。

 タイトル。

 本のタイトルはとても大切だ。そこに感じるインスピレーションは僕に至福の時間を与えてくれる。

 片っ端からあらすじを読んでいくわけにもいかないので、この直感は結構大切だ。

「楽園は鐘の音とともに」

 ふと、目を止める。


 これ……。

 何かを感じて手に取ろうとする。

「あ、ごめんなさい」

 女の子の声とともに、僕の手はもう一つの手とぶつかった。


「あ、す、すみません」

 僕はあわてて手を引っ込めた。

 落ち着いた雰囲気の、上級生。

 制服の衿元についた校章は赤色。だから二年生のはずだ。

 ちょっと大きめの、メタルフレームの眼鏡をかけている。

 僕は遠慮してその場を立ち去ろうとする。

 遠慮……というよりも気恥ずかしさが先に立った、というのもある。

 何にせよ、ここで立ちすくんでいるのはまずい、そう判断した。



「待って」

 呼び止められた。

「読みたいんでしょ」

「いえ、気になっただけです。内容もよく知らないですし」

「それなのに、手を出したの?」

「タイトルが気になることって、ありませんか?」

 僕のその言葉にその上級生は笑った。

「このタイトル、気に入ったの?」

「何となく、ですけど」

「ふうん。ミステリってことは知ってる?」

「いいえ」

「じゃ、読んでみて。あたしは、ネットで結構面白いって読んだから気になったんだけど、君はタイトルでぴんと来たわけだ」

「そんな時ってないですか? 本屋とかでも」

「ああ、うん。微妙……かな。表紙で買っちゃうことはあるけど」

「それは僕もあります」

 先輩はくすりと笑った。

 つい、かわいいな、と思ってしまった。

 上級生に向かって、かわいいは失礼かもしれないけど、そう思ってしまったのは仕方がない。

「君、一年だよね」

「はい。三組の笹原馨です」

「あたしは二年二組の佐藤由実。クラブは何か?」

「いえ。帰宅部です」

「ふうん。文芸部とか、どう_?」




 それが僕と先輩の出会いだった。


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