送る。
先輩が現れるのは夜だけ。
光あふれる陽光のもとには、先輩は現れない。
だから僕は一人。
町の中を歩く。
量販電化製品店。まんが喫茶。図書館。学校。ありとあらゆるインターネットに接続できる場所を回る。
やることは一つ。フリーメールアドレスの入手だ。
とりあえず、十個くらいは手に入れておきたい。
そう考えて回る。
そして。
最後に辿り着いたインターネット喫茶から、あらかじめ考えていた文面を、春山に送る。
「前略 お話したいことがあります。松岡くんのようになりたくなければ、ぜひこのメールに返信をお願いします。ただし、近藤君には秘密にすること」
さて。どう反応するか、だ。
僕はコーヒーを飲みながら待つことにする。
ついで、とばかりにまんがを取ってくる。
竹本泉の「さよりなパラレル」
全巻をパソコンの横に積んで読み始める。
適当なタイミングでメールの着信を確認する。
一巻の途中でそれはやって来た。
「意外と早かったな」
僕は呟きつつ、メールを確認する。
「誰だ、お前は」
あまりセンスのある文章ではないよな。
そんなことを思いつつ返信。
「今更、名乗る必要はないでしょう。お金の話、していいですか?」
そして写真を一枚、添付する。
松岡の写真だ。
それも、あまり趣味のいい写真ではない。
次の返信は早かった。
一瞬、と言っていい。
「何が目的だ?」
金だと言ってるのに、頭悪いな、意外と。
「別に、あなたの命を取ろうと思っているのではありません。お金の話がしたいだけです。松岡くんのようにちょっとしたお金をケチらなければ、そんなことにはなりません。それにあれは自己防衛です。それをご理解していただきたい」
「いくら欲しい?」
「五百万円ほどで結構です。それで黙っていることにします」
その後、しばらく返信がない。
僕は一旦、本を返し場所を変えることにした。
自転車で次のまんが喫茶へ。
空は蒼い。
僕はどこまで行くのだろう。
もう引き返せないのはたしか。
ただ走り続け。
ただ走り抜ける。
血にまみれて。
こう自転車を走らせていると不思議な違和感を感じる。
今、ここに歩いている人たちは何を考えているのだろう。
それぞれの人生があって。
僕の血色の人生と交わることもなく。
だけど。
ひょっとしたら修羅の人生を送っている人に僕が気づかないだけかもしれない。
ただ。
交差しない人生。
それでも、人はどこかで出会い、だからこそ。
孤独と孤独が掛け合わさって、そこに。
ド派手な建物が視界に入った。
ゴールのまんが喫茶に辿り着いた。
早速アクセスしてみるとすでに四通のメール。
せっかちなヤツだ。
「受け渡しはどうするんだ?」
「なぜ返事しない?」
「何のつもりだ?」
「さっさと返信しろ」
ふう。
まさにタメイキってところだ。
「焦らない。焦らない(^0^)」
「どういうつもりだ?」
「こちらにも事情はあってね。明日の午後七時、オアシス21で待ってる」
「おい? いきなり明日だと?」
もう返信はしない。
これで終了。
やるべきことはやった。
帰ろう。
僕はその考えを実行した。




