焦り。
朝のワイドショーはいきなり衝撃的なニュースからスタートした。
松岡の死体が見つかったのだ。
「ちっ」
思わず舌打ちをする。
まだ見つからないはずだった。
これでは、きっとヤツらに警戒される。
素知らぬ顔のまま、父さんの出勤を見送ると、僕は学校に電話した。
そして休むことを伝える。
声を枯らして、ひどい熱があることにして、二、三日は休むことにした。
どうせ。この二、三日でケリをつけないと。
とりあえず、私服で家を出る。
倉庫から古びたヘルメットを取り出し、母さんが使っていたスクーターを引っ張り出す。
そしてエンジンをかける。
さすがに、かかりがよくない。
何度もキックしてようやく軽快な音になる。
安物だけど、一応革製のグローブをして走り出した。
手段は考えていない。
さて、どうするか。
千種区の辺りは坂が多い。
だからわざわざこんなスクーターをひっぱりだしたんだけど。
春山の家を探しててれてれとスクーターを走らせる。
すると、高台の、一際大きな家が目に入った。
表札にはローマ字でHARUYAMA。
僕はそのまま素知らぬふりで通り過ぎる。
忍び込む、か。
とりあえず、近所の公園か、駅かスーパーか。
スクーターを置く場所を探そう。
幸い、近所に大きなスーパーマーケットがあった。
僕はそこにスクーターを置く。
ヘルメットをしまい、徒歩に切り替える。
ついでに、入り口のラックにあった無料情報誌を二十冊ほど掴む。
それを小脇に抱え、今度は徒歩で春山邸へ。
一応、ポスティングのアルバイトのふりをしてみたのだけど。
どこまで、ごまかせるやら。
春山邸の裏側の方を目指して歩く。
すると、そこには高い壁。そして監視カメラ。
セキュリティはばっちりという雰囲気だ。
さて、どうする。
どうするんだ?
どうするあてもなく通り過ぎる。
途方に暮れて、日が暮れた。
まさにそんな感じだった。
ついでに足を伸ばして、最後の一人、近藤の家の方へと行ってみた。
こちらもかなり大きなお屋敷だった。
こちらも高い塀に覆われて手も足も出ない。
やはり、家にいる時、というのはターゲットにできない。
そう結論づけるしかない。
僕がスーパーヒーロー並みに身が軽かったり、もしくはアメリカ映画のヒーローみたいに大量の銃火器を持っていたならば。
決してその限りではないのだが、それは僕にとっての幻想だ。
そんな幻想にうっかり乗ってしまったら、そこには最悪のケースが待つ。
もっとも残り五日。
無茶はできないとは言え、のんびりもできない。
どうする?




