団欒。
「お帰り」
帰ると父さんが帰っていた。
ビールを開けて一杯やっている状態だった。
テレビの画面は日本シリーズ。セ・パの決戦。
テーブルの上にはコロッケやアジフライが乗っている。
母さんが死んで以来、こういう食卓になることが多い。
まあ、仕方ないことだと思っているけど。
たまには僕が作ったりもするけど、最近はそれどころじゃないし。
「ただいま」
僕はそのまま炊飯器のふたを開け、ごはんを茶碗によそう。
そして、テーブルにつき、アジフライにこいくちソースをたっぷりとかけ、ごはんの上に乗せる。
さんざん遠回りをして、ひたすら歩いたのでごはんがうまい。
「遅かったな」
「大須をのぞいてきた」
「また、ゲームか?」
「ん? まあね。ちょっと探しているゲームがあってさ。アマチュアが作ったヤツ。ネットで評判がいいんでほしくてさ」
「まあ、たいがいにしとけよ」
最近、父さんはあまり僕にうるさいことは言わない。
多少、帰りが遅くても、むしろ吹っ切るための夜遊びだと思っているらしい。
「最近、お前、独り言多くないか?」
「うん? そう?」
僕は味噌汁を飲みながら首をかしげる。
「ああ。結構ぶつぶつ言ってるぞ」
その時、先輩が微笑みながら、父さんの脇に現れた。
僕を指差してくすくすと笑っている。
「気をつけるよ」
「くすくすくす」
先輩は笑う。
父さんは気づかない。
僕は笑みを押さえることができない。
二人だけの寂しいテーブルが少しだけ明るくなる。
絶妙なタイミングでテレビから快音。
外野手が体を伸ばすものの、打球はその上を越えていく。
「やったーっ」
父さんが思わず叫ぶ。
「よぉーっし」
付き合いで僕も叫ぶ。
そんな家族の団欒を先輩は笑いながら見ていた。
僕の隣で。
それが現実なら、どれほどよいことだろう。
どれほど幸せなことだろう。
だけど。
僕はそれが幻想だと言うことを知っていた。
それも、あと、ほんの何日かしか続かない幻想。
いいさ。
僕は。
でも、父さん。
ごめん。
本当にごめん。




