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眠れぬ夜と灰色の朝。  作者: 阿月
23/35

団欒。

「お帰り」

 帰ると父さんが帰っていた。

 ビールを開けて一杯やっている状態だった。

 テレビの画面は日本シリーズ。セ・パの決戦。

 テーブルの上にはコロッケやアジフライが乗っている。

 母さんが死んで以来、こういう食卓になることが多い。

 まあ、仕方ないことだと思っているけど。

 たまには僕が作ったりもするけど、最近はそれどころじゃないし。

「ただいま」

 僕はそのまま炊飯器のふたを開け、ごはんを茶碗によそう。

 そして、テーブルにつき、アジフライにこいくちソースをたっぷりとかけ、ごはんの上に乗せる。

 さんざん遠回りをして、ひたすら歩いたのでごはんがうまい。

「遅かったな」

「大須をのぞいてきた」

「また、ゲームか?」

「ん? まあね。ちょっと探しているゲームがあってさ。アマチュアが作ったヤツ。ネットで評判がいいんでほしくてさ」

「まあ、たいがいにしとけよ」

 最近、父さんはあまり僕にうるさいことは言わない。

 多少、帰りが遅くても、むしろ吹っ切るための夜遊びだと思っているらしい。

「最近、お前、独り言多くないか?」

「うん? そう?」

 僕は味噌汁を飲みながら首をかしげる。

「ああ。結構ぶつぶつ言ってるぞ」

 その時、先輩が微笑みながら、父さんの脇に現れた。

 僕を指差してくすくすと笑っている。

「気をつけるよ」

「くすくすくす」

 先輩は笑う。

 父さんは気づかない。

 僕は笑みを押さえることができない。

 二人だけの寂しいテーブルが少しだけ明るくなる。

 絶妙なタイミングでテレビから快音。

 外野手が体を伸ばすものの、打球はその上を越えていく。

「やったーっ」

 父さんが思わず叫ぶ。

「よぉーっし」

 付き合いで僕も叫ぶ。

 そんな家族の団欒を先輩は笑いながら見ていた。

 僕の隣で。

 それが現実なら、どれほどよいことだろう。

 どれほど幸せなことだろう。

 だけど。

 僕はそれが幻想だと言うことを知っていた。

 それも、あと、ほんの何日かしか続かない幻想。

 いいさ。

 僕は。

 でも、父さん。

 ごめん。

 本当にごめん。

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