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眠れぬ夜と灰色の朝。  作者: 阿月
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廃墟の場所は?

 腹が減って目が覚めた。

 起きたら、すぐに出かけるつもりだったが体はそれを許してくれない。

 そう言えば何も食べてないな。

 僕はとりあえず、一階へと降りていく。


 戸棚や冷蔵庫を漁る。

 すると冷凍庫に有り得ないほどのストック。

 カレーピラフやグラタン、ドリアなどの冷凍食品が山積みになっていた。

 カップ麺よりはこっちを食え、という父さんのメッセージなんだろう。

 ありがたくカレーピラフを皿に盛り、電子レンジに放り込む。

 リビングは静かで、僕は改めて孤独という事実を突き付けられる。


 母さんは五年前に死んだ。

 それ以来、この家は僕と父さんの二人きりだ。

 誰もいない家。

 それがこの家だ。


 だけど、先輩は今の僕以上の孤独を味わっている。

 まったく、先輩が何をしたっていうんだ。

 殺されて、あげくに孤独な幽霊生活。

 孤独は苦しい。

 僕はそれを知っているつもりだ。

 だから、奴等を許さない。

 絶対に。


 テレビのワイドショーではまだ先輩の話をしている。

 これだけ報道していて、何も新しい情報はない。

 警察は何か新しい手掛かりを得たのだろうか?

 それが気になる。

 さて、時間はまだ昼を回ったばかり。

 とにかく行動あるのみ。

 僕はテレビを消してでかけることにした。

 まずは、お化け病院から。



 僕は錆びたトタンのフェンスの前に自転車を止めた。

 お化け病院という名はここが地元では有名なミステリースポットであることに由来する。

 夜歩く看護婦(正確には看護師というべきなんだろうけど、それでは雰囲気が出ない)や、闇の中にぽつんと立ちつくす寝間着姿の子供とか、噂は絶えない。

 とりあえず、僕はフェンスの裂け目から中に入ってみる。


 案の定、というか当然というべきか、建物の壁は一面落書きだらけだ。

 肝試しやら何やら、理由をつけて遊びに来た連中が書きなぐったものだ。

 昼なお薄暗い中、僕は建物の中へとわけいっていく。

 あちこち崩れた壁はまさしくお化け屋敷。

 何があるのか。

 当てはない。

 強いて上げれば、証拠が欲しい。

 ここで暴行が行われたという証拠。

 そしてとりも直さず、それは犯人達への手掛かりとなる。

 

 

 そう思い、目を皿のようにして探す。

 けど、何もない。

 あったのは、瓦礫の山と、ビールの空き缶。

 それと、何が書いてあるかもよくわからないぐらい、ぐすぐずになった雑誌くらいだ。

 血痕なんて、これっぽっちも見つからない。

 

 

 そして、一時間ほどたって、僕はあきらめることにした。

 

 今日、回るべきはここだけじゃないのだ。

 だから。

 僕は戻って自転車にまたがる。

 

 

 途中、コンビニで喉を潤し、そして公団住宅の方へと向かう。


 こちらはまるで墓場のようだった。

 伸び放題の草と窓に打ち付けられた板が悲しみを誘う。

 僕は自転車を降り、敷地内へと入っていく。

 町中だというのに、工事用のフェンスと四棟もある建物のせいで、奥に入れば、それこそ叫んでもわからないだろう。

 とりあえず、一棟ずつ歩いて回る。


 何か、を期待して。

 けど、ここはお化け病院以上に何もない。

 死を思わす痕跡も。

 ただあるのは風に吹かれて崩れるのを待つだけの生活の跡。

 プラスチックのボールは変色し、ひび割れて。

 それでも土に帰ることもできず、ただそこにある。

 ため息しかでてこない。


 廃墟……違いなのか……。

 僕は敷地を出た。

 もちろん、僕が見つけられなかっただけで、現場がこのどちらか、という可能性は捨てられない。

 だけど、何となく違う気がした。

 例えばどうだろう。

 ここにミニバンっぽい車を乗りつけたとしたら。

 前沢のお化け病院だってそうだ。

 かなり目立つ。

 最初から殺すことを考えてたわけじゃないとはいえ、人目を避ける必要でここを選んでいるはずだ。

 だとしたら。

 そういう場所。車を隠せる場所。

 逆にそこが犯人と何か関係のある場所だったらどうなる?

 女の子を連れ込んで遊ぶための場所としては使えても、殺人となるとさすがに使えない。

 だとしたら?

 隠しきれないと判断すればどこか別の場所に死体を捨てに行くことも有り得るのではないか?

 車。廃墟。

 ちょっと待て。

 一つ、有り得る場所を知っている。

 僕は自転車のペダルを漕ぐスピードを上げた。

 それは、ここから十五分くらいの場所だった。


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