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そこは異界の騎士学校  作者: ◆smf.0Bn91U
魔法と魔族編
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いつの間にかの騒動の終わり

 昨日うまくいかなかったので更新できませんでした……。

 ですが今日の話で完結です。


 本来は二話に分ける程の量なのですが、区切るべき場所が見当たらなかったので、一話にまとめました。


 最終話でネタバラシ回だからと長くなりました……。

 どこからが夢で、どこからが現実なのか。


 それが少し、あやふやだった。


 ……あんな出来事があった翌朝……俺達は全員、それぞれの部屋で目が覚めた。


◇ ◇ ◇


 単純な話だ。


 あの修練場は魔法が使えた。


 そして相手は、夢を司る魔族。




 きっと、手を広げて、こちらの意見を聞いてきたあの時には……魔法の発動を、終えていた。




 後は静かに、その魔法が浸透するのを待つだけだったのだろう。




 ……そう。


 俺達はあのまま、あの賢狼の魔法によって、眠らされた。


◇ ◇ ◇


 翌日、街は大騒ぎだった。


 街にいた実に八割もの魔物と喚ばれていた魔族達が、一斉に姿を消したのだから。


 きっとその中には、拘束や監禁をしていて、一人で逃げ出せるはずがない子もいただろう。


 しかしそれを、声を大にして言うわけにはいかない。


 きっとそれは、街の条約に違反しているから。


 だから自分たちが夢の中で操られ、逃したことすらも忘れ、どうして逃げたのかの深い検証を行うことも出来ず、ただ騒ぐことしか出来ない。


 魔傷石の影響下でも、通信魔法は使える。

 それは魔族であろうと例外ではない。

 きっと街の魔族たちはそれを用いてお互いに連絡を取り合い、今回の騒動を起こした。


 森の中に現れたのだって、魔法が使える範囲に届き、その魔法を使って侵入してきたからだ。

 思えばあそこで賢狼と戦いになっていた場合、逃げようとしていた魔物全てと戦うことになっていただろう。

 もしかしたらそれすらも見越して、あの賢狼は俺達を眠らせ・無力化し・そのまま夢中の操作魔法を用いて、俺達を帰らせたのかもしれない。


 ……人が魔族に敵うわけがない。


 戦いになっていれば、大勢の魔物を相手にすることに、負けていた。

 最悪殺されていた。


 人と魔族の戦いの時もきっと同様だっただろう。

 だから人は魔傷石を生み出し、魔族を無力化し、数に物を言わせて追いやった。


 戦いは、事前準備が物を言う。


 きっとリフィアが一人の魔族を倒してみせたのには、そうしたカラクリがあったはずだ。


 対峙して分かった。


 アレはいきなり相対して、勝てる存在ではない。


 相手を知り、知恵を絞り、ようやく勝てる要素が顔を覗かせる。


 それが魔物という存在だ。


 ソレにリフィアが勝てたということは、彼女は間違いなく事前準備を行っていたということ。




 つまりリフィアもまた、今回の件のどこかを“噛んで”いた。




 だからやってくる魔族を知り、事前準備を行い、人格すらも入れ替えて、魔法を使ってくる強敵を相手に、一対一で勝ったのだろう。


 今回の騒動において俺達は、何の準備もしていなかった。


 むしろもし次に会うことがあれば、逃がしてもらえてありがとう、と相手に言わなければいけない立場になったという訳だ。


◇ ◇ ◇


 目が覚めてから真っ先に向かったのは、修練場奥の森だった。


 頭の中で断片的に出てくる想像。

 大量の物語を読んだからこその妄想。


 それらが全て正しいのかどうかの判断をしたかった。


「そっから先は、進まんといて欲しいねんけど」

「……これは、驚いた」


 朝陽が昇るよりも速くに向かったのに誰かに見つかったから……ではない。


「まさか、帰って無いなんてね……ララちゃん」


 獣耳に見える髪型をした少女が、見慣れた制服姿のまま、これから俺が進もうとしていた先にいたからだ。


◇ ◇ ◇


「制服ってことは、まだ在籍してるってこと?」

「もちろんや」


 なるほどね……。


「それで、どうして進んじゃダメなんだ?」

「どうせ、魔傷石がそのままなんか見に行くつもりなんやろ?」

「アレが修復されてたら、それだけで昨日の出来事が誰の企みなのか分かるからね」

「それやったら、見に行かんでも同じちゃうん?」

「いいや、もし修復されて無かったら、貴族たちの格好の攻め口だ。それを理解して残していたのなら、“この学校は本当に無関係だった”ということになる」

「……そこまで察してるなんて……アンタどういう頭してんの?」

「ただ、想像とか妄想を働かしただけだ」


 そもそも、おかしいとは思っていた。




 どうしてリフィアと魔族の戦いが、噂話程度で済んでいるのか。




 普通戦いというのは、大きな音が鳴るものだ。

 しかも相手は魔族。

 その魔法の規模によっては、轟音を鳴らして大地を大きく揺らしていてもなんらおかしくはない。

 昨日のクーデターのような戦いにすらならなかったただの騒動ですら、かなりの光を放っていたのだ。

 それが戦いとなれば、何かしらの鳴動が起きていなければ矛盾していることになる。


 それなのに誰も、その戦いを直接は見ておらず、噂話を聞いたからと言っていただけ。


 そこに違和感があった。


「リフィアと魔族との戦いがどこで行われていのか、誰も明確には答えられない。間接的に聞いただけだから詳しくは知らない。そんなことあるのだろうかと最初は思った」

「最初は?」

「でも、魔法のことを知っていく内に、音とか意識とか、そういうものを遮断する魔法がこの学校全体に起動させられていてもおかしくないと思って、気にしなくなった」


 なんせ訓練場では魔法が使えるのだ。

 そして通信系の魔法なら魔傷石の影響下でも大丈夫ときた。

 俺が詳しくないだけで、それらを組み合わせた魔法があってもおかしくはないと考えたのだ。


「今回の騒動の時だって、俺達以外が出てこなかったのはそういうことだろ? 意識して見ていないと何も認識できない。誰も学校内で魔法を使うはずがないと考えている。魔法が使われることは意識の外。だから誰も分からなかった」

「せやったら、なんで学校側にも関係があるって思えるん?」

「警備員さ」

「警備員?」

「俺も聞いた話だけど、この森の向こうは街を覆う外壁なんだろ? そこから誰かが侵入してきても、修練場の出入口になっているところに人を置いておけば大丈夫。そういう考えがあるそうじゃないか。でもそれが昨日、いなかった」


 これもまた、意識していなければ気付かないこと。

 きっと話を聞いたばかりで、警備員は何をしているんだと、初めて確認する存在だから意識が向いていたから俺は気付けた。

 多分、マリンやカシェル達は気付いていない。


「そこで、もしかして、って思ってさ。現にここに来るまでもいなかった」

「……それだけで、学園が絡んでるって思うんはさすがに無理やない?」

「そこでララ、君だ」

「ウチ?」


 首を可愛らしく傾げる彼女が立てているその耳のように、指を一本立てて気付いたことを話す。


「ああして多くの魔族を連れて帰る魔法の準備が、ララ一人で学校側にバレずに出来るとは思えないってこと」


 あんな大規模なもの、例え魔傷石がいずれ破壊されることが分かっていようとも――準備している間は魔傷石で発動できないものであったとしても、学校側が気付かない訳がない。


 気付いて無視していた、と考えるのが自然だ。


 そう考えると、学校側が俺に対して何のアプローチもしてこなかったことも、より納得できる理由を作ることが出来る。


 最初は俺に事情を聞くことで、「ただの噂話」が「信憑性のある話」になるのがイヤだから何も言ってこないのかと思っていた。


 でも違う。


 学校側は、森の中の魔傷石を壊せた段階で、目的を果たしていたのだ。


 その後リフィアが魔族を殺したことなんてどうでも良い。

 街にいる迫害された魔族を帰せれば、それで良かった。


 何故そう考えた方が納得できるのか?


 それは、学校側の魔傷石の扱いにある。


 自分たちのエリアにあるのに、積極的に検査をすることがない。

 いずれ卒業することになる貴族の子供たちにさせている。


 そこがやはり、おかしいのだ。


 伝統だとか将来のためだとか、確かにそういう貴族の主張もあるのかもしれない。

 しかし本当に魔族を遠ざけたいのなら、自分たちのエリアにあるその石を、積極的に守ろうとする方向で貴族と争うはずだ。




 しかしそうではない方向で、学校側は貴族たちと対立している。




 どうして対立しているのか?

 何で争っているのか?


 それがきっと、この一件。


 魔物を帰したくない貴族と、魔族を帰したい学園……双方ともに他国が攻めてきた時に戦うための戦力が欲しいから学校は必要だが、こと魔物に関してのスタンスだけが、食い違っている。


 だからお互いが交じるココが、今回の騒動の中心になったのだ。


 街の端っこにあるこの学校で転移魔法を使う事自体もおかしい。


 逃がしたいのならもっと、街の中央で行うべきだ。


 それをしなかった理由もきっと、学校側が協力しているから隠蔽しやすく、達成しやすいから。


 その証拠に、ララすらも学校に在籍したままだ。


 だからそう考えたほうが、色々と納得できるのだ。


「……なんや。じゃあ、ウチのミスってことかいな」

「でも、気付かれて困るってことでもないんでしょ?」

「まあ、それでリフィアに何か出来る訳でもないしな」

「どうして? そんなの、学園長の所に乗り込むかもしれないだろ?」

「そんなことせぇへんよ。だってアンタ、ウチらに協力してくれるんやろ」


 それは、意外な言葉だった。


「なんでそう思うんだ?」

「だってそれが、ウチが戻らんかった理由やから」


 言って、俺の目の前まで移動してくる。


「アンタ――というか、アンタの元々の人格か? ソイツが、ここの石を壊した同胞を殺したって話やろ?」

「らしいね。もちろん知らないけど」




「それ、殺して無いんやって」




「はっ!?」


 思いもよらぬ言葉に、修練場に響き渡ったのではと思わせるほどの大きな声が出た。


「昨日来てたビスリタ――あの、ナイトメア族のおっちゃんに教えてもらったから、間違いない」

「いや……でも、それは……だったら、今どこに?」

「この学校のどっかに、封印されとるらしい。それを探すために、ウチは来た。だってその同胞ってのは……ウチの兄貴やから」


 同胞が……実は兄。

 今まで隠していたのは、信用出来なかったから。


 でもこうして打ち明けてくれたのは……信用、してくれたから。


「どうも魔傷石を壊して魔法が使えるようになったからって調子に乗ったらしくてな……それを止めてくれのたがリフィアやってんで。それなのに殺さんと封印してくれた。そうやって人格すら変えてまでな。だから……その……今まで勘違いしてて、ごめんな」

「……まあ、俺がやった訳じゃないから全く気にして無いから良いけど……」

「でな、頼みがあんねん」


 そっから先は、聞かなくても分かる。


「協力、してもらって良いか? えっと……リフィア、じゃない誰か」

「リフィアで良いって。でも、良いのか? そんなこと頼んで」

「アンタは信用できるからな」

「でも、殺さなかったのはあくまで身体の持ち主であって、俺じゃないぞ?」

「やとしても、ウチ等相手に対等にやり取りしてくれてるやろ? 今までの積み重ねもそうやけど、それ以上にそうやって話を聞いてくれる事自体が、何よりの証拠や」


 そう言われたら、何も言い返せない。


「で、どうなんや?」

「……もちろん、協力するよ」


 実は殺していない。

 どこかに封印されている。


 もしかしたらそう……そこにこそ、こうなって人格が入れ替わった原因が、見つかるかもしれないから。


「ただ当然、俺がこうなっている原因も、一緒に探してくれよ? 魔騎士科の生徒さん」


 しかも、魔法に詳しい魔族のお供付きだ。

 協力しない理由がない。

 これで一気に、戻れる可能性が高くなる。


「そんなん当たり前やん。お互い、持ちつ持たれつやで」


 きっとこれも、マリンの嫌う打算なのかもしれない。

 でもここには間違いなく、お互いの利害関係の一致以上の、信頼関係があった。


 その証拠にどちらとも無く、自然と手を差し伸べ合い……お互いの手が、繋がれたのだから。

 文庫で言うと一巻分に値する部分はこれで終わりました。

 しかし二巻分に値する部分をいつ投稿するかは分かりません。

 前の「現実ネトゲに~~」と同じで続編の予定が今のところ無い……。


 次はやられ役でしかなく良いところが全く無かったナーディアートさんをメインに据えるつもりでしたが……申し訳ないです。


 意識遮断してるはずなのに、同室でも友人の友人の噂話好きでもないのに、朝から噂があると突っかかってきたその理由とか、その辺の所から広げるつもりで準備してましたが……すいません。


 次いつか書く時があれば、まずはその二巻目とこの一巻目を繋ぐために、短編から更新しようと思います。




 では、今まで応援してくださり、ありがとうございました。

 二巻目を書く時は新しくタイトルを付けるので、コレはコレで閉めさせてもらいます。


 評価してくれた方、お気に入り登録してくれた方、本当にありがとうございました。

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