ララと言う名の獣耳少女
昨日更新できなかったので二話更新……としたかったのですが、あまりにも話数が掛かりすぎてきたので、二話を一話に圧縮したまま更新。
正直どこで区切れば良いのかも分からなかったというのもありますが……。
あ、あと完治した感があるので、明日もちゃんと更新します。
「……関西弁、っぽい……?」
「はぁっ!?」
いや、言葉遣いなんてどうでも良い。
なんか可愛いからどうでも良い。
……わかってる。
睨まれてるのはわかってる。
それでもやっぱりこの子は、可愛いのだ。
本人は本気で怒っていて、本気で攻撃してきて、本気で殺すつもりだったのだろうが……怒っているその顔までもが、動物っぽくて良い。
そうか……魔物ってのはこういう子のことを言うのか……一気に魔物を差別する理由なんてどこにもない気がしてきた。
「なんやアンタの、そのやんわりとした笑みは! ララは今本気で怒ってるんやぞ!」
「まあまあ、ララ。そのへんで」
と、止めに入ってくれたのはカシェルだった。
「こっちはお願いする立場なんだし、そのへんにしとかないと」
「だからなんで! 同胞殺した奴に協力してもらわないかんのやって!」
「いやだから、この人は何て言うか……違うっていうか……」
「違う!? 何が違うって言うん!? 今日ずっとそう言うてるけどずっと誤魔化してるよねっ!?」
そうか……カシェルはちゃんとこちらのことを気にして言わないでいてくれてるのか……言った方がすぐに説明出来るって言うのに。
噂話を入れればすぐに広めるスピーカー、って判断は改めた方が良いかもしれない。
「気を遣ってもらったところ悪いけど、話しちゃおうか」
「え? 良いの?」
「じゃないと、このままじゃあこちらが協力できそうもないし」
その俺の提案に、今度は何故かカシェル自身が口元に手を当て何か思案する。
「? どうかした?」
「……あたしも聞いておきたいんだけど、どうしてリフィアは、そこまでして協力してくれるの?」
……なんか、さっきも似たようなことを別の友人から聞かれたような気がするな……。
「そうや! それが怪しいんや!」
小柄さに拍車をかけた獣耳が斜め下からビシっとこちらを指差してくる。
「同胞を殺しといてララに協力する理由なんてどこにもない! やっぱり何か企んでるんやろっ!」
「あ~……まあ、企みがあるって言えば、あることになるのかな……」
「やっぱり!」
ムキー! と髪の毛を逆立て怒りを露わにする。
……あぁ、ヤバいなぁ……この子可愛いなぁ……家で飼ってたネコを思い出すわ……ここまで分かりやすい子じゃなくてむしろ無愛想な子で、母親にしか懐いて無かったから好きでもなんでも無かったけど。
あの子もこの子ぐらいからかったり遊んだら反応してくれる子だったら俺もきっと動物が好きに――
「なんでコイツララを見て遠い目してるんやっ!?」
――っと、また余計なことを考えてしまっていた……ホームシック的なアレかな?
まあともかく、誤解は解消しておくべきだろうと、一つ咳払いをして話をする。
「もちろん、こちらが協力する理由はある。協力して成功して、カシェルが助かった暁には、ある人を紹介して欲しいの」
「紹介?」
「そう。魔騎士科の生徒を一人、お願いしたいの」
俺の言わんとしていることがすぐに分かったのか、あっ、とした反応を見せてくれる。
きっと「元の自分に戻るためのアプローチ」だと察してくれたのだろう。
「なんや? それやったらララってことか?」
「え? キミって魔騎士科なの?」
「当たり前やん! 朝の訓練の時に会うたこと無いやろ?」
……言われてみれば、確かに。
そうか……てっきり全学科が参加しているものかと思ってたけど、あの早朝自主訓練には魔騎士科の人はいないのか。だだっ広くてかなりの人数がいるから勘違いしていた。
それじゃあもしかして、午後からの訓練という名のシゴきも、貴族と同じで自由参加とかなんだろうか……? そこでも見たこと無いし……。
「……あっ! じゃあ、ララがアンタに紹介されたら、それでカシェーの負担が無くなるってことやなっ?」
「いや、成功した暁になんだから、成功したらキミは逃走してるってことになるし、ってことはこちらの頼みは聞けないってことになるだろ?」
「あっ! ……いや~、バレてもうたか~……」
……今“素”に「あっ」って言ってたけど……バカな子なのかな?
……まあそれもまた可愛く見えるからそれはそれで良いか~……。
「そういうことだったら、分かった」
「さすがのカシェルでも、裏がないと手伝ってくれるのはおかしいって思う?」
「嫌なことにあたしは商人の娘だからさ。無償で誰かに手伝われて作られた借りをそのままにしてると、なんとなく怖くなってくるの。利子とかふっかけないって分かってても、やっぱりさ。だからこっちとしても、人脈とはいえ利用してもらえたほうが安心するって訳」
利害が無ければ不安になるという部分では、俺とカシェルの考えはおそらく近い。
マリンの話す元の身体のような聖人君子に対し、スゴいと純粋に思えず少し不安を感じてしまうのも、きっと同じだろう。
「いや何か決定事項みたいに言うとるけど、ララは協力してもらうなんて言うてないで!」
「でももうララのこと話してるし、ここは引き込んどいた方が良いんじゃない?」
「勝手に話したんはカシェルやろっ!?」
「それはそうだけど……でもあたしが信頼できる人だったら良いって言って任せてくれたのはララ自身でしょ?」
「ぐっ……! 今その話を持ち出すんは卑怯や!」
卑怯……ではないと思うが……。
「まあまあ、二人共」
とりあえず、少なくなっていく昼休みの時間を、カシェルとララの口論でさらに消耗するのは得策ではない。
「とりあえず、こちらの事情を軽くだけと話すよ。こちらとしてもその子をちゃんと返すつもりだし、そうして成功する分には、話したところで特に問題になるとは思えないし」
「はんっ! それを話してもらえて、それでララが納得する思うてるん!?」
「納得はしないかもしれないけど、とりあえず今回のことだけは協力させても良いかなって思ってもらえるとは思ってる」
「はぁ? なんやそれ」
「端的にいうと、キミの同胞を殺したのは“俺”じゃない」
まるで責任転嫁にも聞こえるその言葉に、ララは顔を真っ赤にした。
「なんっ……や! それっ! そんなんでララが納得すると――」
だけど――
「キミの同胞を殺したのは、この身体と、この身体に元からいた人格だ」
――そう続けるとすぐに、「……は?」と、とりあえず話を聞いてくれるような態度を取ってくれた。




