逃げたがっている魔族の子
一応、明日も更新するつもりですが、まだ完治していないので何とも言えません……。
明日ちゃんと更新していれば、治ったものだと思ってくだされば幸いです。
彼女の手を引いて、自信を付けさせなければいけない。
マリンだからこそ出来ることなんだと――マリンにしか出来ないことなんだと、自覚させなければいけない。
「――あの――」
「ちなみに最初から言っておくが、マリンだから手伝ってほしいんだからな。他に手伝ってもらえる相手がいないとか、そんな理由じゃない」
「――…………」
言うつもりだっただろうことを先読みし、封じてやる。
「マリン、お前は絶対に、足手まといになんてならない」
「……そこまで言われたら、断れる訳ないよ……。不安は、不安だけど……まあ、やれるだけのことは、やってみる」
そこまでしてようやく、マリンから正式な協力も取り付けることが出来た――
「お待たせ~!」
――とほぼ同時、まるでこちらの話が一段落付くのを待っていたかのようなタイミングで、ようやく赤髪少女が部屋の中へと飛び込んできた。
「いや、待たせたのはこちらの方だろ」
さすがに、こんなにタイミングがバッチリなら嫌でも気付く。
魔法で気配を消し、ドアの前でずっと待機していたのだろう。
「いやいやいやいや、つい今来たばかりだって!」
拍車が掛かった明るさが逆に怪しい。
……が、まあ本人がそうしたいのなら、それで良いだろう。
特に聞かれて困るような話でもないし。
噂話好きの情報収集方法の一つを見せられた、と思えばそれで良い。
「……で、約束の相手は?」
その言葉を発した刹那、背後に膨れ上がる人の気配。
「……っ」
それに反応し、振り返るよりも速く……俺の手が“勝手に”動いていた。
リフィアが身体に沁み込ませた本能に依る動き。
相手が突き出してきていた手を掴み取り、引っ張り上げ、体勢を崩して“たたら”を踏んだ相手に、これまた勝手に動いた足が相手の足を払い、地面に押し倒した。
「…………」
いや、押し倒せてはいない。
むしろ掴み引っ張り上げたせいなのか、ブラン、と腕一本で宙吊りにされているような感じになってしまっていた。
「…………えっと……」
あまりにも小柄。
というより、子供だ。
カシェルも十分に背が低い。
しかしそれはあくまでも同年代として、だ。
この子はもう、同年代かどうかも怪しい。俺の世界の五歳児ぐらいの身長しかない。
しっかりと立たせても、リフィアの太腿か足の付け根に、頭のてっぺんが来る程に低い。
「もしかして……この子が?」
カシェルへと視線を向け訊ねると、そう、と塩っ気のない返事をされた。
「離して! 離しなさいよっ! このっ!」
ブンブンと、掴まれていない方の手を振るい、少し浮いている足をバタバタとさせるが、それだけだ。
こちらに届くはずもない。
ボサボサの土色の髪、少し涙目になっている大きな目、顔立ちは子供っぽいというよりかどこか猫を思わせるような可愛らしさがある。
そう思うと、ボサボサで一部が盛り上がっている髪もまた猫耳っぽく見えてくるから不思議だ。
そのせいでこちらを睨みつけてきているだろうになんの殺意も感じられず、むしろこの子を相手に愛嬌を見てしまっている。
さっきの声質からして女の子なんだろうが……なるほど、ケモミミっ子か……。
「…………」
掴んでいた相手の手には小刀が握られており、リフィアの反応が無ければ背後から腹部を刺されていたことは間違いない。
……それを把握しても尚、殺意を感じない。
可愛らしい顔立ちというのは凄まじい。
俺特別動物好きでもないし、獣耳に萌えを感じる人でも無いはずなんだけどなぁ……。
それでも庇護欲を掻き立てられるのだろうか。
……じゃなくて。
「どうして、いきなり協力者を刺そうとしたんだ?」
とりあえず、聞くべきことを聞いておこうということでしたその質問に、彼女は動きを止め、さらに力強くこちらを睨みつけ――飼い猫が威嚇してきたような印象を与えてくる顔を向け、言ってきた。
「アンタが、ララ達の同胞を殺した人間やからや!!」




