正式な協力のお願い
昨日(というか今日)の更新が出来なかったので、本日はいつも通りぐらいの時間にもう一話投下します。
という訳でその学校からは何もされないということを、俺も含めた四人になったところで話し始めようと思っていたのに……一向に相手側二人が来ない。
「つまりリフィアの案としては、ナーディアート様が魔傷石を調べるまで待機して、調べ終えたら問いただして、もし魔傷石が壊れていたら治すまでの間に作戦を実行するってこと……だよね?」
「そういうこと」
時刻は昼食の時間からしばらく経った頃。
場所はこの前、カシェルに連れて来られた訓練場へと至る通路近くの空き部屋。
昨夜、別れる時に昼食後ここで全員の顔合わせすることを約束していたのだ。
「……一つ、聞いても良い?」
「ん? 何か作戦に穴でもあった?」
「それは……ううん、その不安よりも先に、聞きたいことがあるんだけど……なんでそこまで協力するの?」
「え? あれ? 話して無かったっけ?」
「多分、聞いてない」
カシェルの友人だからカシェルが困っていたら協力してくれるだろう、と勝手に決めつけ、俺がカシェルに協力している理由を話していなかった。
そう言われてみれば、そんな気もする。
「大方、あなたお得意の打算が働いてるんでしょ? 優しさでカシェルさんを助けるなんて思えない」
「確かにその通りなんだけど……それじゃあ元々の“わたし”なら、あの子を無償で助けていたと思う?」
「思う」
即答か。
「素っ気なくて、手伝ってくれるような素振りは見せなくて……でもきっと、色々と把握して、助けてたと思う」
「ごめんなさいね。そんな聖人みたいなことが出来なくて」
「それが今のリフィアだから、それはそれで良い。でもだからこそ、その打算が何か気になる」
「リフィア自身のためになるかどうかを、かな?」
「それは違う」
この即答には、正直驚いた。
「あなたがリフィアさん以外のために動くとは、正直考えられない。だからきっと今回のこの手伝いも、リフィアさんのために必要なこと……なんだと思う」
「まさか、そう信じてもらえてて、言い切られるとは思ってもみなかった」
「あなた自身のことはまだ分からないけど、リフィアさんを元に戻そうとしてくれてることだけは、確かだから。それとも、違った?」
「違ってないよ。俺が手伝っている理由は、魔騎士科の生徒をカシェルに紹介してもらうため」
「魔騎士科の生徒を?」
「今回のリフィアと俺の入れ替わりについて、こちらの世界からアプローチを掛けようと思ったら、まず魔法からつつくのが正解でしょ? 神秘だとか奇跡だとか、そういうのはまず魔法を試してみてから捜索すべきことかと思って」
「なるほど……カシェルさんを手伝うこととリフィアさんのためになることが繋がらなかったけど、そういうことだったのね……」
人を紹介してもらうため。
たったその一点で魔物を逃がすことに協力するなんてのは、確かにハイリスク・ローリターン過ぎて、考えの候補にはならないかもしれない。
なんせ究極、魔騎士科に乗り込んで誰かに協力させることだって出来ることだからだ。
ただこちらの状況があまりにもぶっ飛び過ぎていて、入れ替わってるという話をすぐに信頼してもらえるほどの相手を紹介してもらわなければいけない、となれば、ここまでのリスクを承知しなければ無理だろう。
「それじゃあ改めてマリンに聞きたいんだけど……この打算、協力してくれる?」
思えばマリンは、カシェルとの関係を「向こうには大勢の友人がいて、自分はその中の一人でしかない」と自己評価していた。
マリンにとっては数少ない友人であっても、カシェルにとってはそうではない。
元の世界の俺も同じような関係が多かったので、その気持はよく分かる。
だからこそ、「カシェルのために動く」という動機がマリンにとって弱くないということも、また明白なのだ。
向こうにとっては大勢でも、自分にとってはたった一人なのだから、助けない理由にはならない。
どうせ助けてくれる人は沢山いるのだからと、自分から助けないなんてことはしない。
あれだけリフィアに憧れているマリンが、そんな俺みたいな考えを、するはずがない。
ただ、そんな理由で自分なんかが動いて良いのかどうか、自信が無いだけ。
……ここ最近普通に話しているから忘れていたが、元々この褐色巨乳少女は、極端にネガティブな思考をする傾向がある。
まだこの身体がリフィアの物だと勘違いされていた頃、嫌われないためにとずっとビクビクしながらこちらの様子を窺っていたのだって、そのせいだろう。
だから、俺の行動がリフィアのために動いていると分かっていても、問いたださずにはいられなかった。
だから、「自分なんか」と考えて、協力しても足を引っ張るだけなのではと、考えずにはいられなかった。
だから――
「――違う。俺が、マリンに協力して欲しい。手伝ってくれないか?」
――正しくは、そう言ってやるべきだ。




