二つの頼み事
明日更新できないので、今日二話目を更新します。
短くするために色々と駆け足になってますが、お許し下さい。
リフィアは魔物を殺していないのでは。
俺も抱いたその疑問を、しかし俺自身はとっくに否定している。
でなければ、俺がこうしてリフィアの中に入った理由が説明できない。
よしんば他の要素でこうなったとしても、それを知る術が俺には無い。
だから今は、魔物を殺したということを前提に考えて、俺はこの世界を生きている。
……だからこそ抱く疑問もある。
「カシェルってさ、リフィアが魔物を殺したってのを噂話として聞いたんだよね?」
「うん。なに? 改まって」
「いや……だとしたらこの二週間、教師から何のアプローチも無いのはどうしてなんだろうなぁ、ってずっと思ってて」
殺したという前提で進めているからこそ、抱いていた疑問。
毎日、いつか教師に呼び出されるのでは、と思いながら生活してきた。
ちょっとしたことでジルと校外へと出た時も、出たことで説教はされても、魔物を殺したことを追求されることはなかった。
もちろん、人類の敵たる魔物を殺したのだから褒められないはおかしい、なんて理由じゃない。
学校内に魔物が入ったのだ。
その侵入経路を聞きたがってもおかしくはない。
本当に生徒を守る気があるのなら。
「え? リフィア……で良いんだよね? 今更だけど」
「マリンもそう呼んでるし、他ので呼んでも色々とややこしいでしょ?」
「確かに。じゃあリフィア、教師が聞いてこないことに対して何を不安に思ってるの?」
「何を、っていうか……この学校の先生陣が、魔物が校内に侵入したことに対して何のアクションも起こしてないでしょ?」
「それが?」
「分からない? これって、生徒を守る気が無い――ってことも当然あるけど、それ以上に、敢えて魔物を校内に侵入させたとも考えられない?」
「…………いや、さすがにそれは……」
確かに、突拍子もないことを言っている自覚はある。
これもまたお得意の物語を読んできたからこその想像だ。
それに、もし先生が校内に魔物を入れたとして何をしたいのかは想像できない。
いつもより一層酷い“被害妄想”だ。
……眠気が来すぎてのかもな……。
「だよね……忘れてくれ」
それよりも今は、その魔物の子を逃がすことを考えないとな。
「さて……それじゃあもう夜も遅くなってきたし、後はその子を交えて四人で話そうか」
「……そうだね。うん、分かった。でも良いの? その……魔物、だけど」
「それを気にしないって話だから協力するって話でしょうが。大体、その子が何をするつもりなのかっての、聞いてないんでしょ? だったら直接聞かないと」
「それは……そうだけど……でも、本当に協力してもらって良いの?」
「だから、不安にならないでって。カシェルは明るいほうが“らしい”んだから。ここは明るく振る舞ってもらわないとさ、こっちも協力のしがいが無くなるから」
「……うん。分かった。それじゃあ明日、あたしからその子に話しておくね」
そうして、本人がおらず、もう一人の協力者は眠っている状態で、俺達は明日の約束を交わした。
◇ ◇ ◇
「リフィア、ちょっと良いかな」
翌朝、寝る時間が少し遅くなったせいで眠気と戦いながら何とか食堂に辿り着くと、食事を受け取る前に声をかけられた。
「ジル……」
イケメンの貴族様、ジルだった。
遠目で睨みつけてくる女子の視線が痛い。
「あ、あの……わたし、先に食事、もらっとくね……?」
一緒に来ていたマリンがそそくさと離れていく。
女子からの視線に耐えられくなったか、それともジル自身の雰囲気にアテられたか……。
「……何か用事? ジル。ご飯食べたいんだけど」
「ああ、申し訳ない。ただ少し時間が欲しくてね。朝食の後に少し時間をもらえないかな?」
「……なんで?」
「自由時間の時に少し、頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと? ……また校外に出る系?」
「いや、今日は校内での用事でね。親に頼まれたことなんだ」
「……面倒なんだけど」
「そう言わずに」
正直に言ったのにやんわりといい笑顔で拒絶された。
「少し、校内を回るだけで済むんだ。確認も兼ねて、ね」
「確認? 何の?」
「魔傷石のチェックさ。正直、魔物と戦った君がいると助かるんだけど……どうかな?」




