協力させる理由
俺の秘密を明かしたのは、さっき言った通り手伝うことの交換条件にされないため――以外にも、もう一つある。
それは、秘密の共有だ。
それがあるだけで、相手との関係はグッと縮まる。
尤もそれは――
「……えっとつまり、今のリフィアは、リフィアであってリフィアでない、と……」
――その秘密を信じてもらえれば、の話なのかもしれない。
話を聞き終えたカシェルが向けるその視線は、どうも疑いの色に染まっているように見える。
「信じてもらえないかもしれないけど、これは事実だ」
「いや、何も信じないとは言ってないんだけど……」
そう口にはするものの、やっぱりどこか信じきれていないように見える。
この状況で嘘なんて吐くはずないという気持ちと、普通に考えてあり得ないことだという常識性がせめぎ合っているのかもしれない。
「ま、時間を掛けてゆっくりと消化してくれれば、それで良いから」
どうせこちらもカシェルの秘密を握っている。
前懸念したような「突拍子も無さすぎて噂話として流布する」可能性はほとんど無いだろう。
そうなれば俺も、カシェルの秘密をバラして自分の秘密をもみ消すのに尽力する。
ちょっと妄想入っているかもしれないこちらの話より、魔物を庇っているカシェルの方が注目されてしまうだろうことは明白だ。
しかも噂を流すのが俺自身ときた。
元々噂話好きの奴が流すものよりもガチっぽさが出ること請け合いである。
「で、だ。その秘密に関して、カシェルにも協力して欲しいことがあるんだけど……」
「協力? 一体あたしに何させるつもり?」
「そう難しいことじゃない……けど、今はその話は良いかな」
「え?」
「今度は、そちらが話す番だ」
いきなり話を打ち切った俺に訝しむような視線を向けてきたが、それはすぐさま驚きに変わった。
「そちらの秘密を知った。こちらの秘密を話した。だったら次は……そちらの頼みを聞く番だ」
「…………」
「それとも、秘密を打ち明けて『ハイ終わり!』ってつもりだったか?」
「……まさか。でもその前に、一つだけ聞かせて。どうしてあたしが何かを頼みたいって分かったの?」
「分からない訳無いだろ。頼み事もないのにわざわざ秘密を打ち明ける必要もないだろうし」
「じゃなくて」
俺の言い分を否定し、しばらく言葉を選ぶように悩んでから、再び口を開く。
「どうして、“マリンを巻き込まないといけない程の出来事に巻き込まれる”って思ったの?」
打ち明けたくない秘密を自分に打ち明けてまでマリンに手伝わせようとしている。
そうした事情の元秘密を話したのだと、カシェルは気付いたようだ。
「そりゃもちろん、魔物が絡んでるのに、リフィアの中に入ったばかりの俺が一人でどうにか出来るとは思えないからだって。それに……」
「……それに?」
「……一つ、気になったことがある」
それはカシェルが、俺に魔法について話してくれた時の出来事。
「魔物が魔法の生みの親で、人間が使っているのはそれを人間用に使えるようにしただけ、みたいな話をしてた時、途中で言葉が消えてっただろ? あれってさ、話してる内に気付いたんじゃないかなって」
「…………何に?」
「もし魔物がいることを知られれば、実験動物のようにされるんじゃないかってことをさ」
それに気付いて、慌てた。
「だから、魔物を狩る人間かどうか確証が持てない中、無理矢理確認して大丈夫そうなら協力させようとしたんだろ?」
そしてここからは、物語を読んでいるからこその想像だ。
「その匿っている魔物を、どうにかして逃がすための方法とか、さ」
「……………………」
俺のそんな予測を聞き、驚いた表情のまま言葉を失うカシェルを見て……この予測はほとんど当たっているのだろうと、俺は確信した。




