魔物からの賜りもの
二話に別けようかとも思いましたが、一話にまとめました。
区切るとまた無駄話だけしかしてない話数が増えそうでしたので……。
「どういうこと、ってのが、どういうこと?」
「だってリフィアは半月程前、この学校に入ってきた魔物を殺したんだよね?」
「……その矛盾が気になるってことか?」
もしかしてカシェルは、俺がリフィアの中身そのものじゃないということに気付いて探りを入れてきている……?
そんな考えが一瞬脳裏をよぎるが、それは違うな、とすぐに否定する。
「……まあ、そんなところかな」
だってそう返事をした彼女自身が、とても緊張していたから。
まるで俺の答え次第で、これから先の態度が変わるような気配。
恋愛シミュレーションゲームにおける、ルートに突入するか否かの重要な選択肢。
そんな空気が伝わってくる。
リフィアの中身云々を疑って、この空気でこの質問をしてくるのなら、マリンみたいにリフィアを慕っていないとおかしくない。
ソレをひた隠しにしていたとしたら、今度は二週間も接触がなかったことの説明が出来なくなる。
だからきっと、今回の件にリフィア自身は何も関係がない。
とすればあるのは……おそらく“魔物”の部分。
まさか「過去の行動と今回の発言が矛盾していることが気になる」なんて、刑事ドラマみたいなことは言い出さないだろう。
貴族たちの授業を受けれたから良い格好したかったのに失敗した、程度で済む話なのだから。
きっとこれは「俺にとっては小さな矛盾でも、当事者にとっては大きな矛盾」とも呼べること。
だからナーディアートに目をつけられるのも覚悟で連れてきて、次の授業に遅れたらどうなるか分からないのに時間を作り、中々言い出せないほど覚悟が必要なことになってしまっている。
となれば……もしゲームで同じような状況になった場合、俺が選ぶのは……小説の主人公が取ったなら、俺がこれからも読み続けようと思える行動とは……。
「魔物が相手だと思ってなかったから、かな」
正直に話すこと、だろう。
「正直言って今回の授業には、違和感があった。いくら魔物が相手の想定とは言え、あまりにも戦術を組む上での情報が少なかった。だからまるで、他の存在を相手にさせようとしているような、そんな気がしたんだ。尤も、それ自体もいい加減に見えたのは事実だけど」
「……そう、なんだ……」
……ん?
「そっかそっか。うん、確かにアレは、戦略としてはあまりにも杜撰だよね」
一瞬の違和感の後、初めて出会った頃のような高いテンションで話し始めるカシェル。
「何でも噂なんだけど、魔騎士科を優秀な成績で出た卒業生ってのは、国のお抱えになるらしいの。でね、そこで今はまだ存在してない、攻撃魔法の研究をさせてるんだとか」
「攻撃魔法……」
さっきの反応が気にはなったが、とりあえず今は、話している内容も気になるので口を挟まないで耳を傾ける。
「そ。実を言うと他の国も同じみたいでね。優秀な魔法使いを集めて、魔法を攻撃に転用できる手段とか、光を生み出す魔法の応用で火を生み出せないかとか、色々と探ってるみたいなの」
「ふ~ん……でもそれがどうしたんだ?」
「分からない? 今までは魔物がいたから、人間は手を取り合えたの。そして今は、ほとんど魔物がいない。いたらすぐにやられちゃうんだから、当然だよね。で、そうやって共通の敵がいなくなったら……次はどこに攻撃が向くと思う?」
「あ……」
それは、俺の世界でも、よくある話で……。
「そうか……! どこかの国が攻撃魔法を実戦段階にまで完成させたその瞬間、人間同士の……!」
そこからは自然と、言葉にしなかった。
「そういうこと」
でも、カシェルも俺の言わんとしたことが分かってくれたようだ。
おそらくこの世界の全ての国が、攻撃魔法の研究に余念が無い。
何故なら攻撃魔法を作り出せたその瞬間、その国だけが他の国よりも一歩先を行くことは、間違いないのだから。
尤も、実戦段階、がドコを指すのかは、国によって違うだろう。
魔法を扱える兵士一人一人が扱えるレベルなのか。
それとも数人でも良いから使えればそれで良いのか。
生み出す魔法の規模や対価など、様々な要素で変わってくるだろうが……戦争を仕掛けられるレベルまで引き上げられたら、この世界は人間同士の争いが始まる。
そのためのあの戦術授業だったのか。
「でも、攻撃魔法を作れるアテはあるのか?」
「さってね。でも、魔物の中には火の玉をぶつけてきたりとかしてたし、そもそも魔法ってのは魔物が使ってたものを人間でも使えるようにしたものだって話だし、その辺でどうにか……。…………」
「…………?」
いきなり、言葉尻が消えていくカシェル。
「……あ、ううん。何でもない何でもない。ま、まあ、ともかく、それで今は手探りで、人間同士が戦った場合ってのを、考えてるのかも。だからあんな穴だらけの戦術授業になってるのかもね。まあ、貴族相手に持ち上げないといけない部分があったりするし、その辺は複雑なんだろうけど」
また、違和感だ。
だがさっきの違和感とは、どこか違う。
さっきのは……俺の答えが、望んでいたものとは違ったから、か……?
となると、今回のは……? 話してる間に、何か……?
「……………………」
「どう? 色々とわかった?」
「ああ、うん」
ここは……探りを入れてみても、良いかもしれない。
「……ただもしかしたら、上に立つ貴族には例え相手が人間だったとしても、魔物が相手だっていう嘘をつき続けるのかなって思ってね」
「ああ……確かに。それはあるかもね。さすがリフィア、目の付けどころが違う!」
まあ、全ては物語的によくある、先の展開でしかない。
そして今回の探りもまた、同じだ。
「そう言ってもらえると、嬉しいな」
「うんうん。あ、じゃあそろそろ授業に行こっか」
「良いの?」
「うん。だって聞きたいことは聞けたし」
「でも、本当は別の答えが聞きたかったんじゃない?」
「えっ……?」
「カシェルが聞きたかったのは、授業の発言の意図じゃなかったんだろ。聞きたかったのは……俺が魔物についてどう考えてるか。違うか?」




