騎士学校についての想像
話が進んでない話がようやく終わった~。
早く終わらせたいから二話更新した感もある。
明日からちゃんと物語を進めます。
この世界は、人間同士の争いは起きたことがないらしい。
マリンに聞いた話だが、少なくとも教わる歴史の中でそういったことが起きたとは、どこにも記されていないのだという。
起きてきた戦いは全て、魔物を相手にしてきたものばかり。
でも今魔物は、大陸の南西エリアに結界を張り、出てくることが無くなっているという。
それでもたまに人間の世界に出てくることがあり、その際に対峙するのが俺達騎士ということらしい。
出てくる数はそれこそ様々。
単身で出てきたり、群れをなして軍のように人間の街を侵略してこようとしたり。
なんなら、結界を張る際に魔物の街に入りそびれた、人間の街や村で魔物が暴れるといった事例もあるそうだ。
だが……ここからはあくまでも、物語を大量に読んできたからこその想像でしかないが……。
今その数が、減ってきているとしたら……?
魔物は、人間がいる地域でのその数をほとんど減らし、結界の中にしかほとんど存在しなくなっているのだとしたら……?
それなのに、騎士を育てる学校が今、存在している理由とはどういうことになるのか……?
そこを突き詰めていけば……ある可能性が思い浮かぶ。
この、情報足らずの戦略授業も加味すれば……。
この学校は、いずれ訪れるだろう人間同士の戦争を、想定している。
兵士や将校を育てているわけではない、なんて言ったが、学校側はおそらくそうじゃない。
いずれ起きると考えている、その人間同士の戦争に備えている。
ソレを悟られぬよう、昔からある、民を魔物から守る「騎士」という役割を被せ、俺達生徒を誤魔化している。
「それとも何か? お前は人を傷つける魔物を助けると、そう言いたいのか?」
「…………」
それに何も言い返せないながらもしかし、俺は別のことを考えていた。
思えば、俺の想像通りなら皆、この授業は魔物との戦闘想定だと騙されていることになる。
それはつまりこの授業は“魔物の群れが相手なら、誰も違和感なく受け入れることが出来る内容だ”ということだ。
人が相手の場合のノウハウが無いのではなく……魔物が相手でも違和感がないギリギリの授業をしているのだとしたら、中々に巧い。
汚らしい大人が考えるような内容だ。
だけど今は、そんなこと関係ない。
考えたことというのは、俺が思っている魔物と、実際のこの世界の魔物に齟齬が発生しているかもしれない、ということだ。
俺が考えていた魔物というのは、ゲーム等で出てくる所謂モンスターのような形状になる。
四肢が生えた異形の存在・中身が空洞の全身鎧・液体が凝固したような無機物……等といった具合だ。
そこに意思は存在せず、野生動物のように人間と見るや否や襲ってくるもの。
俺は魔物とはそういうものだと想像していた。
でもこうして、逃げることも・色々と罠を仕掛けてくることも、生徒たちは当たり前だと考えているということは……見た目はともかくとして、少なくとも魔物には意思が存在していることになる。
しかしそうなると……今度はこの世界の人間が、意思が存在している相手に向かって「お前達は殺されて当たり前の存在だ」と言っていることになる。
見た目が違うだけでそこまで言うなんてのは……最早差別と何も変わらない。
……意思を持っているのなら、たまにあるRPGのように、皆仲良くとはいかないものなのだろうか……
いや、いかないものなのか。
それは俺が居た世界でも変わらない。
外見が同じでも、人とちょっと違うだけで仲間はずれにすることなんてザラだからな。外見が違えば……そりゃそうか。
「魔物とは、そこにいるだけで人を傷つける。害悪そのものなのだ」
興が乗ってきたのか、立ち上がってまで声を張り上げ意気揚々と演説を始めるナーディアート。
「それを全て駆逐する。そうして民を守る。それこそが、俺達騎士の役目なのだ!」
「……最初にいたのはどちらなんでしょうね」
「なに?」
「いえ、別に」
何となく、思ったことが口をついてしまった。
人が後から生まれたくせに、今となっては世界の支配者を気取っているところは、どちらの世界も変わらない。
「今はそんなご高説よりも、授業でしょ?」
あくまでも淡々としながら、話を逸らして椅子に座る。
それに少しだけムッとしながらも、彼もまた大人しく着席した。
その後授業は、教師が今更敵部隊は森を抜けるのに適している魔物だということを説明し、追撃戦を仕掛けて距離を置かれた矛盾を補完しつつ、迂回ルートを選んだナーディアートの選択肢こそが全面的に正しい、という授業の方向にもっていかれた。




