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そこは異界の騎士学校  作者: ◆smf.0Bn91U
魔法と魔族編
23/52

突拍子もない作戦

ちゃんと宣言通り二話更新致します。

「は?」


 間抜けな教師の声と驚いているような視線を受けながら、マンガで読んだ似たような状況を思い出しながら、話を続けていく。

 敢えて珍しく、敢えて突っ込みどころが見える作戦を。


「別け方はそうですね……動きの早い騎兵部隊とそれ以外――いえ、斥候部隊は半分ずつにしましょうか。まず騎兵部隊は森を抜けようとしても時間が掛かるので、迂回させます。その隙に他の部隊が、斥候部隊を先頭に罠を探させながら、ゆっくりと進んでいきます。もちろん、騎兵部隊も同様です」

「それなら、騎兵部隊の速度も落ちるではないか」

「ですが間違いなく、敵は迂回ルートにも罠を仕掛けています」


 ナーディアートは何故か想定していないようだが、あるだけで足を遅くするための森が中央に存在している以上、むしろそこよりも迂回ルートこそが、罠を仕掛けている確率は高い。


「この戦略図上、どうして追撃戦を仕掛けたこちら側が、相手が森を抜けるまで何も出来なかったのかは、私では読み取れません。ですが殿を務めた部隊がいて、その部隊に手こずっている間にあそこまで逃げられてしまったと想定するならば、相手は動きの早い騎兵である可能性のほうが高いと思われます。ですから尚の事、森を抜けたという可能性は低い」


 馬に乗って森を抜けるには、事前に通れる道を把握していなければならない。

 それすらも事前に把握してそこを通って逃げたというのなら話は別だが……それこそ、今の情報で分かりようがない。


 こういう“分かりようがない”ことが多すぎるのだ。この授業は。

 圧倒的に過去の統計に基づいたあらゆる情報が少なすぎる。

 というか、作戦すら立てられないレベルの情報しか目の前にはない。


 平民リフィアの立場で受けた授業は、こんな司令官的立場の戦略ではなく、一人の騎士として民を守るために取らなければならない行動と、あらゆるパターンでの連携方を教わった。

 まだあちらの方が現実味があったし、何より役に立った。


「ただ正直言って、こちらが向かわせる迂回ルートは陽動に過ぎません。森を抜けるのに時間が掛かる騎兵を全て陽動に使い、歩兵部隊で罠の少ない森を通っていく。もちろん、森の中に罠があったり、森自体が相手に焼かれてしまう可能性もあるでしょう。ですがその場合は森から抜け出し、迂回ルートの騎兵隊が相手の背後を突けばいい。時間的に考えれば、どちらにも罠という可能性は低いでしょうから、確実にどちらかは相手の背後を突けるはずです」

「おいおい、お前の話は穴だらけだな」


 まあ、ナーディアートのその言葉は否定できない。

 おそらく実際の戦いでこんなことをしては、分散したところを狙われ各個撃破されてしまうかもしれない。

 もしそうなれば、それだけで全部隊が全滅してしまうだろう。


 しかし、それこそが実戦だ。


 相手が取るであろうあらゆる手の中で、相手自身を分析し、作戦の傾向や癖を見抜き、どういった手を使ってくるのかを想像する必要がある。

 本来なら。


 俺の言った方法やナーディアートの作戦はどちらも、こちらの想定とは違う手を相手が取ってこれば、すぐに全滅してしまう手段なのだ。


「迂回ルートを通ってそこに罠を仕掛けている。なるほど、お前の考えも一理ある。だがそれでも、森に罠がないという想定はどうかと思うがな」


 なるほど……ナーディアートはナーディアートで、敵が分散して罠を仕掛けながら逃げたという可能性すらも考慮に入れるか。

 となれば彼が迂回ルート一択に絞ったその理由は、多少の罠があろうとも突破し、こちらも多少の兵を犠牲にしながらも短期決戦の挟み撃ちを強行する、といったところか。

 ……まあ本来なら、相手が森を抜けた先に至るまでのルートは事前に分かっているものだ、なんて言わないのはご愛嬌。


 しかし……ここだ。


 今しかない。


 俺は自分がしていた想像がどれだけ正しいのか――「物語ならばこういうことだろう」という想定がどれだけ当て嵌まっているのかを、確認できるための言葉を発する。


「それでも、両方を行けば、相手が降伏するための脅しには出来る」


 片方のルートしかいかなければ、残りのルートは開いているということになる。


 そして相手が、味方に殿しんがりを務めさせて逃げた、と想定するのなら、それを再び行っても何らおかしくはない。


 撤退は、人数が少なければ少ないほど有利になる。

 ましてこの世界は、魔法で姿を眩ませることなんて造作もない。

 罠、なんて言い方をしているが、要は敵そのものが潜んでいる可能性すらも大いにあるのが、この世界の戦いだ。


 だから迂回ルート一本に絞って背後を突こうとすれば、森の中を早く移動できない部隊が迂回ルートの対応などで殿を務め、残りの部隊が姿を魔法で隠しながら、森を突っ切り逃げる可能性がある。

 逆もまた然りだ。


 そうしたことをしてくる相手には、逃げ道を無くなったことを知らしめるために両方を行き、降伏を促せる。


 ……そう。


 俺の話した作戦は全て、“人間が相手なら”ある種有効にもなり得る可能性があるものだ。


 だからここで――


「はっはっは……! こりゃ傑作だ~。おいおい、戦いだぞ? どうして降伏を進める必要がある? 相手は魔物なのに」


 ――そういう返事が来たのならそれは、皆が騙されていることに、他ならない。

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