戻るための方法思考
ようやく本編再開します。
リフィアになってから、遂に二週間が経過した。
この間、全く自分の体に戻る気配はないし、リフィアが戻ってきた気配もない。
俺も俺で、この身体に沁み込んでいる戦うための技術を記憶に刷り込んだり、午後の戦略授業や戦闘授業を楽しく受けたりして全く何もしてこなかったが……流石にそろそろ行動に移るべきなのかもしれない。
元々の俺の身体に入っているリフィアなんて、とっくに戻るために色々と動いてくれているはずだ。
半月もすれば向こうも、それなりにあちらの世界に慣れてくれているはずだし。
それなのに俺がこうして別世界を謳歌しているなんてのは、さすがに失礼に値するだろう。
とは言っても……こちらの世界からのアプローチとなると……やっぱり魔法か。
明かりを生み出したり物の強度を上げる等、生活水準を上げる魔法ならば一般的に普及しているが……今の俺はそれすらも使えない。
この現状ぐらいは何とかしないと。
最悪俺が使えないままでも、使える詳しい人が傍にいてくれなければ話にならない。
今俺が使える魔法は全て、リフィアが本能レベルで鍛え上げたのだろう自動発動の戦闘用魔法だけだ。
この事実が尚の事、俺がこうなった理由は魔法が原因なのでは、という考えをより深くさせる。
なんせ魔法の自動発動なんてこと、容易にできることではないからだ。
これはマリンに確認を取って知ったことだから間違いない。
基本、人の魔力は体内に眠っている。
体力と同じで食事や睡眠で作られるが、普通の生活では使用されることがないエネルギー。
ソレを無理矢理抉じ開けた後、己で作った鍵言葉と開閉式の扉を作ることで、そのエネルギーを使用しての魔法を扱えるようにしているのだ。
魔力を身体の周囲に纏わせる鍵言葉を述べる事無く、いつでも魔法が発動できる。
つまりリフィアは常に、身体の周囲に魔力を放出し続けていることに他ならない。
開閉式の扉を作ること無く、もちろん鍵言葉も存在していない。
だから知識の無い俺でも魔法が発動できるのだろう。
そしてそんなことが出来るほど、リフィアは魔法に関して優秀だったことを意味している。
何より俺がリフィアの中に入る前日に、この学校に侵入したという魔物を倒したという話もあった。
そこから統合し、その魔物を倒す際に使った魔法の副作用で、今のような状況が出来上がっていると考えてしまうのも仕方がない。
だからこそ、とりあえず一つ目のアプローチとして何かを仕掛けるのなら、魔法しかない。
この魔法ド素人の俺が。
……う~ん……となればやはり、魔法に詳しい人を探すしかないか……。
ただそこまでのツテが俺には……。
……いや、そうだ。
あの人がいた。
カシェル。
噂話が好きなあの子なら、誰かしら紹介してくれるだろうか。マリンの友達でもあるらしいし。
ジルは……なんか紹介してくれた女の子が本気を出してくれなさそうだしなぁ……主に嫉妬的な理由で。
という訳で、この授業の後に聞いてみるか。
「――そして今、敵はこの状況に追い込まれている」
パシンと、黒板に貼り付けられた紙を指し棒で叩く。
今俺は、何故か貴族が受けることになる午後の授業を共に受けている。
ただの平民はまた別の授業かさらなる訓練に時間を充てられるはずなのに、だ。
その理由は単純明快。
「ははっ、どうしたリフィア? 話を理解しようとするのに必死か?」
例の貴族様――ナーディアートが、今度は自らの頭脳を俺にひけらかそうとしてきたからだ。
それこそ実に二週間ぶり。
実際に戦うことをジルに禁止されているからと、搦手を使ってきたつもりなのだろう。
「ま、これは将来人の上に立って人を導く者が受ける授業だからな。お前には理解できずとも当然だ」
自慢げな声が鼻につく。
「そんな授業に出れたのだから、もっと俺に感謝しても良いんだぞ?」
「あ~、はいはい」
ひらひらと手を振って話を聞き流す。
しかしそんな俺の態度に気を悪くする事なく、彼は「ふふん」とさらに鼻を鳴らすのみ。
さっきから何度も先生に質問され、それを答える度に俺へとドヤ顔を向けてきたからな……二週間前に負けたことによる溜飲を下げているのだろう。
……まぁ、教師がここまで全ての質問を彼にぶつけていることからも、裏で何かしらの取引があったことは間違いないだろう。
まあでも、ドヤ顔されても何も思わないんだけど。
いやだってさっきから教師がしてる戦略の話……マンガやゲームでよく見てきたものだからなぁ……。
むしろ中には、ゲームで取った選択肢よりも悪い方法を教えてたりするし……。
仮にも戦略の話をするならさ~……せめて俺の世界のフィクションは超えて欲しい。
……いや、俺の世界のが高品質なのか。
過去に起きた合戦や戦争を元に作り上げたりしてるからかな。
何というかここでされる話は全て、人の想像上の物といった印象を受けるのだ。
過去にあったことではなく、これから起きるかもしれないことの話。
そんな感じ。
まあ戦争ではなく、大量の魔物と相対した時の話なのだから、また戦争とは勝手が違うだけかもしれないけれど。
「…………」
にしたって、中途半端に戦争を想定しているような感じもするし……。
……いや、もしかして……実は、そうなのか……?
でもここは騎士を作り上げる学校だという話だし……兵士や将校を作るものではない以上、戦争なんて大規模な戦いを想定して人に教えるなんて……。




