魔法という代物
あああ……! また終わらなかった……!
くっそ~……明日更新できなかったのに……本当に短くで済みそうだから、無理矢理にでも更新します……。
その代わり、火曜日(正確に言うと水曜日の深夜分)の更新を休みにします……予定がコロコロ変わって申し訳ない。
この世界の魔法とは、言ってしまえば補助魔法ばかりだ。
火の玉を放つとか、水を出すとか物体を凍らせるとか、土を隆起させるとか風で身体を斬り裂くとか、そういった俗に言う「攻撃魔法」は一切存在しない。
防御力を上げたり、遠くを見たり己の気配を遮断したり、遠くの場所に音を発しさせたり魔法をお互いに使うことで脳内会話を行ったりといった、その程度のものばかりなのだ。
ある意味、平和と言えば平和だろう。
そしてそれらを扱う準備として、自らの周囲に己の魔力を纏う必要があるとのこと。
それが戦闘前にあの貴族様が行った“呪文”だ。
あの瞬間、彼の周りに何かが纏って見えたのは目の錯覚でも何でもない。
ただ時間が経てば目が慣れてくるのか、段々と見えなくなるが。
確かに思い出せば、戦闘の後半――目を瞑る直前には、彼の周辺にその魔力のオーラは見えなくなっていた。
基本となる防御の魔法は至って単純で、そうして周囲に発した魔力を、防御したい箇所に集めるのだという。
その防御する箇所は頭の中で想像……等といった高等な行為ではなく、随時身体の中に指示を出していかなければいけないらしい。
それを簡略化し、指先一つで防御箇所に魔力が集まるよう移動させるといった反射的な行動にまで昇華させることが、戦闘中に防御魔法を使うための基本となる。
魔法の基礎は防御魔法だが、戦闘中魔法使用の基礎は、この防御魔法の反射移動なのだという。
あの貴族様が大剣から片手を離して指先を動かしていたのは、そういうことなのだろう。
指の形・動きで、己の身体のどこを防御させることが出来るのか。
それを完璧に把握し、咄嗟にその形の指にする。
俺では到底出来そうもないが、この世界の皆はコレが基本なのだ。恐ろしいことに。
……となると、余計に分からないのが、どうして俺にも魔法が使えたのか、ということになる。
いや、確かにそれら基礎が出来ていないからか、防御魔法は使っていない。
だが攻撃する際、剣にオーラが移ったように見えたのは、間違いなく“魔法”だ。
呪文を使って発動準備をしていないにも関わらず――またそれらの“知識”が必要となるものを全く知らないにも関わらず、使っていた。
……やはり、これもリフィアに依るものなのだろうか。
もしかしたら、常時魔力を解放しておくよう――もしくは戦闘になったら魔力が解放されるよう、本能レベルで習得した、とか……?
……だとしたら、化物が過ぎる。
このリフィアという女の子は。
どこまで血の滲むような努力をしているというのか。
そしてどうして、そこまでのことが出来たのか。
そう……まるで、自分の意志が無くなり、こうして誰かに身体を操られても、自分の身体がそう易々と殺されぬよう、下準備を念入りにしていたかのような……そんな印象を受ける。
魔物とやらと戦うことでこうなると思っていたのか……はたまた、魔物を倒す手段の副作用でこうなると分かっていたのか……。
……どちらにせよリフィアは、俺とは違い、彼女の身体を誰かが操作することになると分かっていたのかもしれない。
◇ ◇ ◇
「……ありがとう。色々と参考になった」
図書室に移動し、魔法陣のようなものが描かれた本を広げて話してくれたカシェルにお礼を言う。
「そう? 基礎的なことしか教えてないけど」
「それでも十分だって」
隣に座る彼女は謙遜するが、もし一人でココに来たとしても、ここまでのことが分かったは思えない。
「これは、また何かお礼をしないとな……」
「あ、だったらさ、一つ教えて欲しいんだけど」
「なんだ? また質問か?」
「そんなとこ」
そうして彼女は――真剣さを隠すための笑みを貼りつかせ、訊ねてきた。
「リフィア、あなたはどうしてたまに自分のことを、“俺”って言うの?」




