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そこは異界の騎士学校  作者: ◆smf.0Bn91U
貴族と騎士編
13/52

貴族様が仕掛ける延長戦

 握っていた大剣から手を離し、その手を広げて頭の上に持って行ったところで、俺は腕を引き貴族様を開放した。


 目を瞑ってまで戦って圧倒したのだ。

 魔物がどれほどの強さかは分からないし、これで信用してもらえたとも思わないが、この男みたいに直接嘘だと言ってきて戦いを挑んでくるようなことはないだろう。


 もしそんなことをすれば「自分はこの貴族様よりも強いんだぞ」と煽っているようなもの。

 このプライドの塊みたいな奴に屈辱を与えるような真似、周りがするとは思えない。

 したらそれこそこの貴族様に何をされるか分かったもんじゃないからだ。


「つっ!」


 二階席から広がるざわめきの中、彼から離れて歩き出そうとしたその右腿に痛みが走る。

 そちらに視線をやれば、そこにはずっと刺さったままなはずの矢が消失し、代わりに右手の中に握られていた。


 無意識の内に抜いていた。

 つまり「リフィアが大丈夫と判断して抜いた」ということだろう。


 それにしても、痛みが殆ど無い。

 矢を抜いたはずなのに、チクリとした程度だった。

 鏃が身を抉ったような痕跡がある以上、この程度の痛みなはずがない。


 思えば、戦っている時の痛みもほとんど無かった。

 矢を貫通させておいて、重心を移動させてもほとんど痛くないなんてことあり得ない。

 おそらくは常に魔法を使っていたが故の結果だろう。

 現に今も、ドロドロと血が流れてくる足の傷がどんどん修復されている。さすがに穴が開いてしまったスパッツの部分はそのままだが。


 それにしても……魔法を使う際は事前に呪文を唱えて準備しなければいけない感じがしたのだが……そんなことを行わずとも、リフィアは魔法を使っていた。

 コレはリフィアの体質なのか、それとも本能レベルで魔法を使えるよう訓練していたのか……はたまた、常に魔法準備体制を取れるようにしていたのか……。……魔法について、少し詳しく知っておかなければいけない。

 というか、知っておきたい。

 こういう設定じみたものは、物語好きとしての好奇心を刺激してくる。


 となればマリンあたりにそういうことを知れる図書室のような場所を聞き出して――




 ――と、今日一日のこれからの行動を考え始めたその右耳に、何かを弾き飛ばすような音が聞こえた。




 キンッ、といった、鉄と鉄がぶつかるような短い音。

 何が、と思った時には、俺の腕が勝手に動いていたことに気付く。


 音のした方を振り返り、なんとはなしに地面へと視線を移動させると……そこには鏃が少し曲がった矢が一本、落ちていた。


 理解する。

 飛来した矢を、リフィアが器用に鏃を狙って弾いたのだと。


 右腿に突き刺さった時は、彼女の動こうとする意思を俺が無理矢理止めていた。

 でもさっきは、俺が何やら考えていたせいでそれが無かった。故に弾くことが出来たのだろう。

 もしそうしなければ今度は、太腿ではなくこめかみから矢を貫通させていたことになる。


「っ……」


 その想像は、俺の背筋をゾクリと震わせた。

 太腿に矢を射ってきた奴と同じか……! と一瞬脳裏を過ぎるが、すぐにそうではないことを悟る。


 戦闘を開始する前に、所々にある出入口に気配があるとリフィアが悟っていた。

 その気配が一斉に、このエリアへと入ってきていたのだ。


 つまりはまあ、大勢のクラスメイトに囲まれたような形になる。


「……なんだ、貴様らは」

「おいお前ら、まさか……!」


 俺の質問に答えにならない答えを発したのは、例の貴族様だった。


「この俺がやられたことに対しての意趣返しか……! 止めろっ! 俺の顔に泥を塗る気かっ!」


 そんな彼の言葉を聞かず、今度は三本の矢が左右正面から飛来する。


「っ!」


 さすがに躱しきれないと思ったのか、後ろに飛んでその攻撃を避ける。

 同時、四人の剣を持った男と、二人の槍を持った男がこちらに向けて駆け出してくる。


「お前達っ! 今すぐ止めろっ!」


 ああ……なんて立派な言葉だ、貴族様。




 でも“そういうこと”にしたいのなら、もっと演技力を高めてくれ。




 表情がニヤついているし、言葉にだって迫力がない。

 自分が負けた場合、この九人の男たちが一斉に襲いかかるよう手を打っていたのが丸わかりだ。

 現に男たちも、淡々と作業をこなすだけのアルバイトみたいな顔をしている。とてもじゃないが、慕っている人間がやられたことに対して怒っているような感じではない。


 大方、金に物を言わせて生徒を雇ったのだろう。貴族様らしい。


 だがそこまでいくのなら、金もまた力だ、ぐらい開き直ってほしいものだ。

 辺に自分の名誉を下げないように動くから、こうも腹が立つ。


 ……でも今は、そのおかげで、再びリフィアが身体を動かせる。


 この場にいる九人。

 その全てを無力化するまでこの怒りが保ってくれることを願いながら、俺もまた先陣を切る二人の槍持ちの一人に狙いを定め、駆け出――




「そこまでだっ!!!」




 ――すその直前に、聞こえた背後からの大声で、その場を踏み止まった。

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