8章 取材開始―――66:44:00
コンコン。「失礼しまーす!」室内に響く、男子高校生の元気な挨拶。
ドアが開き、リュックの代わりに未使用フィルムの詰まった肩掛け鞄を提げ、KKが入って来た。
「荷物整理は終わりましたか?だったら暗くなる前に、各車両の写真を一通り撮っておきましょう。二号車はまだテーブルセッティング中だったので、先にスイートと……出来れば、ロイヤルスイートの一号室。絶景と噂の展望窓を是非撮影したいです」
「へえ、この窓より大きいの?」
「比べ物にならないよ。車両の最後尾の、しかも壁一面だからね。通過していく景色が、地平線の彼方までずーーーっと見渡せるの」チラッ。「あ、ごめんねKK。何せ急だったから、事前知識があるの私だけなんだ。良かったらレイ達にも色々教えてあげてくれない?」
「いいですよ。そうだ、ディナー券はお持ちですか?」
早速ちょっと待て。食券方式だなんて一言も聞いてない。
「大丈夫。全員の三日分を私が預かっているよ。あと当面必要なのは……えっと、シャワー券ぐらいかな」
「シャワー券?」
また謎の単語登場。セミアがいるからと高を括っていたが、今からでもパンフレットを確認しておくべきだろうか。
「一つ前の四号車に、共同のシャワー室があるんです。トイレのすぐ隣ですから、行けばすぐ分かると思います」
ああ。行き道にあった、ドアに謎の挿入口が設置されていた部屋か。
「ロイヤルスイート以外はバスルームが無いから、事前にチケットを買って利用するって訳。あ、でも確か時間指定制だよね?だったら皆の時間帯を固めて予約した方が、変に気を遣わなくていいかも」
「ああ、それはそうだね」
少なくとも他の客を待たせて入浴と言う、変に気まずい事態は回避出来る。
「でしたら車内販売が来次第、僕が纏めて手配しておきますよ。ところでボビーはどうしますか?」
尋ねつつ首元をもふもふ。
「何分浴びられるかによるね」
「一人六分だよ」
「じゃあいいや」
「くーん……」
しょげた長い耳を撫で、明日は温泉に入れるんだし、我慢我慢、慰めの言葉を掛ける。その間にセミアは財布を開け、じゃあ宜しくね、早速料金を前渡しした。
「はい。確かに」
「さて。じゃ、そろそろ取材開始といきましょうか」
ビシッ!後部車両方面を指差し、巨乳記者は無駄に熱い掛け声を上げた。
「皆の者。いざ、ロイヤルスイートルームへ突撃!!」「はい!」「くーん!」「おー」




