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流星疾走  作者: 夕霧沙織
74/82

73章 流星を追え!―――00:28:00



 動力源を失い、置いて行かれた六両が見る見るスピードを落としていく。一方、余分を捨てた一号車、クランとジャックの乗った、はあっと言う間に地平線の向こうへと消えてしまった。


「クラン!!クラーン!!!」


 愛しい名を叫ぶも、残された流星の尾は無情にも停車。一ミリも動かない鉄の塊と化した。

「やってくれたな、お前等の女王……で、どうするんだ?」

 コックの質問に、最も背の高いセミアが腰に手を当てた。

「勿論、追い掛けるに決まってるよ!って言っても、夢世界を通って行けるのは私だけなんだよね……しょうがない。皆はここで」

「却下!私も連れて行きなさい!」

「駄目だって那美!本当に精神に悪いんだから!!」

「それぐらい気合で乗り切ります!!」

「強情!」

 やんのやんの言っている女達を尻目に、他の面々も車両を降りる。

 だが、本気でどうする?あの猛スピードでは、全速力で走ったぐらいじゃとても追い付けない。かと言って、こんな所に都合良く車が通り掛かる筈も、


 ブロロォッッ!!「やっと追い付いたでクラン!いきなしあんな心臓に悪いモン送り付けてきおってからに!!」「あ!文牙お兄ちゃん!!」


 線路の横道から現れたのは、野菜出荷用と側面に書かれたトラック。乗っていたのは二十代半ばの、長い黒髪をポニーテールにした男だ。運転席には紫色の髪の美女が座り、無表情にブレーキを踏んで車両を停止させた。

「久し振りだねお兄ちゃん!私だよ、セミア!!」

 助手席に駆け寄る巨乳に一瞬訝しげな顔をした後、彼はニカッと笑う。

「おお、セミアかー!いやー、エライ別嬪さんになったなあ!美人過ぎてわいのおめめが潰れそうやわ!」

 大袈裟な褒め言葉と同時に乳タッチ(おいコラ!?)をし、再会を喜ぶ義理のお兄さん。訛りの強い喋り方といい、どうやら姉妹や大父神とはまた全然違うタイプらしい。

「龍王様。積もるお話は後になさった方が」

 巫女服の従者が冷静に告げる。

「おお、そうやった。セミア、大至急クランを呼んでや!なして野郎の腐りかけ生首を、それも料金こっち持ちにして送り付けてきおったんやあいつは!?そもそもあの仏誰や!?」

「残念ながら女王陛下は現在不在ですよ。何せたった今、我々を置いて向こうへ走り去った所ですから」

 ラントの棘のある説明に、そう怒らんといてあげてな、あれでええ子なんやで、前言はどうしたと突っ込みたくなる弁解をした。

「聞いたな、紫卯?今すぐ発進や。相手は列車、かなりスピード上げんと追い付けんで!」

「この車両では馬力が足りない可能性もありますが、御命令とあらば」

「おう。障害物は特にあらへんから、ストレス発散と思てアクセル思いっ切り踏み込みや!」

 へえ、中々良い上司振りだな。職業は何をしているんだ?それに龍王様って、まさかあの伝説の?

「ちゅー訳やセミア!それにお友達も、定員オーバーにならん程度に乗ってき!」

 後方を示され早速俺と夢使い、イスラの三人が荷台に乗り込む。市場に行く途中だったのか、荷台の半分を真っ白な大根の詰まった箱が占拠していた。お陰でかなり狭い。

「イスラ様、くれぐれもお気を付けて!」

 乗車を手伝ったラントに手を振り返し、四天使は沈鬱な面持ちで遥か前方を見やる。

「クランベリー……私は大馬鹿者です。まさかあなたが、あそこまで思い詰められていたとは……このままでは、任せて頂いた主に申し訳が立ちません」

 つくづく真面目な奴だ。ん?真面目と言えば、アスの奴本当に何処行ったんだ?ったく、肝心な時に無能な衛兵め。


「おい、姉ちゃんアカン!もう重量オーバーや!!」「いいえ!!」


 上司を置き去りに飛び乗った政府員が叫んだ。そしてタイヤに脚を掛けたまま、軽く十キロを超える箱をガンガン地上へ投げ落とす!(しかも片腕で!!)人外の暴挙に哀れ、箱のあちこちがグシャリと潰れる音がした。この分では中身もオシャカだろう。

「ふぅ。これぐらい退ければ問題無いですよね?」

 そう呟き、悠々と空きスペースに立つ政府員。おや?お兄さん、心なしか握り締めた拳が震えているような、


「お、お、おま―――農家さんが丹精籠めはった、血と汗と涙の結晶を投げ飛ばすなやー!!!」


 怒号とエンジン音が吠え、雲一つ無い真冬の青空へと響き渡った。



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