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流星疾走  作者: 夕霧沙織
55/82

54章 三日目・行動開始―――27:00:00



『―――皆様、本日もおはようございます。最終停留駅、ケーニ村への到着時刻は六時半。発車は十四時の予定となっております。特に十時まで開催中ののみの市へお出掛けのお客様は、お早目の支度をお願い致します』「やべ!」


 流れてきた車内アナウンスに慌てて飛び起き、素早く着替えて部屋を出る。共同トイレから出て来た衛兵をどかし、用を足して酔いの残る顔を洗ってサッパリさせた。

「おいアス、何で起こさねえんだよ!?」

 今度はクラン達の部屋の前にいた奴を突き飛ばし、優しく紳士的に朝のノック。


「朝から廊下で何騒いでいるの、レイ?」「公共の場なんだから静かにね」「くーん」


 下り方面から現れた姉妹は既に支度済みだった。ラント達から頂戴したと思われる今朝の新聞を広げ、今日も雲一つ無い晴天だって、セミアが呟く。昨夜あれだけ飲んだのに、どんだけ早起きなんだお前等!?

「あ、お二人共早いですね。もう一号室に行ったんですか?」

 腰を擦りつつ馬鹿丁寧に尋ねる衛兵。

「KKと朝日を撮りに行くついでにね。丁度パレットさんが来たから、ついでにモーニングコーヒーも貰っちゃった。おまけのマドレーヌも美味しかったね、くーちゃん」

「そうだね、ふぁ~」

 昨夜は余り眠れなかったのか、菓子の欠片が付いた口から漏れる欠伸はいつもより幾分大きかった。表向き素面に見えたが、しっかりアルコールは効いていたようだ。

「へえ。で、学生君は一人でまた何処ほっつき歩いてるんだ?」

 姉妹の後ろに姿が無いのを見て問う。

「さあ?でも家と部の分のお土産買うって言ってたし、ケーニに着くまでには戻って来るよ」

 そうセミアが呟いた直後。ドタドタドタッ!四号車方面から、すっかり聞き慣れた靴音が響き渡った。


「良かった、概ね揃っていますね!私達の部屋のドアの隙間に、四通目の予告状が!!」「えっ!?」「何っ!?」


 言うなり那美は緑色の便箋を両手で素早く広げ、俺達に掲げる。

  

―――前略 業深い北斗社の皆様へ


 次なる不善は『妄言』。孤独の内に磔にされ、己が冒した罪を一人悔いているであろう。

                            北極星―――


「いい加減駆け引きは無しにしましょう、クラン。正直に答えて下さい。この予告状が示す人物は」

「完全に那美の予想通りだよ。私的には、もうちょっと捻りがあってもいいと思うけど」

「そんな物は必要ありません!来なさい!マスターキーは先に確保してあります!!」

「流石に三回目ともなると手際が良いね。ほら、撮影係さん達も」

「はーい!」

 五人と一匹で通路を駆け抜け、三号車の十一号室前へ。先に到着していた三人の乗務員と合流し、無言で頷き合う。

「ここは私が開けます。グランダ君、シー君を連れて後ろに下がっていなさい」

「分かった」

 車掌がポケットからマスターキーを取り出し、ガチャン!開錠する。


 キィ……。「ターラーさ――――ひっ!!?あ、あ……」「失礼」


 ショックで尻餅を着いた最高責任者を跨ぎ、政府員が室内へ。遅れて俺達も足を踏み入れる。


「ほー」「へえ」「げ、こいつは酷え……」「全くです……」


 強欲な元弁護士は予告状通り、真っ白な壁に磔にされていた。両手足と眉間に直径約三センチのぶっとい鉄の杭を穿たれ、血と脳漿を垂れ流しながら……。

 流石の鬼女も、この惨状に不憫を感じたのだろう。見開かれた両目を閉じてやり、それから実況検分に移る。

「今度こそ正確な死亡推定時刻を割り出せそうですね。セミアちゃん、アス君。急いでイスラさんと先輩を呼んで来て下さい」

「OK」

「分かりました」

 素直に首肯する二人。

「通行の邪魔になるので、一旦ドアは閉めておきましょう。通路のお二人には運転車の先生達へ連絡後、取り敢えず呼ぶまで通常業務でお願いします」

「了解しました」

「だが、もうすぐケーニへの到着時刻だぞ?降りる客の中に犯人がいるかもしれない。現場検証が終わるまで足止めしておいた方がいいんじゃないか?」

「いえ。これまでの犯行でも、容疑者は逃亡を謀りませんでした。降車可能になったら知らせて下さい。証拠品を処分される危険性があるので、荷物とボディチェックをします」

「分かった」

 四人がそれぞれの役目のために散り、再度扉が閉ざされる。そのせいで一瞬、室内に籠もった死臭が濃くなった気がした。



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