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流星疾走  作者: 夕霧沙織
53/82

52章 兄妹―――29:50:00



 ペラッ。ずるずるずる……。「―――本当にお前等、あいつの仲間じゃないんだな?」


 自己紹介を終え、遅い夜食兼早い朝食(塩ヌードル)を啜る少年。名前はジャック・ビーツェ。ビーツェ車掌の誘拐された長男だ。

「ええ、私達はミアちゃんの味方。昨日一昨日の事件、あなたの仕業でしょ?」

「なっ!?あ、あなたみたいな子供が殺人を……!!?」

 驚愕する衛兵に、ジャックは小さな肩を竦めてみせた。

「俺は脅されて仕方なく指示に従っただけだ。あんただって、家族を盾にされりゃ大抵の事はやるだろ?」

 ずずっ。

「尤も昨日は、指定された部屋に忍び込んで内鍵を開けるのと、リュックに入ってた小瓶の中身を冷蔵庫のミネラルウォーターに混ぜただけ。悪い予感はしたけど、まさか本当に毒薬だったとはな……」

 強気な態度とは裏腹に、幼い瞳は罪悪感で満ちていた。意外と素直な子だ。私だったらとことんすっとぼけるのに。

「忍び込んだと言うのは、先程のようにですか?」

 天井からだらーん、吊り下がったロープを指差す。

「ああ。列車の上は通風孔になってるんだ。外へも出られるぜ。子供でないと狭くて無理だが」

「では、熱傷自体は犯人の仕業」

「当ったり前だろ。子供があんな豚ババア、風呂場まで引き摺っていけると思うか?やったのは『北極星』本人さ。手下にあんな真似は無理だ」

「手下?女王様の言っていた、二人目の犯人の事ですか?」

「それはまた別口。―――ああ、そっか。アスは会った事無かったね」

 私は五号室乗客の社長夫人セレン・バービーとその娘、ミアの一件を話した。察しの良い彼は流石、すぐに事情を悟る。

「では、彼女等は親子などではなく、誘拐犯と監禁中の被害者なのですね。そしてミアさんを守るために、ジャックさんは犯人の言うなりに手伝いを……」

 沈痛な面持ちの後、意を決して腰を上げるアス。

「こうしてはいられません!今すぐ那美さん達を起こして、彼女を保護してもらいましょう!子供達さえ無事なら、車掌さんも何の躊躇い無く列車を停め」

「待った」

 正論だが時期尚早だ。それに、まだ夫人の拘束は拙い。

「ジャック。一昨日の死体入れ替えトリックの説明もお願い出来る?」

 すると一旦気を許しかけていた少年は、眉を顰め口を噤む。ふむ、予想通りの反応だ。

「悪い。そいつは……言いたくない」

「ああ、別にいいよ。私は方法も証拠の在処も、とうの昔に知っているから」

 そう聞くや否や驚愕し、すぐさま反論してきた。

「はぁっ!!?は、ハッタリも大概にしろよ!?手前が『アレ』を知ってる筈が」

「実はあの夜、私もへべ駅から荷物を送ったの」

 にやり。

「速達にはしなかったけど、今日辺りお兄ちゃんの所へ届く頃だよ」

「ま、マジか……いや、でも待てよ。逆にチャンスなのか、こいつは……?」

 ほう、頭の回転は悪くない。中々将来有望な子だ。尤も、今回ばかりはかなり相手が悪いけれど。

「お二人共、一体何の話を」

「何れ分かるよ。―――まぁいいや。いい加減傍観者も飽きたし、ささやかだけど一度反撃と行きますか」

 私は人差し指をチョイチョイし、二人に耳を貸すよう指示した。



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