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流星疾走  作者: 夕霧沙織
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51章 ミッドナイト・ザ・ショー―――30:02:00



 ガタン、パサッ。「よ……っと」


 天井からロープを垂らし、それを伝って室内へ。無人なのは確認済みなので、うーん!思う様凝り固まった全身を伸ばした。

(ったく、犯人の奴め。児童虐待もいい所だぜ……)

 先程通風孔から見た、ベッドで魘される妹の顔を思い出す。緊張しいの上、しょっちゅう微熱を出すあいつの事だ。あと二日保つかどうか。

(ま、一応食わせてもらってるみたいだし、俺も飯にしてとっとと寝よう)

 不本意とは言え今日、いやもう昨日か。一仕事終え、心身共にクタクタだ。早く腹に温かい物を入れ、トランシーバーが鳴るまで泥のように寝たかった。

 押し付けられたリュックを開け、塩味のカップ麺を取り出す。個人的には豚骨味が好きなんだが、この際贅沢は言えない。何せ相手は凶悪な誘拐殺人犯だ。

 が、蓋を開けかけたその時。誰もいない筈の暗闇が、不意に動いた!


 パッ!「うわっ!!?」


 天井からのスポットライト(って、単にルームライトを一つ点けただけじゃねえか!?)の照らし出す先。何時の間にか直立していた男女二人組は、尻餅を着く俺へ一礼。そして次の瞬間、そいつ等は本気で訳の分からない行動に出た。


「はいはいはいはい!」「え?」


 俺より少し年上。十四、五の金髪は、突然そう言いながら手を叩く。相方の突然の暴挙に、俺同様呆気に取られる二十代前半のイケメンの胸をバンバン!

「何ボケッとしてるの。さっさとツッコむ」

 あ、この声。昼間、妹へ髪飾りを渡してくれた女か。あの時は手しか見えなかったが、まさか俺達同様子供だったとは。

「へ?」

「ほら、いつもみたいに『なんでやねーん!』ってバシッ!と一発」

「そんなの僕、一度もやった事ありませんけど?と言うか、何でいきなり漫才が始まっているんです??」

「お客さんの前でウダウダ言わない」

 バシッ!おい、自分が殴ってるじゃねえか!?

「取り敢えず、初心者でも簡単そうなコントをやるよ。私が赤頭巾やるから、アスは」

「狼ですね」

「ノッポを活かして、森に生えてる樹をお願い」

「何でですか!?」

 バシッ!遠慮がちなツッコミだが、手首のスナップの角度は中々良い。

「うーん、まだまだ。まあ修練あるのみだね。―――可愛い赤頭巾ちゃんはお母さんに頼まれて、お婆さんのお見舞いに森へ行きました。寄り道せず到着したお家のベッドに寝ていたのは―――」

 婆さんを丸呑みにした狼、だっけ?今考えると、子供向けのくせに残酷な話だよな。幾ら最後がハッピーエンド(?)とは言え、初めて聞いた時は流石にドキドキしたもの、


「―――驚く事に、大蛸を丸呑みにした埴輪様だったのです!」「狼と婆さんと、ついでに樹は何処行ったー!!?」 


 しまった!?無意識に出たノリツッコミに、慌てて口を塞ぐ。廊下、誰もいないだろうな?もし万が一見つかったら、妹と親父があいつに殺されちまう……!!

「赤頭巾ちゃんが平身低頭で拝んでいると、入口から狩人のライフルと猪を奪ったお婆さんが帰ってきました」

 超展開過ぎる。つーか、婆さん滅茶苦茶元気じゃねえか!?

「その後、猪は牡丹鍋にされ、埴輪様にお供えした残りを食べて二人はお腹一杯になりましたとさ。めでたしめでたし」

 余りの荒唐無稽な結末に凍り付く相方へ手を振り、おどけたジェスチャーで指示を出す。十数秒後。可哀相にも唇を震わせながら、イケメンは望まれた言葉を発した。


「な、な―――なんでやねーん!!?」



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