23章 最重要任務―――62:10:00
捜索隊出発と、食堂に残っていた乗客達の誘導終了後。再び無人となった二号車は、深夜灯のみで薄暗い。正に隠密作業をするにはうってつけだ、と言う訳でこそこそこそ。
「―――よし、準備OK」「やっぱりいましたね、女王様」「くーん」
全開されたままの出入口の下。もしもに備え持参した槍を持つアスと、嗅覚担当のボビーがこちらを見上げている。
二者の軽く痛い視線を浴びつつ、私はぷちぷちと紙袋で梱包を終えたばかりの埴輪車掌を紐で固定して背に担ぐ。うん、これなら大丈夫そうだ。
「忘れ物をしたので戻って来てみれば、案の定……」溜息。「立派な窃盗ですよ。人として恥ずかしくないんですか?」
「量産されているから全然」両手を上に挙げ、「尤も、この子は正真正銘最初に作られたオリジナルで、貴重なのは間違いないけどね」
「止めても無駄、でしょうね……後できちんと相当額を弁償して下さい。それで目を瞑っておきます」
「サンキュー!流石アス、話が分かるね。で、忘れ物って?」
見た所、服装も照明も武器も完璧だ。はて、おやつでも取りに来たのか?
「勿論、女王陛下の的確で有り難い助言ですよ。僕達は副車掌を見つけられますか?」
ほう、謙虚な態度だ。加えて質問も悪くない。
「遺体なら見つけられるよ、但し多分―――違うけどね」「え??」
暫し悩んだ後、衛兵は頭を上げた。
「意味はさっぱり分かりませんが、矢張り一度戻って正解でした。ありがとうございます、女王様」
「転ばないようにね」
「はい。女王様も道中お気を付けて」
そう挨拶を交わし、踵を返して線路を逆方向へ駆け出した背とふかふかの尻尾を見送った。




