16章 凶つ星―――64:15:00
「―――文章は以上です。サインは」「北極星」「っ!!?」
どうやら的中らしい。しかし、
「『無印の北極星』?他は何も書かれていなかったの?」
「ええ、特には。一応ラントが手に取って色々調べていましたが、特殊なインクも使われていないそうです。尤もあなたが見れば、もっと異なる真実を浮かび上がらせられるかもしれませんが」
自嘲気味に笑った天使は、両掌を組んで俯く。
「北極星……あの星は主の創造物ではなく、外宇宙で瞬く光。不吉な死の象徴、そんな忌むべき名を何故犯人は使ったのでしょう……?」
「封筒に他の物は?」
「それは……分かりません、ね。私達が見せられたのは手紙と、開封済みの封筒だけです。もし仮に最初開いた人物、鉄道会社の誰かが『不都合な物』を抜いていたとしても……我々にはその有無を判断出来ないでしょう」
「へえ、少しは頭が回るじゃない。誰かの受け売り?」
「ええ、クランベリー」口元に手をやり、「あなたならどう考えるだろうと思って、プログラムに無い知恵を絞ってみました。どうです、矢張り他にも何か同封されていたのでしょうか?」
「封筒の大きさは―――そう。じゃあ拙い写真の一枚ぐらいは入っていたかもね。ところで宛名は?」
「北斗社御中、とだけ」
これで情報を出し切ったらしく、イスラは拳を握り締め、こちらを真剣に見つめてきた。心配性の主人へ報告するため、意見を聞かせろと言わんばかりだ。
「どうですか?現物を見たいなら、これから彼女達のいる九号室へ行って頼んでみますが」
「いいよ、今ので大体概要は掴めたし」
説明下手の四天使にしては分かりやすかった方だ。だが、『ただの北極星』と言うのがどうも気に掛かる。若しや、別口か?
「ではあの、その……」もじもじ。「大父神様には一体、何と御説明すれば……?」
あの親馬鹿、いや創造主馬鹿め。事件が起こってもいない内に下ろすくらいなら、最初から反対すれば良いのに。
「手紙の主が律儀な性格なら、事件が起こるのは恐らく北極星が輝く時刻。つまり少なくとも、夜までは平和って事。まだ日没まで時間はあるし、そうビクビクしなくてもいいよ」
「そう言わずにクランベリー、知恵を貸して下さい!誘ってくれたラントの好意をこのまま無下にする訳には……!」
「だーかーら、無視しときなさいってそんなの」
「む、無視!!?」
今にも飛び出しそうな程蒼い目が見開き、持ち主のショックを表現した。
「そ。幾ら神様だからって、部下の休暇にまで口出す権利無いよ。通信が入ったら、適当に『列車なう』とか言っとけば充分。ちょっと失礼」
私は保護者の右耳を軽く引っ張り、唇を寄せる。そして精一杯凄みを利かせ、こう囁いた。
「―――そう言う訳だから、いい加減子供みたいな我儘は止してよね、おにーちゃん!!」
耳介奥から響く「わっ!?」を聞き、私は一つ大欠伸を掻いた。




