第六話 年を取らない女
私の名前はA。二十四歳のOL。今日は一月一日。私の憂鬱な誕生日だ。
私は半纏を着たまま、コタツに入っていた。
ノーメイクの顔で、ぼんやりとテレビを眺めている。
「はぁ……また歳をとっちゃった……」
まだ24歳。周囲から見れば、年齢を気にするような歳ではない。
それでも私にとって、誕生日は嬉しい日ではなかった。
また一つ、歳を取ってしまった。
このまま時間が過ぎていけば、いつか若さを失ってしまう。
それが嫌だった。
また溜息を重ねてみかんを取ろうとしたとき、コタツの向かい側に座り、ミカンを皮ごと食べている男がいた。
「こんばんは。私は管理者です」
「えええええ!?誰!?大声出しますよ!!」
”管理者”は掌を私に向け、皮ごとのミカンを急いで飲み込んだように見えた。
「あなたの性質が善か悪かなんてどうでもいいんです。ただ、あなたが『歳を取りたくない』という不満を持っているのは、このメーターが示している」
「……歳を取りたくない?」
「なので、その不満を解消するため、あなたが歳を取らない世界にご案内いたします!」
その瞬間、視界が白に染まった。
───
その世界で、私は普通に生活を始めた。
最初は半信半疑だった。
だが、時間が経っても自分の姿が変わらないことに気づいた。
一年経てば、普通なら一つ歳を取る。
しかし、この世界では違った。
── 歳を取らない?
その事実を知った私は、次第に自分に自信を持つようになった。
歳を気にする必要がない。これから先も、今の自分でいられる。
その自信は、私自身の雰囲気まで変えていった。
そして、以前よりも綺麗になった私に、素敵な男性が現れた。
二人は恋人になった。
彼からのプロポーズを、私は喜んで受け入れた。
お互いの両親とも会い、やがて結婚式の日が決まった。
来年の一月一日。二人はハワイで挙式することになった。
二十四歳最後の日。そして、独身最後の大晦日の日。
私は彼と一緒に空港へ向かっている。
「明日だね」
「うん」
私は笑った。もう、歳を取ることなんて怖くない。
大好きな人と、これからも一緒にいられる。
そう思いながら、私は飛行機に乗った。
そして、眠りについた。
───
目を覚ます。
見慣れた天井だった。
「……?」
私は身体を起こした。半纏を着ている。コタツに入っている。ノーメイクだった。
「……え?」
嫌な予感がした。私は鏡を見る。
そこに映っていたのは、一年前の自分だった。
慌ててスマホを見る。が、そこにあるはずの彼とのメッセージのやりとりはもちろん、連絡先すらも消えていた。
「……戻った?」
私には、一年間の記憶が残っている。
── 彼と出会ったこと。
── 恋人になったこと。
── プロポーズされたこと。
── そして今日、ハワイで結婚式を挙げるはずだったこと。
全部覚えている。
なのに、自分だけが一年分、過去に戻っていた。
私はスマホを握りしめたまま、動けなかった。
────
管理者は、これまでとは違う手応えを感じていた。
「年を取らないばかりか、キレイな女性になってるじゃないか!」
管理者は満足そうにメモに書き留めた。
「一年経つと元の日に戻る世界 大成功」




