43 花火と伝えたい言葉 祭典編
迷っている少年少女は、何歳になっても迷い続けるものなのだろう……
人生がさまざまな段階へと進んでいくにつれて、直面する迷いや困難も変わっていく。けれど、ときには自分の苦しみを誰にも助けてもらえないことだってある。自分も、本当の意味で誰かの力になれたらいいのに……
林月は前へと歩いていた。
時間がもう間に合わなくなりそうだ。もし間に合わなかったらどうしよう。せっかく菲娜と約束していたのに、自分のことを片づけるために出かけてしまったせいで、こんなことになってしまった……
そういえば、あのとき菲娜も、そんなことはしないでほしいと言っていた気がする。でも、自分はきっとこういう人間なのだろう。彼女だって、こんなことで怒ったりはしないよね……
林月は前方を見つめ、かすかに笑みを浮かべた。その後、先ほどスマホにメッセージが届いていたことを思い出し、取り出して確認した。
それは菲娜からのメッセージだった。待ち合わせ場所は、6番展望台だと書かれている……
6番……6番か……
林月は素早く前方を見渡した。しかし、花火の影響もあって人混みはますます増え、前方の道がどうなっているのかさえ、まったく見えなかった……
今、自分がどの出口にいるのかも、どの展望台にいるのかも分からないのに、どうすればいいんだよ? 人が多すぎるだろ……
林月はすぐに歩き出し、何度も前へと進んでいった。しかし、人混みや祭りの屋台が多く、目的地を見つけるのは本当に難しかった……
林月は歯を食いしばり、祭りのあちこちを素早く駆け抜けていく……
明かりに照らされた街並み、賑やかな人々、そしてさまざまな匂いが漂う屋台の間を通り抜けていく……
夜空に瞬く星々も、すべてが林月の目の前をあっという間に過ぎ去っていった……
林月がひたすら走り続けるにつれて、目の前の景色も次々と移り変わっていく。
祭りの音楽が絶えず林月の耳に響いていた。しかし、菲娜を探すことに必死だったせいか、もともと賑やかだった音楽も、次第に騒がしく感じられ、林月の心をかき乱していった……
林月は足を止めた。
ダメだ。祭りには人が多すぎる。菲娜と約束した場所を見つけるなんて、もうほとんど不可能に近い……
それでも、菲娜の誘いを無駄にするわけにはいかない。けれど、今の菲娜は一体どんな気持ちでいるのだろう……
ついさっき、自分のせいで彼女を泣かせてしまった。それでも菲娜は、あんな言葉でごまかしてくれた……
でも、よく考えてみれば、自分は彼女のことをあまり理解できていないんじゃないか……
最初に出会った頃だって、マフラーのことで彼女を怒らせてしまった。それに、彼女の本当の過去や、その裏にある物語についても、表面的なことしか知らない。
こんな自分が、彼女にとって本当に尊敬に値する存在だなんて言う資格はない……
今になって思えば、自分はあの人たちのことも、本当の意味では理解できていなかったのかもしれない……
菲娜、夜璃、そして異世界の人たちのことも、結局は表面的な部分しか見ていなかったような気がする……
林月がそう考えていると、突然、頭に奇妙な痛みが走り、耳元から反響するような声が聞こえてきた……
この感覚は一体何なんだ……痛い……
頭の中に異世界からの召喚の声が何度も浮かび上がってくる。長い間、戻っていないからなのだろうか。その声は何度も自分を呼び続けていた……
だけど、今は異世界に戻るわけにはいかない。今戻ってしまったら、祭りも菲娜との約束も、果たせなくなってしまう……
今は絶対に戻りたくない。いい加減にやめてくれ……
以前は、戻りたいと思えばいつでも戻れたはずなのに、どうしてこんなときに限って……どうして……
今の自分は戻りたくない。ようやく、やり遂げたいと思えることができたんだ。嫌だ……嫌だ……
林月は苦しそうに口元を押さえた。頭の中に響く声と痛みが、何度も全身へと広がっていく……
嫌だ……ほかのときならまだいい。でも、今だけは嫌なんだ……お願いだから、早く止まってくれ……
「どうして……一体何を恐れているの? 失望することや、機会を逃してしまうことが怖いの? そうなの……?」
「怖いのなら、運命に抗ってみなさい! まずは今、自分がやるべきことを最後までやり遂げるのよ!!」
頭の中のもう一方から、少女の声が聞こえてきた……
………「パタッ……ジジジジ……」………
頭の中に、再びあの聞き覚えのある声が響いてきた……
林月は歯を食いしばり、目を閉じた。そして、再び目を開けると、自分がまだ人で溢れかえる祭りの中にいることに気づいた……
「うん……これは一体どういうことだ? 今回は異世界に飛ばされなかったのか?! でも、ここにいられる時間もあまり長くなさそうだ。早くしないと!!」
林月がそう言い終えたとき、空の片隅から突然、一発の花火が打ち上がった。賑やかな祭りの中に大きな音を響かせ、夜空に美しく咲き誇る!
金色の光が空から降り注ぎ、夜空に打ち上がる最初の花火の幕開けを告げた……
林月は驚きながら、空に咲いた花火を見つめていた……
え……もう始まったのか?!
まずい……まさか、もう間に合わないのか……
林月はため息をつき、顔を上げて、星々が散りばめられた夜空を見上げた……
夜空には無数の星々が集まり、どこまでも続くような、きらびやかな星空を形作っていた……
星空か……普段はほとんど見ることのできない景色が、まさかこんなところに広がっているなんて。いつもなら、特に気に留めることもないのに……
そよ風が林月のそばを吹き抜けていく……
林月は広大な星空を見つめながら、スマホをぎゅっと握りしめた……
「菲娜、そうだよな……
これで、本当にいいのかな……
僕は本当に間に合うのかな……
もし決められた時間までにたどり着けなかったら、君はどう思うんだろう……
君はあんなにも楽しみにしていて、僕のことを信じてくれているのに、僕はいつも何をやってもうまくいかないし、他人の気持ちだって分かっていない。いつもそんなふうに、自分を責めてばかりいるけれど……
でも、君はきっと、そんな言葉を聞きたいわけじゃないよね。だから、本当に伝えたいことを言うなら、それは……
これで大丈夫だよね? 僕は頑張ってそっちに向かうよ。たとえ一緒に祭りで花火を見られなくても、大丈夫だよね? お互いを信じていれば、それでいいんだ……
なんてね、今行くから!!」
林月はスマホを開き、菲娜に音声メッセージを送った……
星空の下に立つ林月は、そっと微笑んだ……
……
一方、6番展望台にいた菲娜は、次第に人で埋め尽くされていく展望台を眺めながら、焦った様子で前方を見つめていた……
「まったく、ネットの動画では、どこも綺麗な景色ばかりだったし、人混みだってほとんどなかったのに……
花火が打ち上がる瞬間なんて、全部あんなに綺麗だったのに、どうしてこっちはこんなに人だらけなのよ? ネットの動画なんて、まったくの嘘じゃない!
これじゃ、アニメみたいな雰囲気も全然ないじゃない。全部こういうもので台無しになっちゃったよ!!」
雅弘が大きな声で言った。
「うん……一体何を考えているのよ……」
牌子は呆れた様子で雅弘を見つめていた……
そのとき、菲娜は林月から届いたメッセージに気づいた……
音声メッセージ?! まったく、もう……
菲娜はスマホを手に取り、林月から届いた音声を聞いた……
それから、前方の夜空を見つめ、笑いながら言った。
「ふん! そうなの? 私の考えや気持ちが分かっているなら、頑張ってこっちまで来なさいよ!
うん……
それとも……」
菲娜はそう言いながら、展望台の端まで歩いていき、下へと向かっていった……
雅弘は驚いた様子で菲娜の方を見つめた。
「ええっ……菲娜、どこに行くつもりなの? もう最初の花火が打ち上がったんだよ! 今ここを離れたら、花火が見られなくなっちゃうよ?!!」
菲娜は雅弘の方を振り返り、彼女に親指を立てて、笑いながら言った。
「ふふん、雅弘。牌子と一緒にここで私たちの場所を取っておいてね。私、あの男を連れてくるから! そのほうが早いかもしれないしね!!」
「ええっ……何それ? どうやって場所を取っておくのよ? ここ、どこも人だらけじゃない! それに、ここは展望台なんだよ? 冗談はやめてよね!?!」
雅弘は慌てた様子で言った。
「大丈夫よ。私の目を見て、雅弘。あなたなら絶対にできるわ。私はあなたのことを心から信じているんだから!」
菲娜はそう言った。
雅弘は菲娜の方を見つめ、少し困ったように笑った……
菲娜が下へと降りていくと、そのとき、すぐそばに自転車を押しながら上ってくる男性の姿が目に入った……
その瞬間、菲娜はまるで光明を見つけたかのように、嬉しそうにその男性のもとへ駆け寄った。
「ねえねえ! この自転車、ちょっとだけ貸してもらえませんか?!
今、急いで祭りの会場まで人を探しに行かなきゃいけないんです!」
菲娜は焦った様子で、笑顔を浮かべながら言った。
「えっ……ええっ! でも、祭りの会場には自転車で入れませんよ……」
男性は慌てた様子で答えた。
「大丈夫です。すぐに戻ってきますから。これ、借り物ですよね? あとで私が返しておきます!!」
菲娜は笑顔で言った。
「あ……はい……」
男性はそう答えた。
菲娜は素早く自転車にまたがると、下へ続く山道に沿って勢いよく走り出した……
雅弘は菲娜が駆け下りていった方向を見つめ、驚きを隠せなかった。
「ええっ……菲娜……
一体何をしているのよ? 本当に大丈夫なの?!」
……
一方、林月は人混みの中でスマホを取り出し、位置情報を使って6番展望台の場所を探していた。
一体どこにあるんだ? どうしていくら探しても見つからないんだよ……
周りの人々があちこちに集まり始めているのを見ると、さっきの花火は、まだ始まりの合図にすぎなかったのだろう。花火が本格的に打ち上がるまでには、まだ少し時間があるはずだ……
まったく面倒だな。どうしていつも、こんなときに限ってこういうことが起きるんだ……
林月はスマホを高く掲げ、慌てて位置情報と方角を確認していた……
そのとき、突然菲娜から電話がかかってきた。林月は慌ててスマホを手に取り、電話に出た。
次の瞬間、電話の向こうから菲娜の大きな声が響いてきた!
「ねえねえ?! 林月、今どこにいるのよ?!
さっきの話、面倒くさいし、聞いていて頭が痛くなっちゃうよ!
それなら、いっそ私が直接そっちまで迎えに行って、連れてきたほうが早いんじゃない?
一体いつまで、この道で迷い続けるつもりなのよ!
間に合わなかったからって、私が怒ったり悲しんだりすると思っているの? たったそれだけのことで、ずっとそこで立ち止まって、迷い続けているの?!
あんなに多くの人を助けることができたのに、自分のことになると何もできないの?!」
林月は菲娜の言葉を聞き、少し驚いた。けれど、彼女の言うことは確かにその通りだった……
たった一つの出来事に、僕はずっと同じ場所で足踏みをしていたんだ。しかも、他人のことばかり気にして、自分自身は何も成長できていないのか? こんな自分は本当に弱すぎる……!
ずっと決められた答えを嫌ってきた。それなら、自分が本当にやりたいことは一体何なのだろう? 自分の本当の価値とは、一体何なのだろう……!
林月は夜空を見上げ、静かに微笑んだ……
一方、そのそばでは花火のアナウンスも始まった!
「はーい! それでは、私が司会を務める最後のプログラムです!
花火はまもなく6番展望台から打ち上げられます。それでは、皆さん、続いて私のパフォーマンスをお楽しみください!
私は今年デビューしたばかりの歌手です。ぜひ、私の作品を聴いていってください!!」
祭りのステージから、若い少女の声が響いてきた!
そして、6番展望台の方角からも、花火が空へと打ち上がった……
林月は驚いて、そちらを振り向いた。
花火は6番展望台から打ち上げられているのか? ということは、あそこが……
次の瞬間、花火が夜空で大きく弾け、色とりどりの光が空いっぱいに広がった…………
「うんうん、林月、聞こえた?!
さっきの花火が上がった方向、見えたよね?! あそこが6番展望台でしょ? どうやら、あそこが花火の打ち上げ場所みたいだね!!
すごい偶然だよね! 私もちょうど今、そっちに向かって駆け下りているところなの。だから、あなたもそっちに向かって進んで! あそこで私が受け止めてあげるから!」
菲娜は笑いながら言った。
林月は菲娜の言葉を聞き、驚きながらも、どう反応すればいいのか分からなかった。
「ええっ……ちょっと待って、菲娜……
受け止めるってどういう意味だよ? でも、だいたいどこなのかは分かった気がする。頑張って間に合わせるよ!!」
林月はそう言うと、スマホをポケットにしまった……
続いて、手を伸ばして前方を指し示しながら、必死に方向を確かめた……
その頃、花火も打ち上がり始め、ステージの方からは司会を務める少女の声が響いていた……
(ふふん……皆さん、今日は祭りを楽しんでいますか?!
今日、こうして私がここに立てていることを、本当に嬉しく思います。これもすべて、何年も前に出会った、ある人のおかげなんです!
何年も前、私はまだ街のあちこちを巡りながら歌を歌っていました。なかなか成功できず、周りの人たちや家族からも、よく笑われていたんです……
その頃、私は自分の存在や夢に疑問を抱き始めていました……
あのときも、私は祭りの会場の片隅を巡っていて、一人でギターを持ち、そこで歌っていました。でも、やっぱり誰も足を止めて、私の歌を聴いてはくれなかったんです……
どれだけ努力しても、結局この程度なのかもしれない。少なくとも、自分なりに頑張ってはきたんだよね……もしかしたら、これが運命なのかもしれない……
あの頃の私は、すべてを諦めて、自分の夢を捨てようとしていたのかもしれません。
そんなとき、一人の人が私の隣に座ってくれました。その人は楽しそうに笑いながら、私の演奏を真剣に聴いてくれたんです……
そして演奏が終わると、その人は私の前まで歩いてきて、たくさんの励ましの言葉をかけてくれました。それから、こう言ったんです。
「ねえ、そこの知らない人……
あなたの音楽、なかなかいいじゃない。きっと一生懸命頑張っているんでしょうね。すごいと思うよ!
でも、今のあなたは、自分のことも、目の前にあるすべてのことも、まだまだ迷っているように見えるよ!
私もあなたの力になれるかどうかは分からないけれど、私なりの方法で、あなたを助けられるかもしれない!」
その少女は真剣な口調でそう言いました。
当時の私は、その子の目をはっきりと見ることはできませんでした。でも、その言葉には確かな真剣さがありました!
「運命は、もしかしたらすでに多くのことを決めているのかもしれない。どれだけ努力しても、自分の望む結果を得られないことだってあると思う……
でも、だからといって諦めてしまっていいの?
他人に無理だと言われたら、本当に無理になってしまうの? 他人に笑われたら、ただ黙って自分の夢を諦めるしかないの?
そんなふうに考えなくていいんだよ。たとえ運命がすでに私の結末を決めていたとしても、私たちは自分の足で最後まで歩いて、自分が一体どこまで行けるのかを確かめるべきなんだ!」
少女は私の肩を叩き、たくさんの励ましをくれました。そして、運命を変えるために努力するきっかけを与えてくれたんです!!)
少女はステージの上に立ち、真剣な表情で語り続けていた。
一方、周囲の人々は少女の話を聞きながらも、疑わしげで退屈そうな表情を浮かべて彼女を見ていた。
「おいおい! あのステージに立っている女の子、誰だよ?!
自分に酔っているような女が、祭りの時間を無駄にしてさ。本当に哀れだな!」
近くにいた若者や中年の人々が、次々と不満を口にしていた。
夜璃は周囲の人々の反応を見て、少し意外に思うと同時に、何とも不思議な感覚を覚えていた……
「そうなの? この世界には、人を励ますような感覚が、もうずいぶん長い間なくなってしまっているみたいだね!」
夜璃は周囲を見つめながら、静かに考え込んでいた……
ステージ上の少女も、そっと目を閉じた……
(あのとき、私を助けてくれて、努力によって運命を変えるきっかけをくれた少女、星空に感謝を伝えたい!
あなたにこの声が届くかどうかは分からないけれど!)
少女はそう言い終えると、ステージの上へと手を伸ばし、歌い始めた……
そして、少女が口にした名前を聞いた夜璃は、少し驚いた様子で言った。
「星空なの? どうやら彼女は、本当に自分なりの方法で誰かを変えてきたみたいだね。そんな彼女は、本当にすごいと思うよ!!」
ステージからは、少女の音楽と歌声が響き渡っていた……
運命や他人の冷たい視線に抗おうとする、その姿勢は本当にすごいものだね!!
そして、花火も打ち上がり始めた……
「おおお、花火って本当に綺麗だね!!」
牌子は花火が打ち上がる方向を見つめながら言った。
「ちょっとちょっと! あなたも一緒に場所取りを手伝ってよ! どうして私一人だけで頑張っているのよ! 一人で楽しんでいないでよ!!」
雅弘は牌子の服をつかみながら言った……
牌子は前方に咲く花火を見つめ、笑みを浮かべながら静かに言った。
「うんうん……分かっているよ。でも、こんなとき、一体どうやって場所を取ればいいんだろうね? そういえば、私は菲娜ならきっと何とかしてくれると信じているよ!
今、菲娜がこうして行動しているということは、きっと彼女なりの考えがあるんだと思う。だから、心配しなくても大丈夫だよ!!」
雅弘は牌子を見つめ、口元を少しだけ緩めると、どこか気まずそうな笑みを浮かべた……
祭りの会場には少女の歌声が響いていた。花火の音に少しかき消されてはいたものの……
それでも、少女の歌声と歌詞に込められた希望や夢は、確かに人々の耳へと届いていた…………
……
林月はひたすら6番展望台へ向かって走り続けていた。
今度こそ、絶対に成功させなければならない。
今、自分が出会った人たちは、本当にみんな優しい人たちばかりだ……
みんな一緒に頑張ってくれるし、そばにいてくれる。そこにあるのは、叱ったり責めたりすることではなく、心からの励ましの言葉だった。今の僕は、本当に幸せだな……
こんなところで失敗するわけにはいかない……
以前の僕は、自分のことを、何一つできないままの弱い人間だと思っていた。でも、異世界に来てから今に至るまで、ずっと誰かに助けられながら、一生懸命に生きてきたんだ……
初めて菲娜と出会ったときのことを、今でも覚えている。彼女は、人間界で僕が初めて得た救いだった……
彼女自身も制約を受けていて、家族からもさまざまな悩みを抱えさせられていた。それでも、あのときの僕を救ってくれたのは、確かに彼女だった……
ほかのみんなも同じだ。
だからこそ、僕も努力し続けなければならない。みんなだって一生懸命に頑張っているんだ。なのに、僕だけが途中で諦めてしまっていいわけがない!
僕も、みんなのようにすごい人になりたい。
林月は少女の音楽と歌声を聴いていた。その旋律は、次第に彼の頭の中で何度も響き渡るようになっていった……
この歌には、昔、音楽やアイドルアニメに救われたときのような雰囲気がある。そして、どこか懐かしさを感じさせてくれる……
みんなも、それぞれの生活や夢のために努力しているんだ。だから、僕がいつまでも諦めることばかり口にしていていいはずがない……
林月は前方を見つめ、自信に満ちた笑みをそっと浮かべた……
菲娜は何度もペダルを踏み込みながら、山の下へと向かって自転車を走らせていた。前方にある石や木々を懸命に避けながら進んでいく。
目の前には石だらけの危険な山道が続いていた。しかし、菲娜は少しも怖がることなく、むしろ笑みを浮かべながら、さまざまなことを考えていた……
最初に林月と再会したとき、確かに彼は私に大きな衝撃を与えてくれた。そして、変化と救いを感じさせてくれたんだよね。
林月は自分のことが大嫌いな人だった。そのことは、当時の私にも分かっていたんだ。でも、実は今の私も、あの頃の自分が大嫌いなんだよね……
感情に振り回されたり、閉ざされて傷つけられるばかりの世界にいたりして、いつも自分を責めたり、自信をなくしたりしていた。きっと、そこも林月と同じなんだろうね……
林月はいつも、他人のほうが自分より優れていると思い込んで、自分は絶対に誰にも及ばないと考えている。そんな考え方が間違っていることは、ずっと前から分かっていたはずなのに、林月はいつもそう考えてしまうんだよね……
でも、林月はあることにずっと前から気づいていたんだよね。それは、実は私も時々、彼と同じように、怖がっている自分や強く見せている自分を演じているだけだということ……
こんな私たち、本当に簡単に見透かされちゃうよね……
菲娜は笑いながら、そのまま前へと自転車を走らせていった。
そして、空には花火が一面に広がり、夜空全体が眩い光に包まれていた……
菲娜は力いっぱいペダルを踏み込み、自転車ごと宙へと飛び上がった。次の瞬間、素早く両足を伸ばし、地面を強く踏みつけた。地面との摩擦を利用して自転車を急減速させ、最後にはしっかりと停止させた……
菲娜は自転車を止めると、ゆっくりと降りて、周囲を見渡した……
あたりには、花火が打ち上がった後に残る煙が立ち込めていた。すぐそばには橋があり、その先に目を向けると、祭りの会場が見えた……
橋の片側には、遠くまで続く川が広がっていた。川面にはぼんやりとした薄霧が立ち込め、どこか幻想的で美しい景色を作り出していた。水面ではたくさんの昆虫が動き回っており、目の前の景色に自然の趣を添えていた……
菲娜は前方を見つめながら、自転車を押して歩き始めた。
まったく、もし本当に自転車で中に入っていたら、大変なことになっていたよね……
「それにしても、今回の花火も、もう半分くらい終わっちゃったね……早く林月を見つけないと……」
菲娜は足を速めた。
しかし、再び歩き出そうとした、そのとき……
前方から、誰かが歩いてくるのが見えた。菲娜はそちらに目を向け、驚いて足を止めた……
そこには、林月がこちらに向かって走ってくる姿があった。そして、菲娜の姿を見つけると、彼も次第に足を緩めていった……
……
「ええっ!! 林月、来てくれたんだね! でも、展望台へ向かう道はここじゃないよ。反対側から行ったほうが早いんだけど……
ええっ、もしかして、私が展望台から降りてきて、ここを通るって分かっていたの?!
林月、すごいね!」
菲娜は期待に満ちた表情で言った。
林月は息を切らしながら、少し笑って答えた。
「い……いや、そんなことないよ。
ここだと思っていたんだけど! 道……間違えちゃったのかな? ははは……
でも、こうしてちょうどここで菲娜に会えたんだから、よかったよ!!!」
菲娜は息を切らし、顔にも傷を負っている林月を見つめ、そっと笑みを浮かべた……
「まったく、本当に理解しがたい男だよね……昔からずっとそうなんだから。現実も周りの人たちも君に優しくしてくれなかったのに、それでもずっとそんなふうに、すべてと向き合ってきたんだね!
でも、そんな君の姿が、私を大きく変えてくれたんだよ。たった一つの出来事が原因で、ずっと自分を嫌いなまま抜け出せずにいた少女だった私が、そんな情けない自分と向き合えるようになって、少しずつ前へ進む道を見つけられたんだから!」
菲娜は林月を見つめながら言った。
林月も菲娜の方を見つめ、真剣な表情で答えた。
「違うよ。僕を救ってくれたのは君のほうだよ! というより、みんなの助けがあったからこそ、僕は変わることができたんだ!
僕だって昔の自分が大嫌いだよ。何かあるとすぐに自暴自棄になって、女の子や他の人たちに対しても、現実離れした幻想ばかり抱いていた。僕も君と同じで、あんな弱かった自分が嫌いなんだ!
でも、それだけだよ。だから、君も僕も、そんな自分にちゃんと感謝してあげようね!」
菲娜は林月の方を見つめ、手を伸ばして彼の腕をぎゅっとつかんだ。そして、少し弱さを感じさせる、優しい声で言った。
「一体何を言っているのよ、まったく……
君は一体何を言っているの? やっぱり、自分がしてきたことを本当の意味で信じられていないんだね。
わざわざ隠そうとしなくてもいいのに。君はちゃんと頑張ってきたじゃない。どうしていつも自分をそんなふうに貶めるの?!
他人に合わせるために、わざわざ自分の姿を変える必要なんてないんだよ。
それに、嫌われることを怖がって、本当の笑顔を隠す必要だってないんだから!
まったく、林月!」
菲娜は林月の腕を、さらに強く握りしめた……
林月は少し驚いた様子で菲娜を見つめた。菲娜もゆっくりと顔を上げ、真剣な眼差しで林月を見つめ返した……
二人は花火の下で、互いに見つめ合っていた。まるで、周囲のすべてがこの瞬間だけ静まり返ったかのようだった……
夜空では花火が絶え間なく咲き続けていた。華やかな光が二人の頭上から降り注ぎ、空全体を色とりどりに染め上げていく。
花火の光は川面にも映し出され、水面に漂うぼんやりとした薄霧と重なり合い、まるで夢の中にいるかのような幻想的な景色を作り出していた……
林月は菲娜を見つめながら、初めて彼女と知り合い、出会った頃に感じた救いの感覚や、これまで彼女と過ごしてきたさまざまな思い出を頭の中に浮かべていた……
しばらく静寂が続いた後、後方から再び音楽と少女の歌声がゆっくりと響き始めた……
林月は菲娜を見つめ、真剣で優しい笑みを浮かべた。
「うん、そうなの? なんだ、そんなことだったんだね。もちろん僕もそう思っているよ。頑張って探してみるからさ!」
林月の笑顔を見た菲娜も嬉しそうに手を離した。
その後、彼女は少し離れた場所へ歩いていった。涙をこらえるように目を潤ませながらも、思わず笑みをこぼし、静かに呟いた……
「まったく、私、一体何をやっているんだろうね。本当にもう……
ほら、行こう。ここで時間を無駄にするのはやめて、早く行こうよ。そうしないと、花火が本当に全部終わっちゃうんだから!」
そう言って、菲娜はそばにあった自転車を押し始めた……
「え……そうなの……? でも、今から何をするつもりなの……?」
林月は真剣な表情を浮かべながらも、複雑な気持ちを抱えて菲娜を見つめていた……
菲娜は自転車を林月のそばまで押していき、後ろの荷台を軽く叩きながら、笑顔で言った。
「うん、行こう。花火が見える場所を知っているんだ。雅弘が言っていたように、今から展望台まで戻っても、もう間に合わないと思う!
だから、行こう。花火大会の最後に間に合う場所を知っているんだ。きっと間に合うよ。まだ時間はあるはずだから!!」
林月は菲娜の方を見つめ、嬉しそうに微笑んだ……
……
自転車は夜の森の中を懸命に走り続け、両脇の茂みや木々の間をまっすぐに駆け抜けていった。道中では、たくさんの昆虫が周囲を飛び回っていた……
そして、森の上空では、色鮮やかな花火が次々と咲き誇っていた。
森の中には、さまざまな虫の鳴き声が時折響き渡り、自転車はそのまま、いくつもの険しい山道を走り抜けていった……
菲娜の後ろに乗っていた林月は、目の前に広がる景色を静かに眺めながら、何とも言えない感覚を覚えていた。
まるでアニメや映画の中にいるような光景だ。なんだか現実じゃないみたいだな……
林月はそっと菲娜の腰に手を添え、目の前にいる彼女の後ろ姿を見つめながら、静かに微笑んだ……
そして、広大な森を抜けると、目の前には大きく開けた広い道路が広がっていた。道は前方へとどこまでも続き、両側の街灯が夜の中で輝いていた……
その先には、夜空いっぱいに広がる無数の華やかな花火が咲き誇っていた……
色とりどりの花火が次々と打ち上がり、夜空全体を照らし出す。まるで、この瞬間だけは夜そのものさえも輝いているかのようだった……
道路のそばにも大勢の人々が集まり、みんなスマホを手にして写真や動画を撮影していた。
そこには、さまざまな年齢層の人々や、外国から訪れた観光客の姿もあった……
幼い子供も、若い恋人たちも、家族を連れた年配の人々も、その誰もが笑顔に満ちていた……
何かを理由に誰かを嫌う必要もなければ、偏見によって他人を嫌う必要もない。そこにいる人々はみんな、楽しい気持ちで目の前の景色を眺めていた……
……
菲娜と林月は、自転車に乗って、花火で彩られた夜の道を走り続けていた。
こんな感覚は、林月にとって今まで一度も味わったことのないものだった。
一つ、また一つと、高い空に花火が咲き誇り、無数の小さな光となってゆっくりと降り注いでいく。まるで、終わることのない星の雨のようだった。
菲娜と林月は、そんな美しい星空の下を自転車で走りながら、目の前の景色を楽しみ、いろいろな話を交わしていた……
そして、そばから聞こえていた音楽も、次第に終わりへと近づいていた……
「ねえねえ、菲娜。本当にありがとうね!
こんな景色を見たのは初めてだよ。今日は本当にありがとう!」
後ろに座っていた林月は、隠しきれない笑顔を浮かべ、心からの感謝を込めて言った。
菲娜も林月の言葉を聞き、思わず微笑んだ。
「うん!
そうなの? でも、これもあなたが協力してくれたおかげだよ。あなた自身の力で、いろんなことを変えてきたんだから。これからは私も、あなたのことをしっかり支えていくよ!
だから、これからも一緒に頑張ろうね!
明日も、その先の日々も、ずっと一緒に頑張っていこう!」
菲娜はそう言った。
自転車は前へ前へと進み続け、花火の音も次第に聞こえなくなっていった。その代わりに、目の前には一面の月明かりと雲海が広がっていた……
「よし、林月! これからスピードを上げるよ。しっかり私につかまっていてね!!」
菲娜はそう言い終えると、力いっぱいペダルを踏み込み、速度を上げた。
林月は菲娜の言葉を聞き、彼女をぎゅっと抱きしめ、その体にそっと顔を寄せた……
そうだ。ここに来るまで、本当にいろいろなことがあった。でも、僕はたくさんのことを変えることができたんだ。
だから、これから先に何が起きたとしても、もう恐れたり、逃げたりはしない。僕を信じてくれる友達を、これからもしっかり守っていきたい……
林月はそう思いながら、ゆっくりと目を閉じた……
夜のそよ風が優しく吹き抜け、月明かりが二人の姿を照らしていた。自転車の車輪は回り続け、前方の道へと進んでいく。
これから先も、やり遂げなければならないことがたくさんある……
………「パタッ……」




