41 自分の心に従う 祭典編
10/12 自分の書いたものが良くないと思って、もう一度書き直しました
人混みの中、林月は前方を逃げ続ける泥棒を見つめながら、自分もひたすら追いかけていった……
こうして、階段やフードコート、そして祭典で人々が行き交うさまざまな場所を通り抜けていった……
道の両側にはさまざまな屋台が並んでいた。焼きそばの香ばしい匂い、りんご飴の甘い香り、そして人々の匂いが、すべて入り混じっていた。
ここから太鼓の音も聞こえ始めた。まるで『太鼓の達人』をプレイしているかのように、リズムは緊張感があり、難しかった……
林月は再びスピードを上げた……
右へ、左へ……
人混みを避けながら、次々と屋台の間を通り抜けていく……
まったく、あいつは走るのが速すぎるだろ! でも、この祭典にはいろんなものがありすぎるな。本当にいいところだな……
林月は追いかけているうちに、うっかり気を取られて、そばにあったゴミ箱にぶつかり、転んでしまった……
……
痛い……まったく、なんなんだよ、もう……
林月は勢いよく立ち上がった。そのときになってようやく、さっきの泥棒を見失ってしまったことに気づいた……
林月は腹を立てて、横に倒れているゴミ箱を蹴った……
すると、近くにいたスキンヘッドの屋台の店主が、怒りながら林月に大声で怒鳴った。
「おいおい、何やってんだ? ここをちゃんと元に戻せ!
お前がこんなことをしたら、俺はどうやって商売すればいいんだ? 俺はお前らみたいな何も分かっていない若者が大嫌いなんだよ。何もできないくせに、ここで物を壊してばかりいやがって!
まったく、今の若者はどんどんダメになっていくな!」
店主は大声で怒鳴り続けた。
林月はそばに倒れていたゴミ箱を起こし、心の中でそんなことをぼそぼそと呟くことしかできなかった。
まったく、まさか祭典にまで、若者を嫌っているような人がいるとはな……
林月は振り返って店主の屋台を眺めた。そこには、店主が学生時代に友人と一緒に起業したときや、部活動に参加していたときの写真が、たくさん飾られていた……
まったく……口ではあんなことを言っているけど、あの人だって若かった頃があるじゃないか? でも、結局のところ、人が若くいられる時期なんて一度きりなんだよな……
その時期が過ぎてしまえば、すべてが過去のものになってしまう。時間が経つにつれて、当時のことも薄れていき、その頃に大切だと思っていたことも、次第に心の中で変わっていったのだろう……
分からないな。もしかしたら、未来の俺も、若者の考えを理解できない大人になってしまうのかもしれないな……!
林月は前方に向かって少し笑ったあと、再び泥棒を探し始めた……!
……
こんなに賑やかな祭典で、いったいどうやって探せばあのバカを見つけられるんだよ。まったく……
林月が前方を眺めていると、突然、何かを思い出した……
叔父と戦ったとき、現実世界でも何かの能力が発動したような気がする……あれは異世界の能力なのか? どうしてこんなことが起きるんだ……
もしかして、何かの能力に目覚めたってことなのか? だとしたら、現実世界での俺は無敵ってことじゃないか? 笑
林月は拳を握りしめ、目を閉じて、もう一度試してみようとした……
しかし、どれだけ力を込めても、どれだけ力んでも、毛一本すら出てこなかった……
目の前で何も起こらない様子を見て、林月は思わず笑ってしまった……
最後には、先ほど泥棒が逃げていった道に沿って、引き続き一生懸命に探していくしかなかった……
……
その頃、夜璃は前方から漂ってくる香りをたどって進んでいた。なにしろ、美味しそうな食べ物の匂いをたどっていけば、きっと探しているものを見つけられるはずだから……
夜璃は前方を見つめ、ニヤリと笑った……
しかし、夜璃がそのまま歩き続けていると、突然、隣に目を向けた。すると、ちょうど林月が自分の横を通り過ぎていくところだった……
林月が横を通り過ぎていくのを見て、夜璃は声をかけようとしたが、林月はすでに遠くへ行ってしまっていた……
夜璃はすぐに向きを変え、林月が去っていった方向へ追いかけた……
「ま……待ってよ、林月……」
夜璃は歯を食いしばり、林月が去っていった方向へ向かって歩き出した……
でも、今、林月を呼び止めたら、本当に変じゃないかな? 彼は何か用事があるように見えるし、私が突然呼び止めたら、かえって彼の邪魔をしてしまうんじゃないかな……
違う……私はただ逃げているだけだ。もし彼が困っているなら、私が助けに行ったっていいじゃない!!
夜璃はそう考えると、すぐに向きを変え、林月のいる方向へ追いかけていった……
……
そしてそのとき、前方から再び悲鳴が聞こえてきた。
林月はすぐにスピードを上げて追いかけた。すると、財布を奪われたのは一人の女の子で、その隣では彼氏が彼女を慰めていた……
また女の子の持ち物が盗まれたのか? まったく……
林月は再び、あの泥棒の姿を見つめた……
まったく、この泥棒はいったい何なんだ? どうしてずっと物を盗んでいるんだよ……
でも、フィーナは本当に言ったことが現実になるんだな。もしあのとき、彼女がこのことを言っていなかったら、こんなことは起こらなかったかもしれないのにな……
これは無理やり物語を長くするためなのか? 本当にもう、笑……
林月はそんなことを考えながら、再び追いかけていった……
「おい! お前はいったい誰なんだ? どうしてずっと物を盗んでいるんだよ……
おい! 聞こえているのか?! 真面目に答えろよ! 帽子を脱いで、顔を見せろ! 何をそんなに謎めいた雰囲気を出しているんだよ。お前は別にすごい奴でもないだろ!!」
林月は前方に向かって大声で叫んだ。
すると、泥棒も後ろを振り返り、林月に向かって挑発するように言い返した……
「お前、バカなのか?! 誰が帽子を脱いでお前に顔を見せるんだよ! 頭おかしいのか!
ていうか、なんで追いかけてくるのが男なんだよ? お前はいったい何なんだよ、このクソ野郎!!
俺はお前の物を盗んだわけじゃないだろ? バカなのか? 何をヒーロー気取りしているんだよ!」
泥棒は後ろにいる林月に向かって怒鳴り続けた……
泥棒に何度も罵られながら、林月は、自分が実際には何の役にも立てていないことを分かっていた……
それでも、これが俺なんだ!
なにしろ、これは自分の心に従って、自分で決めた行動なんだから!
林月は歯を食いしばり、前方へ向かって走り続けた……
泥棒も近くの通路や街道を通り抜け、その隙にそばにあったゴミ箱や、横に置かれていた生ゴミを蹴り倒した。さらに、地面に落ちていた生ゴミを拾い上げ、林月に向かって投げつけた……
自分に向かって飛んでくる生ゴミを見て、林月はできる限り避けるしかなかった……
泥棒は素早く路地から飛び出すと、隣にいた浴衣姿の女の子に目を向けた。しかし、嫌そうな表情を浮かべると、少女の肩をつかみ、林月のいる方向へ突き飛ばした……
その頃、林月も泥棒を追って路地に入ってきていた。
ようやく泥棒に追いつけると思ったそのとき、林月は泥棒がひっくり返した生ゴミを踏んでしまった。
反応しようとした瞬間、突き飛ばされてきた少女と正面からぶつかってしまった……
「ドン……!!」
林月と突き飛ばされた少女は一緒に地面へ倒れ、その周囲には大量の生ゴミなどが散らばっていた……
林月は必死に立ち上がり、そこで初めて、自分がどうやらピンク髪の少女にぶつかってしまったことに気づいた……
彼は慌てて立ち上がり、手で口を覆った……
終わった……どうしよう……
泥棒を追いかけていただけなのに、まったく知らない人にぶつかってしまった。しかも、相手は女の子だ……
終わった……さっき、ようやく異性への恐怖を克服できたばかりなのに、こんな状況じゃ、相手はきっとものすごく怒るだろうな……
昔と同じように、きっとひどく怒られるんだ……
でも、これは全部俺が引き起こしたことだ。ちゃんと謝るしかない。
お金を弁償しろと言われても構わない。逃げるわけにはいかないんだ。なにしろ、これは自分が引き起こしたことなんだから……!
林月はゆっくりと前方の少女に近づいていった……
ピンク髪の少女もゆっくりと起き上がり、頭を押さえながら林月の方を見た……
「あ……あの、ごめんなさい。僕が悪かったです。本当にごめんなさい!
大丈夫ですか? 警察を呼ぶなり、何をするなりしても構いません。僕はちゃんと協力します!
だから……大丈夫ですか? 立……立てますか?!
あの、本当にごめんなさい。本当に……本当に申し訳ありません!!」
林月はひどく慌てながら、少女に謝った。
ピンク髪の少女は自分の髪飾りに触れながら、林月の方を見た……
「えっ……そうなの……
ちょ……ちょっと待ってよ!
そんなに緊張しなくてもいいよ、私、何も言ってないじゃない!
ゆっくりでいいから、私にも悪いところがあったし!
そんなに慌てないで……!」
ピンク髪の少女は焦ったような口調で林月を落ち着かせようとした……
林月は目の前の少女を慌てながら見つめていたが、彼女の言葉を聞くにつれて、張り詰めていた気持ちが少しずつ落ち着いていった……
しかし、ピンク髪の少女が立ち上がろうとしたとき、先ほどの衝撃で足首を捻挫してしまったことに気づいた……
林月は少女の捻挫した足首を見ると、すぐに手を差し出し、心配そうに尋ねた。
「あの……大丈夫ですか? 怪我をしていますよね? 立てますか? 僕が支えて起こしましょうか?!」
林月はそう言いながら、ピンク髪の少女に手を差し伸べた……
しかし、ピンク髪の少女は林月が差し出した手を見ると、突然、ひどい恐怖を感じた。
彼女はひどく慌てながら手を振り、震える声で断った……
「あ……あの、大丈夫です。隣の壁につかまればいいので……
支えてもらわなくても大丈夫です。本当に……」
ピンク髪の少女はひどく緊張し、さらには少し嫌悪感を抱いているような態度で答えた……
林月は目の前の少女を見つめ、思わず少し不思議そうな表情を浮かべた……
お……俺って、そんなに変なのか?
まあ、いいか……
でも……どうして目の前の少女の声が、少し変な感じがするんだろう……
林月は思わず考え込んでしまった……
……
「そっか……さっき私を突き飛ばしたのが、あの泥棒だったんだね! まったく、びっくりしちゃったよ!
でも、事情が分かったんだから、もうそんなに自分を責めなくてもいいんじゃない? だって、こうして見ると、悪いのはあなたじゃないんだから。だから、そんなに自分を責め続けなくてもいいんだよ!」
ピンク髪の少女は隣の壁につかまりながら、そう言った。
林月はピンク髪の少女を見て、真剣に答えた。
「うん、それは俺も分かっているんだ……でも、いつからか、自分自身と向き合えなくなってしまったんだ。
俺はいつも、きっとすべて自分が悪いんだって思ってしまう。自分を変えようともしてみたけど、過去のつらい記憶がいつもついてきて、どうしても振り払えないんだ……!」
林月は前方を見つめながら、ゆっくりと話した。
ピンク髪の少女は隣に目を向け、少し驚きながらも、どこか重苦しい表情を浮かべた。
「うん……そうなんだ。そういうことだったんだね……
実は私もそうなんだ。私はずっと、こういうことが怖かったんだ。他の人には分からなくても、やっぱり私は怖いんだよ。
どれだけ自分を偽っても、心の中にある壁は、自分一人の力では乗り越えられないこともあるんだよね……
どうしてなんだろう……
私は誰かを傷つけたわけでもないし、何か悪いことをしたわけでもない。
ただ、こういう自分が素敵だと思ったし、自分でもすごく楽しかっただけなのに!
でも、他の人から見れば、私は嫌われるような、受け入れられない人間になってしまったみたいなんだ。
そのうち、こんな自分のことさえ、怖くなってきちゃったんだよね!
見られるのが怖い。笑われるのが怖い。そして、あの言葉をまた聞くのも怖い!
最後には、自分がいったい誰なのかさえ、分からなくなってしまった……」
そう話しているうちに、少女の体が何度も震え始めた……
林月は隣にいる少女を見て、少し戸惑い、慌てたような表情を浮かべた。
「えっ……そうなの? どうして急にそんな話をし始めたんだ……?
でも、実は俺もまだ話し終わっていないんだ。本当に言いたかったのは……
たとえ俺がずっと自分を責め続けていても、それでも頑張ってみたいんだ。何かを証明するために、努力してみたいんだ。
このままここで倒れたくないんだ……
俺が自分でそう言ったせいで、君につらい記憶を思い出させてしまった。本当にごめんね!」
林月は慌てて少女の方を向き、彼女を慰めようとした。
すると少女は、自分がこんなにもおかしなことをたくさん話してしまったことに気づき、慌てて手で口を覆った……
しかし、少女が口を覆ったそのとき、袖口から腕が少し見えてしまった……
少女の腕が見えたとき、林月は、そこら中に刃物で切った傷や、いくつもの血の跡があることに気づいた……
林月は驚いた様子で少女を見つめた……
そしてそのとき、少女には両腕だけでなく、首のあたりにも、紐で締めつけられたような跡があることに気づいた……
林月は心の中で何度も考え続けた。
(ちょっと待って……もしかして、この少女は本当に何かあったのか? さっき彼女が話していたことは、全部本当なのか……?
うん……何とかしないと。まだ本当のことなのかどうかは分からないけど、まずは何とかして助けてあげよう!
泥棒のことは、あとで考えればいいか……)
林月は拳を握りしめ、真剣に考えた……
「えっと……あの、大丈夫……?
いや、そうじゃなくて、君の名前は何ていうの? 普段は何をしているの……?」
林月は少女の様子をうかがいながら、尋ねた。
ピンク髪の少女は林月の言葉を聞くと、ゆっくりと笑顔を見せた。
「ああ、私の名前を聞いているの?
私は早夜だよ。華月高校に通っている学生なの。それで、私の趣味は……
やっぱり、この話はやめておこうかな。
でも、どうして急にそんなことを聞いてきたの? あなたは?」
林月は早夜の言葉を聞いて、ふと何かを思い出した。
(うーん……どうしてだろう。早夜が通っているこの学校、なんだか聞き覚えがある気がするんだよな? どこかで聞いたことがあったかな……)
林月は前方を見つめ、考え込んだ……
(あっ……思い出した!
以前、夜璃を探すために、俺とフィーナで彼女の学校の門の前に張り込んでいたんだ。そのときに気づいたんだった。
夜璃も早夜と同じ、華月高校の生徒なんだよな!
でも、こんなどうでもいいこと、誰がそんなにはっきり覚えているんだよ……)
「えっ……それで、あなたは?
あなたの名前は何ていうの? もしもし?」
早夜は不思議そうに林月を見つめ、何度も声をかけた。
「あっ……俺? 俺は林月だよ。それじゃあ、よろしく!
そういえば、君が通っている学校に、夜璃っていう女の子がいるんじゃないかな?
前に彼女と話したことがあるんだ。でも、それから一度も会えていないんだ……
実は、もう一度彼女と話したいと思っているんだけど、どうやって話しかければいいのか分からないんだ……」
林月は前方を見つめながら、ゆっくりと話した……
早夜は林月を見て、少し驚いた表情を浮かべた。
「えっ?! 夜璃?
確かに、彼女は私たちの学校の生徒だよ。でも、私とはあまり接点がないんだよね!
彼女と私は、まったく違う世界の人間なんだ。彼女は学校で生徒会のメンバーをしているんだよ。私みたいな人間じゃ、彼女と話す機会なんて、なかなかないよ!」
早夜は笑いながら言った。
しかし、顔には笑みを浮かべていたものの、その声にはかすかな寂しさがにじんでいた。呼吸さえも、どこか重苦しくなっているようだった……
「そうなの?! じゃあ、彼女に会ったことや、話したことはあるの?!
なくてもいいんだけどさ。でも、どうしてそんなふうに言うんだ? 違う世界の人間って?
そう思ってしまうのも、確かに普通のことなのかもしれないな。だって、彼女たちはいつも優秀そうに見えるから!
でも、俺からすれば、それも表面的な姿にすぎないんだ。
夜璃は、あまり幸せそうには見えなかった。それに、生徒会だって、結局のところ、もう学校の権力争いみたいなものしか残っていないんだ……」
林月はそう話した。
早夜は隣にいる林月に目を向け、学校で夜璃を見かけたときのことを思い出した……
以前、学校で夜璃を見かけたとき、彼女はいつも嫌悪感と悲しみの入り混じった表情をしていた。そんな彼女を見たのはほんの数回だけだったが、確かにそうだった……
(生徒会は、絶望するほどひどい場所なのかな?
私は本当のところを理解することはできないけど、すでにこんなにもひどい状態になっているこの学校では、何をしても失敗に終わってしまうのかな……?)
早夜は前方を見つめ、静かにため息をついた……
林月は目の前の早夜を見て、思わず疑問を抱いた。
(彼女はいったい、どんな人なんだろう……
さっきまで楽しそうだったのに、急に悲しそうな口調で話し始めたり……
いったい、どうしてこんなふうになってしまったんだろう?
彼女には、きっと何か秘密があるはずだ。それに、彼女の体にあるあの傷も、きっと自分でつけたものなんだろう……
でも、それはいったいどうしてなんだ……?
誰かの真似をしているだけのはずもないし、何かの流行についていくためでもないはずだ。ましてや、SNSのためなんかでもない……
それなのに、彼女の話し方や、彼女が見せているものからすると、心の中は矛盾だらけのように思える……
いったい、どうすればいいんだ……?
今ここにいるのは俺一人だけなのに、何も思いつかない……
どうしてなんだ……!)
林月は何度も考え続けた。
祭典では、行き交う人々の声があちこちから聞こえ、会場全体に響き渡っていた。
しかし、そのときの林月は何も思いつかなかった。祭典の騒がしい音は、まるでひどく苛立たせるホワイトノイズのように、彼の心の中で何度も響き続けていた……
「あっ……そうだ! 思い出した!
さっき、あの交差点で夜璃に会ったんだよ。彼女もここに来ているみたいで、誰かを探しているようだったよ!」
早夜は振り返り、林月に向かってそう言った。
早夜の話を聞いて、林月も少しずつ何かを理解し始めたようだった……
(夜璃もここに来ているのか?
俺を探しに来たのかな……
さっき、会おうって約束したばかりなのに、今になって、また彼女に会うのが怖くなってきた……
違う……俺はいったい何を迷っているんだ? 俺はバカなのか?!
自分の心に従わなきゃいけないんだ!!)
林月は歯を食いしばり、決心した……!
……
人山人海の中、夜璃は確かに林月が去っていった方向を追いかけてきたはずなのに、どうしても林月を見つけることができなかった……
(おかしいな……さっき、林月は確かにこっちに向かって歩いていったはずなのに、どうしてこうなるんだろう……)
夜璃は祭典にいる人々を見つめ、再び静かにため息をついた。
(この感覚、本当に……本当に最高だな……)
夜璃は自分の胸に手を当てた。そのとき、彼女の体は再び何度も震え始めた……
(この感覚はいったい何なんだろう……
本当に嫌な感覚……気持ち悪くて、吐き気さえするような感覚……
本当に大嫌い。どうして……)
夜璃は前方を見つめながら、体の中にある不快な感覚を感じていた……
(これはきっと、以前、叔父が私にしたあのことが原因なんだろう……
あの事件によって残された後遺症が、今でも私の体に残っている……
あのときから、私の体からはいつも、吐き気がするような生臭い匂いが漂うようになった……)
……
このままでは、誰も私を理解してくれないし、誰も私のことを分かってくれない。どうしてこんなことになってしまったんだろう……
ずっと自分をもっと良くしようと思っているのに、何度もこんな気持ちに陥ってしまう……
夜璃がそう話していると、心の中にいる、自分が嫌悪しているもう一つの人格が、何度も浮かび上がってきた……
もう一つの感情はいったい何なんだろう? どうしてこんなことになるんだろう……
この感覚は、いったい気持ち悪さなのか、嫌悪感なのか、それとも自己憐憫なのか……
変わろうとすることは、そんなに難しいことなの? どうして……どうして…………
口ではいつもそう言っているだけなのに、実際にはバカみたいに、何一つ行動に移せない……
夜璃は少し悲しそうな口調で話していた。
そのとき、自信に満ちた口調の少女が夜璃の隣にやって来た。
「やっほー! あなたが夜璃だよね? 前はいろいろと大変だったね! もう大丈夫だよね!!」
夜璃はひどく怯えた目で、隣にいる少女を振り返った……
「うん! 怖がらなくてもいいよ、バカ……
私が誰なのか、まだ覚えているよね? 私は菲娜だよ。よろしくね!
どうしたの? 何かあったの? 大きな声で私に教えてよ! 前はずっとあなたを疑っていて、本当にごめんね!
さあ、あなたの本当の気持ちを聞かせてよ!」
菲娜は自信に満ちた口調でそう言った。
そして、隣にいた牌子と雅弘も、目の前の夜璃を見つめていた……
夜璃の緊張した表情も、少しずつ和らいでいった……
……
「林月を探しているんだよね? あのことがあってから、もう大丈夫なんだよね? 本当に大変だったね。こんなにもたくさんのことが起きるなんて!」
菲娜は夜璃に向かって笑いながら言った。
夜璃は隣にいる菲娜を見つめたが、心の中では申し訳ない気持ちを抱いていた……
あの夜、菲娜が叔父に殴られていたとき、実は夜璃も工場の中にいたのだ。
しかし、恐怖と薬の作用によって、彼女は菲娜の苦痛に満ちた叫び声を聞くことしかできなかった……
夜璃は胸元をぎゅっと握りしめ、戸惑いと不安の入り混じった口調で尋ねた。
「あの……あなたは菲娜、だよね?
少し質問してもいいかな?!
本当にごめんなさい。もし聞いたあとで怒ってしまったら、それも本当にごめんなさい。私は……」
夜璃は少し震えながら話した。
すると菲娜は夜璃の肩をそっと叩き、明るい口調で言った。
「うん、話してみて! 怒ったりしないから、そんなに緊張しなくてもいいよ。私、あなたを食べたりしないんだから、リラックスして!
言いたいことを全部話してね。私は喜んで話を聞くよ!」
そして、菲娜の隣に立っていた牌子と雅弘も、笑いながら言った。
「うん、大丈夫だよ。怖がらなくてもいいよ。何があったのか、僕たちには分からないけど、リラックスして、ゆっくりでいいからね!」
夜璃は彼らの優しい表情と、その温かい笑顔を見つめた……
そして、自分が伝えたかったことを、少しずつ話し始めた……
……
「そっか! つまり、あのとき、あなたも工場の中にいたってこと?
それで? それだけなの? 大丈夫だよ。もう過ぎたことなんだから、もう大丈夫だよ。リラックスして!」
菲娜は笑いながら言った。
「ええ?! それって本当なの? 菲娜、そんなひどい目に遭っていたの?!
あいつ、ひどすぎるだろ! 大丈夫なの? 体の傷は大丈夫なの?!」
雅弘は驚いた表情で言った。
「あ……あの、本当にごめんなさい。全部私のせいで……
私は……」
夜璃が再び何かを言おうとしたそのとき、菲娜は彼女の手をつかみ、真剣な口調で言った。
「だから、このことは誰のせいでもないって言っているでしょ!
もし私たちが被害者なら、どうしていつまでも他人の過ちを自分のせいにしなきゃいけないの?
ずっと怖がっていてもいい。でも、自分の心に従うことだけは忘れないで!」
菲娜は真剣に話した。
夜璃は菲娜を見つめ、歯を食いしばりながら、真剣に言った。
「うん、分かった……でも、いったいどうすれば自分の心に従って、自分を変えられるんだろう……」
菲娜は笑いながら夜璃に言った。
「うん、それは自分自身で答えを見つけるしかないね。
でも、あなたなら、きっとできるって信じているよ!
ゆっくりでいいんだよ。もし怖くなったり、道に迷ったりしたら、私のところに来てもいいからね。怒ったりしないよ!」
夜璃は菲娜を見つめ、心の中に熱い感情が湧き上がってくるのを感じた……
「そういえば、林月を探しているんだよね? 彼なら泥棒を追いかけに行ったよ。
でも、実は私たち、彼に追いかけるように頼んだわけじゃないんだけどね。だって、林月ってそういう人でしょ? いつもああなんだから!
彼なら、たぶん前の方に走っていったと思うよ。たぶんだけどね!」
菲娜は隣の方向を指さして言った。
夜璃はそちらを見て、自分の浴衣をぎゅっと握りしめ、少し緊張しながらも興奮した口調で菲娜に言った。
「うん、そうなんだね? ありがとう、菲娜!
でも、今から彼を探しに行っても、本当に大丈夫かな? 実は、私はまだ……」
菲娜は夜璃の隣まで歩いていき、そっと彼女の背中を押しながら、真剣な口調で言った。
「うん、行っておいで! さっきも言ったでしょ? 自分の心に従うんだよ!
過去に起きたことのせいで、いつまでもこの壁を乗り越えられないままでいちゃダメ。自分の道は、必ず自分のやり方で見つけなきゃいけないんだよ。
自分の夢をしっかりと大切にして、前に進み続けてね!
林月もずっとあなたを探しているんだよ! 彼もあなたと同じように、ずっとあなたを探しているんだ。そして、怖くて迷ってしまうこともあるんだよ!
でも、あなたならきっと……
林月ならきっと、あなたたちは二人とも成功できるって信じているよ!!」
夜璃は菲娜の言葉を聞き、自信に満ちた笑顔を浮かべた……
「うん、ありがとう、菲娜。分かったよ!
今から林月を探しに行くね。ありがとう! また時間があったら連絡しようね!」
夜璃は嬉しそうに、別の方向へ歩いていった……
菲娜も、だんだん遠ざかっていく夜璃を笑顔で見つめていた。
「ねえねえ、菲娜、すごいね! そういえば、あの女の子は誰なの?」
雅弘が尋ねた。
「ああ、彼女?
迷いの道で方向を見失ってしまった、かわいい女の子だよ。
そして今、自分の心に従う道を一生懸命に探しているところなんだ!」
菲娜は笑いながら言った。
………
一方で、事態の進展も行き詰まっているようだった……
林月は目の前の早夜を見つめながら、どうすればいいのか、依然として悩みながら考えていた……
何しろ、早夜は何を考えているのか分かりにくい人だ。本当に彼女の心に踏み込み、彼女の考えを理解することは、非常に難しいことだった……
こういうことは、きっといつも菲娜や林奧がやっていることなのだろう。
それなら、僕は一体どうすれば、本当に他人を助けることができるのだろうか……
このまま諦めたくはない。でも……
林月は悩みながら考え続け、前へと歩いていたが、足元に落ちていたトウモロコシの芯にはまったく気づいていなかった……
「えっ……何だよ、これ……」
林月が前に転びそうになった瞬間、早夜はすぐに手を伸ばし、彼を引き止めようとした。
しかし、早夜の足の捻挫はまだ完全には治っておらず、彼女自身も踏ん張ることができなかった。その結果、二人はそのまま一緒に地面へと転んでしまった……
そして、林月は転んだ際、うっかり早夜の下半身にも触れてしまった。二人はすぐに慌てて互いを支え合い、地面から立ち上がろうとした……
早夜は林月を起こす際、自分の浴衣越しに、そっと林月の体に触れた……
しかし、その時、林月は突然、早夜の浴衣が先ほどの衝撃によって、腕のあたりで大きく破れていることに気づいた……
そして、破れた浴衣の下から、早夜が自分自身を傷つけた際にできた血の跡や傷口が、そのまま林月の目に晒されてしまった……
早夜も同じことに気づいた。
自分の傷口が林月に見られてしまったことに気づくと、彼女は慌てて手で隠し、すべてを覆い隠そうとした。林月に見られたくなかったのだ……
そして、彼女は緊張した表情で林月を見つめた……
……
一方、林月もゆっくりと立ち上がった。
今だ。もうこれ以上、隠し続けるわけにはいかない。このままでは、成長することなんてできない。たとえ嫌われても、憎まれても、それはその時に向き合えばいいことだ……
自分の心の本当の声に従わなければならない。他人に嫌われることを恐れて、逃げることを選んではいけない……
林月は拳を握りしめ、早夜のほうへと歩き出した……
早夜は自分に近づいてくる林月を見つめながら、目には緊張が浮かび、その表情には重苦しい嫌悪感さえ滲んでいた……
「お……お前、何をするつもりなの? あの……
なんでそんなことするの? 急にそんなことして、一体どういうつもりなの?!」
その時、早夜は目の前の林月を見つめながら、心の中に不安と嫌悪感が湧き上がっていた。目には拒絶の色が浮かび、まるで林月にこれ以上近づいてほしくないかのようだった……
林月は目の前の早夜を見つめながら、心の中でも絶えず葛藤していた。
自分の心に従うのか? それは本当に……本当に難しいことだ……
それでも、これまでにたくさんのことを経験してきたのだから、僕も自分の考えに従うよう努力しなければならない……
確かに、僕はいつも間違いを繰り返している。でも、それがどうした!
他人に認められるような人間になれなくても、僕は努力してみせる!!
林月は目の前の早夜を真剣に見つめた。その眼差しは、以前のように迷っているものではなく、次第に確かな決意を帯びていった……
林月は真剣な口調で早夜を見つめ、ついに口を開いた。
「あの……早夜、お前はこのすべてを恐れているんじゃないのか……
お前が本当に恐れているものは、一体何なんだ?!
自分の性別なのか、それとも他人の目を恐れているのか?!」
林月の言葉を聞いた早夜の目は、もともとの不安から、次第に嫌悪と軽蔑へと変わっていった……
「お前、一体何なの? こんな話はしたくないって言ってるでしょ? 分かった? だから、もう何度も言わないでくれる?!
こんなくだらない話、聞きたくないんだよ、このバカ!! お前、アホなの?」
「そうか?! それがどうしたんだ? このことについては、どうせ何を言っても、お前が怒ることくらい分かっている。でも、僕は言いたいんだ……
たとえお前に嫌われても、周りの人たちに知的障害者だと思われても、僕はもう慣れっこなんだ。でも今回は、自分の心の声に従っているんだ。だから、後悔なんてしない!!」
林月は自信に満ちた様子で話し、その口調には少しもひるむ様子がなかった。
「何なんだよ、それ? お前、一体何を言ってるんだ? さっきからずっとしゃべり続けて、一体私がどうしたっていうの?」
早夜は恐怖を帯びた口調で言った。まるで林月の言葉が、彼女の向き合いたくないことに少しずつ触れているかのようだった……
「お前はずっと逃げ続けているんだろ? 自分の性別と、どうしても越えられないその境界線のせいで、何度も終わりの日を求め続けているんだ!
このことは誰にも話さない。でも、お前はもう自殺するつもりなんだろ? こんなことを恐れているくせに、ずっと無理して笑顔を作って、最後にはこんなにも愚かな方法で、すべてから逃げようとしているんだ!!」
林月は真剣に言い、自分がずっと推測していたことを、何も隠さずに口にした……
早夜は驚愕の眼差しで林月を見つめ、体も絶えず震え始めた……
「お……お前、一体何を言ってるんだ?!
分からないよ、このバカ! たとえお前が知ったところで、何になるっていうの?!
お前にこのすべてを変えられるの? お前だって、ただこの迷いの道に囚われている人間にすぎないじゃないか!」
林月は早夜の言葉を聞き、冷笑した。
「ふん、それがどうした? でも、あの瞬間から、僕はもうこの現実を見極めていたんだ。
確かに、僕はずっと逃げ続けてきたし、失敗も繰り返してきた。どれだけ努力しても、結局は他人と比べて敵わず、いつだって最後尾にいる。
天才にもなれないし、役に立つ人間にもなれない。でも、それがどうした!
本当にすごい人たちは、決して表面だけを見て判断したりしない。僕も少しずつ、このすべてを理解し始めたんだ!!
あの人たちが、たった一つのことで迷いという名の道に囚われないのは、自分が本当に向き合うべきものは、他人の目ではなく、自分自身の心だと理解しているからなんだ!!
自分の心が示す道に従い、自分の心の本当の声に耳を傾ける。
たとえ傷ついても、他人に笑われても、それを理由に自分の存在を否定したりはしない……」
林月は拳を握りしめ、胸に手を当てながら、真剣に語った。
その眼差しの中では、何かがゆっくりと変わり始めているかのようだった……
早夜は目の前の林月を見つめながら、懸命に彼のそばまで歩み寄り、林月の襟を力いっぱいつかんだ……
「それで、どうなるっていうの……
それに、お前はどうして分かったの? 自殺するつもりだなんて、一体どうやって見抜いたの?!」
早夜は焦った様子で話し、その言葉にはかすかな震えが混じっていた。どうしても答えを知りたいかのようだった……
「靴と服だよ。お前も言っていただろ? こういう服を着るのは初めてだって。でも、お前の口調には、少し名残惜しそうな気持ちが感じられた……
それから、お前の話し方もだ。何度も変わっていて、まるで何かをわざと避けようとしているみたいだった……
最後に、お前は自分が自分を傷つけた傷口を、何度も隠そうとしていた……
これらは全部、僕の推測にすぎない。でも、お前自身ももう口にしていたんだろ? 早夜!」
林月は真剣に言った。
林月の言葉を聞いた早夜は、林月の襟をつかんでいた手を、静かに離した……
「ふん……そうか? でも、それがどうしたっていうの? どうせ私みたいな人間、死んだところで何も未練なんてないよ。ただ他人から変な人だと思われているだけだし……
私は……」
早夜が続きを話そうとした時、林月は突然、彼女の腕をつかんだ。
林月は早夜の腕に残る無数の刃物による傷跡と、苦しそうな表情を見つめた……
その瞬間、林月の心には、かつて自分が死に憧れながらも、死を恐れていた頃の記憶が浮かび上がった……
彼は、初めて死んだ瞬間のことも思い出した。
あの時の彼は、異世界へ向かうことになっても、もはや何の感情も湧かなくなっていた。目の前のすべてが、まるで意味を失ってしまったかのようだった。しかし、本当に死を経験して初めて、彼は自分がかつて持っていたものが、どれほど素晴らしかったのかを少しずつ理解した……
死んでから初めて、自分があの頃どれほど愚かだったのかを知った。明らかに、まだ終わっていないことがたくさんあり、大切にすべきものもたくさんあったのに、それなのに……
そして、彼の頭の中には、妹の死や、異世界で起きたさまざまな出来事、そして夜璃の身に起きたことも浮かび上がった……
それらの苦しい記憶が、再び彼に死の残酷さと、すべてに向き合う時の無力さを感じさせた……
死というものは、あまりにも残酷で、あまりにも無力さを感じさせるものだった……
「早夜、死や自殺というものは、決して簡単に口にしていいことじゃない。考えてみてくれ。死ぬ前に、まだやり残したことがたくさんあるだろう……
まだ恋人もできていないし、海外にも行ったことがないだろ? 家族や、自分を信頼してくれている人たちにも、まだきちんと別れを告げていないだろ!
それに、お前はまだ若いだろ? 健康な体だって持っているだろ? 病気の人たちのことを考えてみてくれ。生きたいと願っていても、十分な時間がない人たちだっている。それなのに、お前はこんなにも無駄にしているんだ。ただすべてを無駄にしているバカにすぎないんだ!
この世界には、自殺なんかで解決できることなんて何一つない。僕だって、この世界がこんなにもひどく、絶望的なものだって分かっている。でも、それがどうしたんだ? だからこそ、僕たちはもっと努力して、もっと頑張らなきゃいけないんだ!!」
林月は真剣に語り、ずっと心の中に抱いていた考えを、すべて早夜に伝えた。
早夜は目の前の林月を見つめ、再び歯を食いしばりながら言った。
「でも、私が死んだところで、悲しむ人なんて誰もいないよ! 私には、そんな人は一人もいないんだ……
私はただ……」
「何を言ってるんだ? もちろんいるじゃないか! 僕がいるだろ? お前がこのまま死んでしまったら、僕はとても悲しいよ! お前の一時の選択によって、ほかの人たちまで心に影を落としてしまうようなことはしないでくれ……
それに、僕だけじゃない。この世界で、お前はまだ本当に自分を信じてくれる人に出会えていないだけなんだ。だから、もしこのまま自殺してしまったら、すべてが終わってしまう。二度とお前に会えなくなった人たちだって、きっとひどく悲しむはずだ……
もしお前が本当に自殺してしまったら、僕だってずっと自分を責め続けることになるんだ!!」
林月は真剣に言った。
早夜は目の前の林月を見つめた。目に浮かんでいた重苦しさと不安は、次第に消えていった。
その代わりに、言葉では言い表せない信頼と、目に込み上げてくる感動の涙が浮かび始めた……
「自分の心の本当の声に従う、か……?!」
早夜は目の前の林月を見つめ、静かに笑った……
うっかり書きすぎちゃった、止めようと思っても止まらないよぉぉ 笑




