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新世界復活戦!世界に変化をもたらそう!  作者: 小泉 夢はそれになることだよ!!!
第3章 ギルド/日記編

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30 運命によって選ばれたすべて 自信編

……


しばらく歩いていると、目の前にかなり古びた家が現れた。どこか不気味で、まるで幽霊屋敷みたいな雰囲気だ……


林月と藤田は、その建物をじっと見上げていた……


「ね、ねぇ……ほんとにここなの? なんかめちゃくちゃ怪しいんだけど。ここに本当にアイドルの依頼なんてあるわけ?」藤田が不安そうに尋ねた。


林月は必死に地図を見つめながら、依頼書をぎゅっと握りしめ、真剣な顔で藤田を見た……


「うん! たぶんここだと思う。信じてみようぜ!」


「うん。まあ別にいいけど。とりあえず行ってみれば?」藤田はどうでもよさそうに言った。


……


大門を見ると、まるで腐食したみたいに全体が錆びついていた。


林月は藤田の背中を押し、「行け」というように前へ出そうとする。


藤田は怯えたように林月の後ろへ隠れた。


林月は呆れたように後ろの藤田を見て、小さくため息をついた。


そして深呼吸し、そっと扉をノックする。


……その時、横にインターホンがあることに気づき、林月は慌てて思い切りボタンを押した……


……


だが、何の反応もない。


何度押しても、誰も出てこなかった。


前方を見つめても、やはり誰も応答しない。


まさか、このまま依頼失敗なのか……?


その時、後ろから誰かが林月と藤田の肩を勢いよく叩いた……


「ふふーん! 君たち誰なの!? ファンかな!? あはは、まだライブ始まってないのに〜、もう来ちゃったの!?」


その少女は楽しそうに笑った。


林月は困惑した顔で振り返り、その少女を見た。


「え、えっと……何言ってるんだよ。俺たち、依頼書を見てここに来たんだけど……」


少女はそれを聞くと少し残念そうに「ふーん」と声を漏らしたが、すぐにまた笑顔を浮かべた……


「えっ、君ってアイドルなの!? ファンって何人くらいいるんだ?」林月が聞いた。


少女は少し意外そうに笑い、ポケットからスマホを取り出してこちらへ見せてきた……


「ふふん……私、フォロワー六千人いるんだよ! 今日はあの会場で初ライブなんだ〜! すっごく楽しみなんだけど、君たちどう思う? たくさん人来てくれるかな!?」


林月は彼女のスマホを見て、それから少女の顔を見た……


「うーん……どうだろ。だって、そのフォロワーって写真だけ見てる可能性もあるし……今の世界って、誰でもそういうの持ってるからさ。何か変わった面白さとかないと、こういうのって正直……」


そこまで言いかけて、期待に満ちた少女の目を見た瞬間、林月は口を閉じた……


「ん? どうしたの? それで!?」少女は身を乗り出して聞いた。


「うーん……たぶん林月は、“そのフォロワーって実際にはライブ来ないんじゃないか”って言いたいんだと思う……」


藤田が続きを言いかけた瞬間、林月は慌てて藤田の口を塞いだ……


「ちょっ、何すんの!? それ、お前が言おうとしてたことじゃん!」藤田が抗議する。


「い、いや違うって! 俺の勘違いだったわ! きっとみんな来てくれるって! うん、絶対!! はは……」


林月は引きつった笑顔で言った……


「演技ヘタすぎ……」藤田が呆れたように言う。


「おぉ〜! だよね!? 私もそう思うんだよね〜!!」


少女は嬉しそうに笑った。


……


「私の名前は鵜田! よろしくね!」少女は元気よく言った。


「うん。つまり、ライブに向けてどういうリハーサルや演出をすれば人を惹きつけられるか、その相談ってことだよな?」


「うんっ、その通り! だからいっぱい手伝ってね!」鵜田は笑顔で言った。


「まあ……確かに難しそうだけど、少しずつやればいいんじゃない?」藤田が言った。


…………


「でもさ、お前って疲れたりしないの? 地下アイドルってファン少ないし、全然売れないだろ。そういうのって、嫌になったりしないのか?」林月が尋ねた。


「んー? 別にそこまでかな! だって、この世界って努力しなきゃ何も成功しないでしょ? だから頑張るしかないんだよ!


まあ毎回オーディション落ちたり失敗したりしてるけど、それも努力の代償って感じかな!」鵜田は笑いながら言った。


「うわぁ……強っ。メンタル強すぎるでしょ。私もそのくらい前向きになれたらなぁ……」藤田が笑う。


林月は目の前の鵜田を見つめ、少し驚いていた。


この世界を恨まない人間なんて、本当に珍しい。


……こんな人、ちゃんと存在するんだな。


「うん! だからさ、どうやったらライブ盛り上がるか、一緒に考えてよ!」鵜田は笑顔で言った。


林月は立ち上がり、真剣な顔で言った。


「ふふん……そういうことなら、昔アニメとかライブいっぱい見てた俺なら、かなり良いアドバイスできると思うぞ!」


「……そう。でも林月ってなんか全然頼りにならなさそうなんだけど。笑」藤田が言った。


「お、おぉ……そうなのか……」


……


「うーん! まずアイドルって、やっぱ歌わなきゃダメだろ! だから普通にステージで歌えばいいんじゃね!?」林月が言った。


「いや、そもそも最初から歌う予定なんだけど!? それただの当たり前の話じゃん! 何言ってるのよもう!」鵜田がツッコむ。


「お、おぉ……そっか!?


よし、ちゃんと考えるぞ……!


今の若い人たちって流行ってるもの好きじゃん? だからライブ開始直後に、今一番人気あるものを配ればいいんだよ!」


「おぉ〜! なんかそれ良さそう! でも何を配ればいいの? 今って何が流行ってるの!? 教えて教えて!」鵜田が興奮気味に聞いた。


「おぉ、知りたいのか!?


今一番流行ってるのって、やっぱエナジードリンクとかじゃね!? なんか“地雷系”とか、今の若者ってみんな飲んでるイメージあるし!


だからライブ中に客席へエナドリ投げればいいんだよ!!」


……まあ、ここ異世界だけど、そんなものあるのか……?


「おぉ〜! なるほど!! エナドリなら家にめちゃくちゃあるよ! 毎日ゲームしながら飲んでるし、一日三本くらい飲んでる!! 他には!? 他には何かある!?」鵜田は目を輝かせながら言った……


……


えっ……マジであるのかよ。


俺、意外とセンスあるんじゃね……?


今までこういう話しても、だいたい発言権なんてなかったし……褒められたの、初めてかもしれない……


「うーん……もし一気に人気出したいなら、そこまで難しくないかもな。 そうだ、お前って何か能力とかあるの?」林月が聞いた。


鵜田は周囲を見回し、自分の手をぎゅっと握った……


「能力のこと? 見る? でも、たぶんあんまり役に立たないと思うけど……」


そう言った瞬間、鵜田の手から大量のガスみたいなものが噴き出した。


そして――


ドォンッ!! という爆発音。


手のひらから、危険すぎる花火みたいなものが大量に飛び出した…………


「うわっ!? 何それ、危なすぎるだろ……!」藤田が驚いて言う。


鵜田は能力を止め、苦笑いしながら手を振った。


「でしょ〜? だから私、普段ほとんど能力使わないんだよね〜。


いつもはこの火力使ってバーベキュー焼いてるくらいかな! 肉に攻撃しながら食べてるんだ〜!」


鵜田は楽しそうに笑った。


「うーん……でも、それってライブに活かすの難しくない?」藤田が言った。


その時、林月は横で考え込み、突然立ち上がった。


「いや、いける!!」


「観客に当てなきゃいいんだろ!? ライブ演出って、こういう火使うやつ普通にあるじゃん!!


そうだ!!


ステージに生肉持っていって、その能力で焼いて、焼けた肉を客席に投げればいいんだよ!!


ライブ見ながら飯食えるとか最高じゃん!!」


鵜田は林月の話を聞いた瞬間、まるで世界が開けたみたいな顔をした。


次の瞬間――


彼女の背中から翼が生え、そのまま空へ飛び上がった。


「うわぁぁ!! 君めちゃくちゃ天才じゃん!!」


林月は空を飛ぶ鵜田を見上げ、驚愕した顔で指を差した。


「ちょ、待て!! お前飛べるの!? ていうかその翼なんだよ!?」


……


「いや、翼あるなら先に言えよ!! それならもっと色々できるじゃん!!


空飛べるなら、演出の幅めちゃくちゃ広がるだろ!?」


林月は興奮気味に言った。



……


鵜田にあれこれ大量のアドバイスをした後、あとは本番を待つだけとなった。


果たしてライブは成功するのか。 任務は無事に終わるのか――!?


……


でも今回は、本当に意外だったな……


初めて、自分の意見を受け入れてくれる人がいた。


昔は発言しようとしても黙らされるか、誰かの命令に従うだけだったし…… 自分の意見なんて、ほとんど存在してなかったんだよな……


……


「あとはこの手紙だけだな。ちゃんと相手に渡せば終わりだろ!」


……まあ、難しくなければいいけど。


林月は手紙に書かれた住所を見つめた。


だが正直、どこにあるのか全然わからない。


林月は藤田を見た……


藤田はその封筒をひったくるように受け取った。


「もう〜、今さら思ったんだけどさ。 文字は見づらいけど、私たちスマホあるじゃん。普通に調べればよかったんだよ!」


藤田は笑いながら言った。


「はぁ!? お前スマホ持ってたのかよ!? じゃあさっきギルド戻って道聞いたの何だったんだよ、バカか!?」


林月がツッコむ。


藤田は苦笑いしながら、林月の手を引いて歩き出した。


「えーっと……ここ、別の街っぽいね。 電車で行くしかないみたい!」


藤田はスマホの地図を見ながら、林月を引っ張って進んでいった……


……


どれくらい歩いただろうか。


前方から、暖かく眩しい陽射しが差し込んできた……


脇道を抜けると、そこにはどこかヨーロッパ風の街並みが広がっていた……


通りでは多くの人々が散歩を楽しみ、 カフェの窓からは暖かな灯りが漏れ、 テーブルには焼きたてのパンが並んでいる。


空気にはほんのりと香ばしい匂いが漂っていた……


細い街路樹の隙間からは、眩しい陽光が木漏れ日となって降り注ぐ……


店先に掛けられた布の暖簾や風鈴が、風に揺られて澄んだ音を鳴らしていた……


人々の話し声と風の音が混ざり合い、 まるで世界そのものが穏やかに呼吸しているみたいだった……


この暖かい感覚は、まるで夢の中みたいだ……


こんな景色を、自分が生きているうちに見るなんて思ってもみなかった。


人間だった頃の俺は、ずっと同じ場所をぐるぐる回ってばかりで、 遠くへ行くことすらほとんどなかった。


まるで人生そのものが止まっていたみたいに……


藤田は振り返り、不思議そうに林月を見た。


「ん? どうしたの? もしかして道間違えた? 電車この辺のはずなんだけど。地図にもそう書いてあるし」


林月はどこか嬉しそうに言った。


「いや、違うって。 なんか……こういうのも悪くないなって思っただけ。


こんなに落ち着いた気分になるの、久しぶりだし…… こういう景色見るのも、ほんと久々だなって」


藤田はよくわからなそうにしながらも、 林月の表情を見て、小さく笑った……


二人は歩道橋を上っていく。


林月は橋の下を振り返った――


そこに広がっていたのは、一面の海だった。


浅く広がる海水は、 まるで世界そのものを覆っているみたいだった……


視界の果てでは、海と空がほとんど一つに溶け合っていて、 この世界そのものと重なっているように見える……


藤田は林月の手を引きながら、 ゆっくりと歩道橋を降りていく。


そして橋を降りた後――


二人はそのまま海の上へ歩き出した。


まるで水面の上に立っているみたいに……


「……え!? ちょ、藤田!? ここ海なんだけど!? 電車乗るんじゃなかったのかよ!? 線路なんてないじゃん!!」


林月は少し焦ったように言った。


足元の冷たい海水を見つめ、 その果てしなく広がる海を見ながら、 なぜか不思議な安心感を覚えていた……


藤田は林月を見て、 困ったような、それでいて優しい笑みを浮かべた。


そして彼の手を引っ張りながら前へ進む――


「はいはい、いいから早く行くよ!」


二人はそのまま海の中央へ向かって歩き続けた。


林月の靴はすっかり海水で濡れてしまっている……


なのに、どれだけ進んでも水位は全く上がらなかった。


足元の透明な海の中では、 魚たちが静かに泳いでいるのが見える……


まるで幻想の世界みたいだった。


「ねぇ林月、着いたよ。足元見てみなよ」


藤田は微笑みながら言った。


林月が下を見ると――


浅い海の底に、 一本の古びた線路が静かに横たわっていた……


「藤田、これ何だよ!? 電車の線路なのか!?


なんでこんな場所に…… これって……!?」


林月は驚きながら言った。


藤田は首を傾げ、楽しそうに笑う。


「お? 来たことないんだ。 じゃあちゃんと見てなよ?」


――その瞬間。


線路から激しい振動音が響き、 海面そのものが小さく揺れ始めた……


海と空の境界線、その遥か彼方から――


一台の列車が、 風と水を切り裂きながら真っ直ぐこちらへ走ってきた……


林月は目を見開き、 その列車を呆然と見つめる――


「……え、何これ……!?」


「ん? 電車だけど? 何そんな驚いてんの。あはは……」


列車はそのまま二人の前へ滑り込み、 ゆっくり停車した。


蒸気音が響き、 扉がゆっくりと開いていく……


車内はどこか古びていたが、 木材の香りと優しい空気に満ちていた。


「そっか。乗ったことなかったんだ。


一緒に行こうよ…… ふふん、これなら私が色々教えてあげられるね。


まさかこんな日が来るなんてなぁ。ほら、行くよ!」


藤田はそう言って、 林月の手を引きながら列車の中へ入っていった……


……


林月は、自信満々な藤田を見ながら、 少しだけ理解した気がした。


藤田って、 何もかも怖がって自信がないタイプじゃないんだ。


むしろ、自分が相手より強かったり、 自分が役に立てる場面になると、 急に自信満々になるタイプなんだな……


ほんと単純というか何というか……


でも、そういうのも悪くないかもしれない。


列車の車内は、 不思議なくらい心地良かった。


木製の椅子に座っていると、 まるで別の世界へ来たみたいな気分になる。


現実と幻想が混ざり合ったような感覚……


列車は海岸線に沿って、 ゆっくり前へ進んでいく……


周囲では、 眠っている人もいれば、 スマホや新聞を眺めている人もいる。


そこには、 今まで見てきたものとはまるで違う世界が、 静かに広がっていた……


時折吹き込む優しい風が頬を撫でるたび、 まるで子供の頃へ戻ったみたいな気持ちになる。


あの頃の世界は、 もっと単純で、もっと明るかった。


余計な悩みも不安もなくて、 全部が純粋で、本物だった気がする。


だけど今は、 知らないうちに現実が人を変えていく。


気づけば、 最初の自分がどんな人間だったのかすら、 少しずつ曖昧になっていく……


大人になるって、 本当に良いことなんだろうか。


……きっと、その答えは人によって違うんだろうな。


……


藤田は隣に座る林月を見た。


「ねぇねぇ、林月って普段何して過ごしてるの?


これ初めて乗ったんだよね? 結構珍しいよね〜。


私なんて、どれだけ怖くても昔は誰かと一緒に乗ったことくらいあるし……


……まあ……」


藤田は笑いながら言った。


だが、その笑顔はどこか少しだけ不自然だった……


太陽はゆっくりと沈み始め、 海の向こうへ溶けていく。


暖かな夕陽が、 林月と藤田の身体を優しく照らしていた……


「……そっか。


でも、こういうのも結構楽しいな。 ありがとうな、藤田……


……でもさ、お前何か怖がってるだろ? さっき、何か言いかけてなかったか?」


林月は静かに言った……


「……え? 何それ……


……そっか、うーん……


確かに昔、色々あったんだよね。 だから今でも、人と関わるの怖い時あるし……


……まあ今は前よりマシだけど。


でも時々さ、周りの人が怖くなる時あるんだ。


特に男の人とか…… なんか理由もなく怖くなることがある」


「はぁ!? 何だ、そんなことかよ。


まあ、人怖いのは普通だろ。 俺だって時々そうなるし、気持ちは分かるよ。


でも何で男だけ特別怖いんだ? 異性だからとか?


ほら、俺も色々あって女の子怖い時あるしさ!」


林月は笑いながら言った。


「……そっか。


男の人ってさ…… 昔色々あったせいで、私も少しずつ慣れてはいったんだけど……


でも今でも、 見てるだけで気持ち悪いとか、嫌だなって思う男の人はいるよ……」


「へぇ……


ちなみにどんな男が無理なんだ? どういうタイプ見ると嫌になるんだよ?


……ていうか俺も男だけど、 お前そんなに怖がってなくね?」


藤田は林月を見つめ、 眉をひそめながら言った。


「……あー、確かに。


でも林月には全然そういう感覚ないんだよね。


怖いとか拒絶感とか、全然ない。


たぶん特定のタイプだけなんだと思う。


だって林月って、 見るからに弱そうだし、頼りなさそうだし、 何もできなさそうじゃん?


だから逆に怖くないんだと思う」


「……おぉ、そうかよ。 何か普通にひどくないかそれ……」


林月は苦笑いした。


……まあいいか。


今は変に思い出すのやめよう。


とりあえず、 目の前のことを終わらせないとな。


列車はそのまま、 果てのない海の上を静かに走っていく……


周囲の空気を見ていると、 まるで昔のアニメの世界みたいだった。


子供の頃へ戻ったみたいな気分になる……


林月は景色を眺めながら、 ゆっくりと目を閉じた……


……


「――プシューッ!!」


列車は駅へ到着し、 静かに停車した……


藤田は眠っていた林月の肩を軽く叩く。


「もう〜、こんなのでも寝れるんだ。 どんだけ寝心地良かったのよ。ほら、行くよ!」


林月は前を歩く藤田を見て、 それから窓の外へ視線を向けた……


夕陽の残光に照らされ、 車両全体が黄金色の光に包まれていた。


まるで空から光そのものが降り注ぎ、 世界ごと飲み込んでいるみたいだった……


……なんだろう。


この感覚、 すごく不思議だ……




藤田は林月を連れて列車を降り、駅の外に出た。その頃には、街全体が陽光に占領されていた……


「着いた。ここのはずだ。住所を頼りに探そう!」藤田はスマホを手に言った。


ここから二人は、その少女の行方をずっと探し続けた。しかしなぜか、信封に書かれた住所がどうしても見つからない……


たくさんの人に尋ねても、誰もその住所を知らなかった。スマホの地図にもほとんど表示されなかった……


人々に尋ね続けても、結果は一向に出なかった……


そして太陽が沈んだ後、突然一人の少女が近づいてきた。


彼女は厳しい表情で尋ねた。


「あなたたちが探しているのは、小雅のことですか?」


林月は振り返り、困惑しながら聞いた。


「誰……今誰の話をしてるの!?」


少女は林月たちが手に持つ手紙を指差した。


「これ、あなたたちは一人の女の子を探しているんでしょう? 彼女が小雅で、私の友達です!」


「え!? そうなんだ。よかった! この手紙を彼女に渡してもらえるかな!?」林月は言った。


少女は周りを見回し、手を振って、少し重い口調で言った。


「ごめんなさい。でも小雅は今、ちょっと都合が悪いんです……だから、今日は先に帰ってもらえますか?」


林月は隣の少女を見つめ、理解できない様子で問い返した。


「ちょっと待って……どういう意味? 何を言ってるの……」


その時、風が吹き、少女は陰鬱な表情で林月の傍らに歩み寄り、言った。


「うん、そうまで言うなら……本当のことを話すしかないね……」


…………


一週間前、非常に高い階級の富豪が私に目をつけて、私を自分の彼女として買うよう命じてきた……


その時、小雅はそれを知るや否や、迷わず私のそばに立ってくれた。私を助けるために……


それ以来、小雅は行方不明になった。私は必死に探し続けた。でもどうしても見つからなかった……


彼女の家族もみんな揃って「見ていない」と言うばかりだった。そして私は気づいた。彼女の両親が急に大金を持っていて、その場所から引っ越してしまったことを……


……その時、私はだいたい察した。きっと彼女の両親はあの富豪と通じていたのだろう。小雅はもうあの富豪に売られてしまったのかもしれない……


小雅が私を助けるために身を挺してくれたせいでこうなったと思うと、気が気じゃなくて必死に探し回った……


食べず飲まず一週間探し続けたのに、何の手がかりも得られなかった……


そして夜の山道で、足を踏み外してしまい、そのまま斜面を転がり落ちてしまった……


……


全身の皮膚がすりむけ、血が止まらず流れ続けた……


骨も完全に折れ、足首の骨はねじ曲がって皮膚の外に突き出ていた……


でも全身傷だらけで血まみれでも、諦めるわけにはいかなかった。小雅がもう死んでいたとしても、せめて遺体だけでも見つけなければ……


その時、近くの土の山から微かな息遣いが聞こえてきた……


私は這うようにゆっくりと近づいた。地面は泥だらけで、さっきの衝撃で目も一時的に見えなくなっていた……


その泥の下を必死に見つめ、賭けに出るしかなかった……


……歯を食いしばり、必死にその泥を掘り始めた……


……しかし泥の中には無数のガラスの破片と刃物が埋まっていた……


痛みを堪え、手を泥の中に突き入れた……


鋭い破片が容赦なく皮膚を切り裂き、鮮血と肉片が一瞬で飛び散り、泥と混じって流れ落ちた……


一回掘るごとに新しい傷が裂け、爪はすでに泥と血で完全に染まり……


爪の端が剥がれ始め、下の赤い爪床が露わになった……


指先から燃えるような激痛が駆け上がるのに、それでも私は必死に掘り続けた……


……


泥の下にいたのは、本当に小雅だった。彼女は確かに家族に売られて、あの富豪の手に渡っていた……


……小雅は全身をあの富豪に惨たらしく虐待され、輪姦されていたようだった……


手と足は切り落とされ、目は抉り出され、顔中が血と打撲傷だらけだった。私は必死に小雅を背負い、ずっと話しかけながら泣き続けた……


結局、あの富豪は相応の代償を払うことはなかった。階級と金の力で、彼はやりたい放題だった……


かつて、富豪が私を求め、私が拒絶した時、彼はこう言った。


「言うことを聞かない女なんて、公共の乗り物みたいなものだ。お前ら女は、自分たちを見てくれるのがどんな生き物なのか、ちょっと考えてみろよ……」


その時、私は怖くて緊張しすぎて逃げてしまった。でもその逃避のせいで、小雅を巻き込んでしまった……


私は……


……


「うん……そういうことだったの!?


わかった。じゃあ、あなたは小雅の居場所を知ってるよね。私たちはこの手紙を彼女に渡すだけだから!」林月は真剣に言った。


藤田は慌てて林月を引っ張った。


「え、え……ちょっと待ってよ、何やってるの。もうわかっただろ、小雅はもう……」


「うん……わかってるよ。彼女、死んだわけじゃないし……


……冗談だよ……


私はただこの手紙を渡したいだけ。今回の任務を終わらせるだけ。だから、住所を教えてもらえる? それともこの手紙を渡してくれてもいい?」林月は真剣な表情で言った。


その少女は手を振った……


「うん、もういい……


あなたたちが直接渡して。私はもう……怖くて探しに行けない。全部私のせいなのに……」


「そんなことないよ。誰が悪いわけでもない。でもそう思ってしまうのも仕方ないけど、ここからちゃんと立ち直らなきゃいけない。この世界は不公平だけど、だからってその不公平や悪意に負けちゃダメだよ……


こんなこと言うの変かもしれないし、事後報告みたいで嫌かもしれない。ごめん……


でも、逃げ続けるんじゃなくて、今をちゃんと受け止めて。ずっと逃げてたら、最後には何も見えなくなっちゃうよ。わかる!?」林月は真剣でありながら優しい声で言った……


その少女は林月を見て、静かに微笑んだ。そして小雅の現在の住所を教えてくれた……


……


この世界はどうしてこんなふうになってしまったんだろう……この世界は良くなっていて、人々の考え方も進歩して、もっと開放的になっていくはずじゃなかったのか? それなのに彼らは、異性のことも、自分自身のことも、そしてすべてのことを重く考えすぎている。


ただそうやって考え続けるだけでは、自分を内外ともに追い詰めるだけだ…… まるであのデブ兄貴たちみたいに。


……じゃあ俺は?俺もそうなのか? でも今は、いつも責任を「伝統的な男性像の崩壊」や「フェミニズムの進展によるギャップ」みたいなことに押し付けている気がする……


林月は考え続けながら、山の奥へと進んでいった。


……


「うん……小雅の現在地はたぶん山頂の一軒家の中だ。でも天気がどんどん寒くなってきてる。暗くなる前にそこを見つけないと!」


「ねえねえ、藤田、その手紙はとりあえず預かってて。地図見るから!」

林月はそう言うと、手紙を取り出して藤田に渡した……


しかしその瞬間、突然突風が吹き、手紙が飛ばされてしまった。


「えっ……何!?ちょっと待って、手紙どうして飛んだの、藤田、何やってるんだよ……」林月が言った。


「ちょっ……ちょっと待ってよ!急に渡すからだろ!ちゃんと持ててなくて飛んだんだよ……」


「はいはい……ごめん。じゃあ早く取りに行こう!」

林月はそう言うと、すぐに手紙の方向へ走り出した……


藤田もそれを見て、慌てて追いかけた。


急な険しい山道を越え、小川を渡ったあと、手紙はちょうど木に引っかかっていた。 林月は素早くジャンプして手紙を取り戻した。


やっと手紙を手に入れたと思ったそのとき、林月は藤田が後ろから消えていることに気づいた。


「え……藤田!?どこ行ったんだよ!

おい、どこだよ、だ、大丈夫か……?」

林月は後ろへ向かって走った。


……


「ふふ……林月、ごめん。どうやら体力の限界みたいで、息がうまくできなくて、もう歩けそうにない……


先に行ってくれていいよ。昔もこうだった。迷惑かけたくないんだ。でも……」藤田は息を切らしながら言った。


「うん、確かに。そういうのって“足手まとい”って思われるよな。じゃあ今どうする?」林月が言う。


「大丈夫。ただちょっと無理なだけ。昔もそうで、結局誰も一緒にいてくれなくなったんだ……」


藤田はため息をつきながら、自分を責めるようにその場に座り込んでいた。


そのとき林月は手を差し出した。


「ダメだ。俺は任務を解決して、お前の自信を取り戻すために来たんだ。ここで泣かせるためじゃない……


冗談だ。ほら、行くぞ。俺がおぶる。人をおぶったことないし、お前女だし変な感じだけど、変態扱いしないでくれればOKだ」


林月はそう言った。


藤田はその手を取って言った。


「ありがとう。でも最後の一言は消してくれない?空気壊れるから……」


……


こうして林月は藤田を背負い、ゆっくりと前へ進み、ようやく少し古びた旅館の中で小雅を見つけた。


旅館の入口は古い木で作られていて、かなり年季が入っていた。


「ここだな……入るぞ。

藤田、行くぞ。本当に入るぞ!」


「早く入ってよ。何回言うのよ!?」


「いや、ちょっと緊張してさ……笑

ごめんごめん」


林月はそう言うと、ゆっくりと扉を開けた。


中に入ると、古い木の匂いと湿気と埃の混ざった空気が広がっていた。受付の奥には古い時計があり、低い音を鳴らし続けている。


「ん?お前ら誰だ?宿泊か?」


受付の女将が言った。


「いえ、人を探しています!」


……


部屋に入ると、ベッドの上でうめき声を上げている少女が小雅だった。


全身は包帯で巻かれ、手足の断面には水ぶくれや傷があった。


目も包帯で覆われていた。


長時間の影響で、能力でも治せなくなっているようだった。


小雅は人の気配を感じて、震えながら声を絞り出した。


「誰!?そこにいるのは誰!?小唐(その少女の名前)か!?」


「違うよ、ちょっと用事で来ただけ。大丈夫か?」林月が言った。


小雅は震えながら沈黙した。


林月は封筒を目の前に置いた。


「男からの手紙だ。渡すぞ」


小雅は少し顔を向けて言った。


「ごめん……今何も見えない。読んでくれる?」


「おう、悪い」


林月は封を開けた。


手紙の文字はぐちゃぐちゃで、まるで落書きのようだった。


……


「親愛なる小雅へ。これを見てどう思うかわからないけど、初めて会ったときから君のことが好きだった……


昔の俺はうまく話せず、周りから変な目で見られていた。でも君だけは笑ってくれて、表面だけで判断しなかった……


いつも笑顔で接してくれて、丁寧に教えてくれて、本当に救われた。


今の俺は金も力もある。多くの女にも好かれるようになった。でもずっと君を待っている。


強くなった俺と一緒にいてほしい。付き合ってほしい。


敬具」


……


「……なんだこれ。後半いらねえだろ」


小雅は笑って言った。


「ありがとう。気持ちは嬉しい。でも今の私はその人にふさわしくない。こんな状態じゃ無理……


でも、あの人も私のことで変わったんだよね?それならそれで嬉しいよ!」


「いや、それは違うんだが……」


林月が言いかけたとき、少女が戻ってきて肩を叩いた。


「すみません、ここまでにしてください。後で返事を書きますので」


少女はそう言うと、彼らを外へ連れ出した。


……


外に出た林月は藤田に聞いた。


「これってどうなるんだ?任務失敗か?」


藤田は少し考えて言った。


「失敗じゃないと思う。ただタイミングが悪かっただけかも」


……


少女は封筒を返した。


「小雅と返事を書きました。これを渡してください」


そう言って扉を閉めた。


林月たちはそれを受け取った。


……


帰りの列車の中、二人は何も話さなかった。


達成感はあるはずなのに、なぜか心は空っぽだった。


……


そして男の前へ戻る。


「手紙は渡したか?」


林月は何も言わず手紙を返した。


男はそれを読み、表情が崩れていく。


そして手紙を握りつぶし、投げつけた。


「やっぱり……俺のせいか!?障害があるからか!?俺が普通じゃないからか!?」


彼は叫びながら泣いた。


「失敗だ!お前らのせいで失敗した!」


藤田はうつむいた。


林月は静かに言った。


「違う。失敗なんかじゃない。この任務に間違いはない。


間違いがあるとしたら、お前だ。


人は誰でも最初から同じだ。でも成長するんだ。


なのにお前は、自分を否定し続けて逃げているだけだ。


世界は確かに不公平だ。でも逃げ続けたら何も残らない。


始めから諦めている限り、何も始まらない」


林月は藤田の手を取り、地面に落ちた手紙を拾って、そのまま振り返らずに歩き去った。



……


そのとき、月が夜空の高くにかかっていた。今日は満月だった。


月光が水面に映り、銀色の薄い布のように広がっている。


林月は橋の上で夜を見つめ、深くため息をついた。


これで全部失敗だったのか……


まったく……


そのとき、手に持っていた封筒が水面へと落ちた。


林月はそれを見つめていた……


藤田は封筒を見て、林月の手を引き、一緒に水の中へ降りてそれを拾いに行った。


水の中から封筒を拾い上げると、その上にもう一枚の手書きの紙が入っていた。


それはあの少女が書いたもので、「ありがとう」という言葉だけが書かれていた。


藤田も近寄ってきて、嬉しそうに笑いながら言った。


「ねえ、これって感謝の手紙?俺たち宛て?」


「そんなわけないだろ。たぶんあの男に向けたものだと思う。でも、まあ……これでもいいのかもな」


「そうなんだ。でも今日はありがとうね、林月。少し自信が持てたよ。任務とかも思ったより怖くないんだなって思った」


「!? そうか?いや、俺の方こそだよ。お前のおかげで、この世界は少しでも誰かが励まされれば変わるのかもしれないって思えたんだ。


自分を抑えすぎなければ、もう少し楽に生きられるかもしれない……まあ難しいけどな。


一緒に頑張ってみよう。もしかしたら変えられるかもしれない!」林月は笑って言った。


藤田は林月を見て、少し顔を赤くしながら笑った。


「うん、いいよ」


水面の反射の中で、二人の姿はとても澄んで見えた。


……


そのとき、真っ暗な夜空に突然カラフルな花火が打ち上がった。


藤田のスマホも鳴った。


林月が不思議そうに見ると、それは地下アイドルからの感謝のメッセージだった。


鵜田は今回の投票で、林月たちの提案を取り入れ、それが逆に功を奏し、ファンにとって最も意外性のあるパフォーマンスとして成功していた。


コメントは静まり返った状態から一気に変わり、次々と前向きなものへと変わっていった。


ステージの上で鵜田は観客に向かって言った。


「ありがとうございます!でも今日は、このアイデアをくれた人たちにも感謝したいです。本当にありがとう!ここまで応援してくれてありがとう!!(ᗒᗩᗕ)!」


……


「はは……わかった気がする」


「わかった?何が?」


「アイドルとかメイドとか、そういう職業の意味だよ。ただサービスするだけじゃなくて、もっと前向きな形で人に寄り添ってるんだ。


どんな職業でも、表面だけで判断されやすいものはある。でもその裏には努力や葛藤がある。


だからこそ、偏見の中でも前に進む人はすごいんだと思う」


「昔の俺は他人のせいにしてばかりだった。でももうそうじゃない。ちゃんと自分で生きていかないといけない」林月は言った。


藤田は林月を見て、笑いながら言った。


「うん。でもありがとう」


……


その夜、藤田は笑顔でギルドへ戻った。


ギルドの女性は藤田を見て、「任務、うまくいったみたいね。よかったわね」と言った。


部屋へ戻ろうとしたとき、床に見知らぬ人形が落ちているのを見つけた。


藤田は周囲を見回し、誰もいないのを確認すると、その人形を遠くへと投げ捨てた。


何度も試行錯誤して、ようやく完成しました。

本当は、うっかり書きたいことを書きすぎてしまって、危うく収拾がつかなくなるところでしたね(笑)


もし翻訳に間違いがあったら、教えてくださいね……


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