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キミと巡り合う、夏  作者: かがりいずみ


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2/4

手紙

実は内心、とても心配していたのだけれども、

小学校4年生の夏も、5年生の夏も、

僕たちは田舎の祖父母の家に行く事ができた。


そのたびに、僕はあの神社にすっ飛んでいき、

そこに変わらずに座っている純を見て、安心していた。


月日は過ぎていく。

僕らが中学生になる頃には、さすがに2週間も田舎にいることは少なくなった。

他の旅行先のほうがいいだろうと両親が判断したからだ。


でも、僕は可能な限りの方法を使って、

なんとか少しでも祖父母の家に行くように主張したのだ。


それでも、純に会えるのはひと夏に数回くらい。

なので、僕たちは、手紙のやり取りをするようになった。


今はスマホという便利なものがあるのに、と思うのだが、

純は『私、スマホ持ってない』と言ったからだ。


秋にも冬にも、春にも、そしてもちろん夏にも、

僕たちは手紙のやり取りをした。

その内容は他愛のないものばかりだった。


僕の方は学校の試験が難しいとか、友達がムカつくとか、

新しいゲーム機を買ってもらったとか、そんなことを書いた。


純も勉強が難しいというところは同意してくれた。

数学は好きだけど、歴史が覚えられないと愚痴をこぼす。


そして、純の手紙は必ずこう結ばれていた。


『次の夏に、また会いましょう。』


僕のレターボックスには、

彼女からの手紙が何通も、何通も溜まっていった。


毎年、こんなふうに月日が過ぎると思っていた。

高校2年生の夏、までは…。


その夏は特別だった。

妹の飛鳥(あすか)が高校受験を控えていたのだ。

そして、僕に輪をかけて成績が振るわない妹の行く末を心配した両親は、

その年、旅行はおろか、祖父母の家に行くことすら取りやめると言い出したのだ。


僕は猛反発をした。

母親は、とても意外だったらしい。

高校2年の男子がおばあちゃんの家に行きたがる…

確かに端から見たら謎現象かもしれない。


しかし、僕にとっては死活問題だった。


もう、このときの僕は、

言い訳のしようもないほど、自覚していたのだ。


純が好きだった。


だから、考えに考えた。

そして、僕は一つの結論を出す。

「だったら、俺、自転車でひとりで行くから!」

と。


☆☆☆

「ええっ!

 それで、蒼真、一人で来たの!?

 これに乗って?」


純がいつもの神社の鳥居の前に止めた僕の愛車を見て、

感嘆の声を上げた。


一応ロードバイクだが、

それほど高性能というわけではない。


にも関わらず、純はあちこち触って、

すごいすごいと繰り返した。


「蒼真はすごいね。

 身体強いんだね〜」

「まあな、男だかんな」


祖父母の家にひとりで行くと言った僕を、母親は止めようとした。

しかし、父親が支援してくれたのだ。


『男の子はそれくらい冒険心がないといかん』

そして、本当はママチャリで行く予定だったのに、

ロードバイクやらなんやら、装備一式を買ってくれたのだった。


とても、意外なことだった。

でも、ありがたかった。


お陰で、今年もこうして純に会うことができたからだ。


初めて会ったときにも日本人形のようだと思った純は、

高校生の今もその美しさは変わらなかった。


いや、むしろ磨きが掛かったと言ってもいい。


黒くつややかなセミロングの髪、

大きい二重の瞳、

相変わらずの透けるような肌が、

白のワンピースにとても良く映えていた。


うっすら化粧をしているのかもしれない。

頬がピンク色で、唇に朱が差していた。


僕たちはおしゃべりをしながら、ゆっくり、ゆっくりと

神社の近くのあぜ道を散歩する。


ミンミンとセミが煩く鳴いている。

純はきれいな日傘を差して、

僕は自転車を引きながら、

日陰を探して、ゆっくり、ゆっくりと歩いていた。


バス停を通り過ぎようとしたとき、

純が足を止めた。


視線の先には掲示板があり、

そこには近くにあるもっと大きな神社の例大祭、

いわゆる夏祭りのチラシが貼ってあった。


今週の土曜日にあるようだ。


屋台が出たり、神楽があったりする。

そして、小さいながら花火もあるようだった。


純が、それをじっと眺めていた。

行きたいの…かな?


「蒼真は今年はいつまでいるの?」

不意にそう聞かれて、僕は固まってしまった。


実は祖父母にはそれほど長く泊まると言ってはいなかったからだ。

むしろ、明日にでも帰るべきか、とすら思っていた。


でも、それは言い出せなかった。


「うん…もう少しいるよ」

「そうなんだ…」


そこで会話が途切れてしまった。


「純、お祭り行きたいんじゃないの?」

聞いてみる。

でも、純はちょっとだけうつむいて、小さく首を振った。


「うううん…私、人混み苦手だから…」

「そうなんだ…」


でも、なんとなく、純の横顔は寂しそうに見えた。

その顔を見ていたら、なんとかしてあげたくなってしまう。


そして、純と話せて、かつ彼女の願いを叶える、

とびきりの方法を僕は思いついた。


後は、言うだけだ…

言う、だけ…。


僕はこっそりと、深呼吸をした。

落ち着いて、さり気なく…

きっと、大丈夫だから…


「そ、そうだ!あ、純…さ、二人でやらないか?」

「え?」

「二人で夏祭り…やるんだ。あ、あの神社でさ」


純が、キョトンとした顔をした。


まずったかもしれない、

そう思った。


次いで、彼女の目が大きく見開かれて、

そして、ゆらりと揺れたように見えた。


「うん…」

少し涙ぐんで、彼女は大きく頷いてくれた。

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