表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】王宮結界樹の管理を解任されたので田舎で暮らします。私を追いかけてきたのは王子ではなく結界樹でした   作者: 百香スフレ
第一章:根を下ろす場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/13

2話 解任

こちら、短編版「王宮結界樹の管理を解任されたので田舎で暮らします。私を追いかけてきたのは王子ではなく結界樹でした」の連載版になります。


短編版はこちらをどうぞ。

https://ncode.syosetu.com/n7071mh/

 ⋯⋯え?

 何を言われたのか、理解できなかった。


 頭の中が真っ白になった。


 今、ガイアス殿下は何と言ったのだろう。——解任、と、確かそう聞こえた。

 ——でも、どうして。


「⋯⋯申し訳ありません。もう一度、お聞きしてもよろしいでしょうか」


 自分でも驚くくらい、震えた声だった。

 ガイアス殿下は少しだけ目を閉じると、静かに頷く。


「本日をもって、お前を王宮結界樹管理人の任から解任する」


 聞き間違いじゃなかった。——私は、王宮結界樹の管理人を解任される。それはつまり、フィルとの別れを意味していた。⋯⋯その事実だけが胸へ重くのしかかった。


「⋯⋯理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」


 勇気を振り絞って尋ねた。

 何か失敗をしただろうか?結界樹に異変はなかった。管理を怠った覚えもない。誰かへ迷惑を掛けた記憶もない。

 それでも、私が気付いていないだけで何かあったのかもしれない。


 ガイアス殿下は私の問い掛けにすぐ答えず、一度アーヴィン様へ視線を向けた。

 すると、アーヴィン様が一歩前へ出る。


「後任には、王立植物研究所首席卒業者であるミリア・ヴェルデを付ける。また、ミリア・ヴェルデをトップとした組織的な管理体制を築くことになった。フローラ嬢を残すことは協議されたが————会議の結果、新体制にとって不要と判断し、君を解任する運びとなった」


 ミリア・ヴェルデ。その名前には聞き覚えがあった。王立植物研究所始まって以来の秀才。そんな噂を何度も耳にしている。


 確かに、私よりずっと優秀な人なのだろう。だが、それだけで、私はここを去らなければならないのだろうか。なんだ会議って。私は知らないぞ。

 少し睨みつけるように顔を上げると、ガイアス殿下は苦しそうな顔だったが、アーヴィン様は無表情、周りに居る貴族はどこか——下卑た笑顔を浮かべていた。


 アーヴィン様は続けて、無表情のまま口を開く。


「既に結界樹の管理簿に書かれた情報から、ミリア嬢は完璧な管理手順を構築済みである。よって、フローラ嬢の王宮結界樹管理人としての業務は、本日をもって終了だ。王宮に居る理由が無くなった以上、速やかに荷物をまとめ、王宮を退去せよ」


 淡々と告げられる言葉が胸へ突き刺さる。

 私の十数年間は。毎日フィルと過ごした時間は。そんなに簡単に終わってしまうものなのだろうか。お父さんに託された想いや仕事は——どうなるんだ。


 思わずフィルの姿が頭に浮かぶ。

 帰ったら、いつものようにお世話をして。花が咲くのを楽しみにして。⋯⋯そう思っていたのに。もう、それもできない。胸が苦しくて、今にも泣きそうだった。


 それでも、この場で泣くわけにはいかない。

 私は王宮結界樹管理人なのだから。最後まで、その役目だけは果たさなければ。

 ゆっくり息を吸う。震えそうになる声を押さえ込み、私は頭を下げた。


「⋯⋯承知いたしました」


 それが精一杯だった。


「繰り返しになるが、速やかに私物をまとめ、王宮を退去してもらう」

「⋯⋯はい」


 もう一度だけ返事をする。もう、顔を上げる勇気は出なかった。


「⋯⋯以上だ」


 ガイアス殿下のその一言で謁見は終わる。

 私は深く一礼すると、静かに踵を返した。


 背中へ何人もの視線を感じる。

 でも、振り返らなかった。振り返ってしまえばきっと泣いてしまう。

 謁見の間を出ると、扉が静かに閉まった。そこでようやく、大きく息を吐く。


「⋯⋯⋯⋯」


 駄目だ。頭の中が整理できない。

 どうして⋯⋯どうして私は不要って思われたんだろう。

 フィルは、どうなるの。

 私がいなくなったら、ちゃんとご飯を食べてくれるかな。寂しがり屋のフィルだ。私がいなくなったら、絶対に悲しむだろう。今度のミリアって人は、ちゃんとフィルの話し相手になってくれるんだろうか。

 

 考えれば考えるほど、不安ばかりが浮かんでくる。

 気が付けば、一粒の涙が床へ落ちていた。


 すると、ずっと付いてきてくれていた近衛騎士さんが、すっとハンカチを差し出してくれた。


「フローラ様。こちらを」

「あ、ありがとうございます⋯⋯大丈夫です」


 私は騎士さんのハンカチを汚すわけにもいかず、慌てて袖で涙を拭った。


「⋯⋯⋯⋯」

「本当に、大丈夫ですから。ありがとう、ございました」


 私はそれだけ言うと、私物をまとめに部屋へ歩き始めた。

 振り返らなかった。振り返ったら、きっとフィルのところへ走ってしまうから。

評価、ブックマーク、感想など励みになります。

モチベーションになりますので、よろしくお願いします。


また、作者Xにて更新通知を行っております。

新作の通知なども行いますので、ぜひフォローお願いします。

@MokaSufure

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ