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【完結】王宮結界樹の管理を解任されたので田舎で暮らします。私を追いかけてきたのは王子ではなく結界樹でした   作者: 百香スフレ
第一章:根を下ろす場所

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16話 レオン歓迎会

 ガイアス殿下を見送ったあと、村には少しだけ静かな時間が流れた。


 王宮を追い出されてから、まだ十日も経っていないが、私の周りは随分と賑やかになった。


 フィルが来てくれて、結果的にレオンさんも来てくれた。

 リーヴェ村は、また少しだけ温かくなった気がする。


 そんなことを考えていると、ロイドさんが大きく手を叩いた。


「よし! 今日は歓迎会だ!」

「おおーー!!」


 村人達が一斉に歓声を上げる。


「歓迎会?」


 私が首を傾げると、ロイドさんは当然だと言わんばかりに頷いた。


「仲間が増えたんだ。宴くらい開かんとな」

「えっ、今からですか?」

「今からだ」


 その一言で村人達が一斉に動き始めた。


「村長!台所借りるぞ!」

「もう借りてるじゃないか⋯⋯」


 トーマスさんが勢いよくロイドさんの家へ入っていく。


「歓迎会なら新作を出すしかない!」

「あはは⋯⋯村長、うちの旦那がすみません⋯⋯」


 エマさんは呆れながらも笑っていた。

 一方、マーサさん——村に住む薬師のおばあちゃん——は大鍋を抱えて歩いてくる。


「スープなら任せな。若い子はいっぱい食べないとね」

「ありがとうございます!」


 今度は酒樽を担いだガストンさんがやって来た。


「がははは!今日は飲むぞぉ!」

「ガストン、お前は毎日飲んでるだろ。」


 ロイドさんが呆れたように言う。


「歓迎会だから倍飲む!」

「何だその理屈は⋯⋯」


 周りから笑い声が上がる。

 その頃には、ディーンさんも森から戻ってきていた。肩には立派な猪を担いでいる。


「今日は良い(しし)が獲れた。⋯⋯宴会で使うと良い」

「さすがディーン!」

「肉だー!」


 隣にいたレオンさんがディーンさんの所に歩いていく。


「ディーン殿、挨拶が遅れました。俺はレオン・アッシュと言います。解体作業、お手伝いさせてください」

「⋯⋯騎士様、ですか。ディーン・ハントだ⋯⋯です」

「敬語など使わないでください。俺のことはレオンとお呼びください」

「⋯⋯そうか。あまり畏まった言葉遣いは得意じゃなくてな⋯⋯助かる。猪の解体作業だったな。向こうの解体場で行う。着いてきてくれ」


 レオンさんはディーンさんとどこかへ歩いて行く。

 私はマーサさんの所に向かい、スープ作りの手伝いをすることにした。

 

 数時間後。


 机が並べられ、料理が運ばれていく。

 リリィちゃん達は飾り付け担当らしく、広場を元気に走り回っていた。


「フローラお姉ちゃん!」

「どうしたの?」

「これ高くて届かない!」

「あ、本当だ」


 木の枝へ飾りを結びたいようだ。

 どうしようかと考えていると、一本の枝が私達の横を通り過ぎた。


 さわっ。


「あ、フィル!」


 フィルは枝の先で飾りを受け取ると、高い枝へ器用に結び付ける。


「わぁ!すごーい!」


 リリィちゃん達が拍手すると、フィルは嬉しそうに葉っぱを揺らした。


「ありがとう、フィル」


 さわさわ。


 そのままフィルは他にも手伝えることが無いか探し始め、ふらふらと歩いて行った。そういえば、レオンさんは歩行フォームのフィルに驚かなかったなぁ⋯⋯。あれが近衛騎士団長の余裕か。凄い。


 日が傾く頃には、広場いっぱいへ料理が並んでいた。

 焼き立てのパンや香ばしい肉料理。大鍋いっぱいのスープに、採れたて野菜のサラダ。


 そして最後に、トーマスさんが大きな木箱を抱えてやって来た。


「できたぞ!」


 蓋を開けると、焼き菓子がぎっしり詰まっていた。


「新作もいっぱい作ったぞ!」

「また新作作ったのね⋯⋯」


 エマさんが苦笑する。


「歓迎会だからな!」

「歓迎会を理由にしないの」


 私は思わず笑ってしまった。


 みんな席へ着くとロイドさんが立ち上がり、大きく杯を掲げた。


「それじゃあ、新しい家族に!乾杯!!」

『かんぱーい!』


 私は幾つか食べ物をお皿に乗せると、それを持ってフィルのところに行く。

 お座りモード——普通の木のように、根を地面に張っている状態——のフィルは、枝を巧みに操って私を木の上に座らせてくれた。


「いただきます。フィル、ありがとう」

「⋯⋯⋯⋯」————さわっ

「ん〜!美味しい!猪肉、血抜き完璧ですっごい美味しい!トーマスさんの新作パンも美味しいなぁ」

「⋯⋯⋯⋯」————さわさわ

「フィルも嬉しい?良かったねぇ」


 食べ物の良い匂いで、フィルもご機嫌なようだ。またこうやってフィルとご飯を食べられて、本当に幸せだ。この幸せを許してくれたガイアス殿下には感謝である。

 ふと周りを見渡すと、キョロキョロと何かを探しているレオンさんが目に入った。


 フィルに頼んで下ろしてもらい、レオンさんに声をかける。


「レオンさん?何かお探しですか?」

「フローラ様!どちらにいらしたのですか?探したのですよ」

「え?あー⋯⋯すみません、フィルの木の上でご飯食べてました⋯⋯」

「⋯⋯なるほど、それなら良かったです。私は貴女の護衛ですので、できれば事前に一言いただけると助かります」

「はい⋯⋯すみません⋯⋯」


 叱られてしまった⋯⋯。

 少し落ち込んでいると、レオンさんは咳払いを一つする。


「怒っていませんから。顔を上げてください」

「は、はい⋯⋯」

「⋯⋯これからは、目を離しませんから。だから安心してください」


 私はレオンさんの言葉に顔を上げる。

 レオンさんは真剣な表情で、照れひとつ見せていない。

 だけど私は、その言葉で耳まで真っ赤になってしまっていた。


「いてっ」


 すると、ビュンとフィルの枝が飛んできて、レオンさんの頭を叩いた。


「フィル!?」

「⋯⋯⋯⋯」

「ははは⋯⋯凄い速さの一撃でした⋯⋯。気が抜けていたとはいえ、久しぶりにしっかりと直撃を受けました」


 レオンさんは笑ってくれている。フィルをじっと見ると⋯⋯何やらヤキモチを焼いているようだった。

 もう!フィル、違うから!私とレオンさんはまだ会ったばかりで何もないから!


 私はフィルの幹をぽかぽかと殴りつけた。フィルは⋯⋯微動だにしていなかった。まったく。

次回は明日0時に投稿いたします。

1日に複数話投稿しますので、ご注意ください。


***


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