表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】王宮結界樹の管理を解任されたので田舎で暮らします。私を追いかけてきたのは王子ではなく結界樹でした   作者: 百香スフレ
第一章:根を下ろす場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/77

14話 フローラの条件

「殿下には、今から言う条件を呑んでいただきます」


 私がそう言うと、ガイアス殿下は一切迷うことなく頷いた。


「分かった」


 あまりにも即答だったので、逆に私の方が驚いてしまう。


「まだ何も聞いていませんよ?」

「君が望むことなら受け入れる。それが私の責任だ」


 その目は真剣だった。

 もう言い訳をするつもりも、自分を守るつもりもないのだろう。


 私は小さく息を吸った。


「まず一つ目です」


 ガイアス殿下は黙って耳を傾ける。


「ミリアさんを守ってあげてください」

「⋯⋯ああ」

「わざわざ言うことではないかもしれませんが、彼女は悪くありません。何も知らず、王宮から任された仕事を一生懸命頑張っただけです。フィルに美味しいお水やご飯をくれた人が悲しむのは⋯⋯絶対に嫌です」

「約束しよう」


 迷いのない返事だった。


「二つ目です」


 私は窓の外を見る。

 フィルは窓からこちらを覗き込みながら、葉っぱを揺らしていた。


「これから先も、フィルの気持ちを一番に考えてあげてください」


 ガイアス殿下も窓の外を見る。

 しばらく何も言わなかった。⋯⋯やがて、小さく頷く。


「ああ。もう二度と、国宝だからという理由だけで扱うことはしない。一つの命として向き合うと約束しよう」


 その言葉を聞いて、私は安心した。


「ありがとうございます。そして最後です」


 私はガイアス殿下を真っ直ぐ見た。


「私は、この村で暮らします」


 部屋が静かになる。


「王宮へは戻りません。フィルも、この村で暮らします」


 少しだけ緊張した。

 この条件だけは、断られるかもしれない。


 でも。


「⋯⋯分かった」


 ガイアス殿下は静かに頷いた。


「君達の意思を尊重しよう」

「ありがとうございます」


 受け入れてくれて良かった。と思ったのだが⋯⋯。


「ただ⋯⋯現在、王国の結界出力が日に日に下がってきていてな⋯⋯このままでは、被害が出る日も⋯⋯」

「えっ。フィル、そうなの?」

「⋯⋯⋯⋯」


 知らないよー、といった反応だ。⋯⋯うーん、私のワガママで誰かが傷付くのは困るなぁ⋯⋯。

 そう考えていると、フィルが何やら眩い光に包まれる。


「む?魔術通信⋯⋯私だ」

「?」


 すると、今度はガイアス殿下が何やら喋りだした。魔術に関してはからっきしで、殿下が何をしているのかサッパリ分からない。

 殿下は数秒手を耳に当てて黙っていたが、すぐに大きな声を出して立ち上がった。


「なに!?結界の出力が100パーセントに戻っただと!?」

「えっ⋯⋯」


 何だか分からないが、犯人は100パーセント⋯⋯。

 私はフィルを見る。発光していたフィルだったが、既にフィルの発光は収まっていた。当人⋯⋯当木?は、何やら仕事をやり遂げたような反応だ。


「あぁ、あぁ⋯⋯。分かった、とりあえず続きは王都に戻ってから話そう。⋯⋯とりあえず、課題は解決だ」

「あ、あのー⋯⋯」

「⋯⋯ふぅ。結界樹——いや、フィルは凄いな。どういう理屈か分からないが、先ほどの発光現象以降、結界の出力が安定したそうだ」

「そ、そうですか⋯⋯フィル、ちゃんとお仕事してたんだね⋯⋯」

「私としては、結界の出力が維持出来れば問題無い」


 これで、本当の本当に終わった。

 そう思った、その時だった。


「⋯⋯だが」


 ガイアス殿下が小さく笑う。


「今度は、私から条件がある」

「え?条件⋯⋯ですか?」

「ああ」


 ガイアス殿下は姿勢を正した。


「フローラ・リーフレット」

「はい」

「本日をもって、君の役職——王宮結界樹管理人の仕事に加え、『王宮結界樹相談役』という役職を授ける」


 な、なんだそれは。

 

「相談役⋯⋯ですか?」

「以前の役職だけ、というのは色々と都合が悪い。私直々に作った新たな役職も兼任することで、他の貴族たちの意見を握り潰す」


 ガイアス殿下は、今まで見た中で一番笑っていた。私への敵意は無いし笑っているのだが、これまでで一番恐ろしく感じる。これは恐らく、貴族たちへの報復なのだろう。


「もちろん、これまで通り王宮への出入りも自由だ」

「⋯⋯でも、私はもう王宮の人間では⋯⋯」

「いや」


 ガイアス殿下は首を横へ振る。


「君はこれからも、この国に必要な人材だ。だからこそ、新しい形で協力してほしい」


 胸の奥が少しだけ熱くなる。追い出された私に、もう一度必要だと言ってくれたのだ。


「それと」


 ガイアス殿下は少し咳払いをした。


「待遇も見直そう。⋯⋯これまでの給与は低すぎた。今後は、これまでの五倍を支給する」

「⋯⋯⋯⋯え?」


 思考が止まる。


「ご、ご、ご⋯⋯」


 五倍?今、五倍って言った?


「ご、五倍ですか?」

「ああ。それでも安いくらいだと思っている」


 私は思わずロイドさんを見る。

 ロイドさんも珍しく目を丸くしていた。


「⋯⋯殿下」

「なんだ」

「そんなに貰ってしまって、本当に良いんですか?正直、以前の給料でも私としては余っていたんですけど⋯⋯」

「当然だ。これまで君は、働きに見合わない待遇だった。これは償いでもあり、正当な評価でもある。それに、正しい評価がされれば君を軽んじる人間が減り、今回のような事故は起きなくなるはずだ」


 そこまで言われると、断る理由は無かった。

 私は立ち上がる。そして、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


 一呼吸置く。


「これからも、この国のために力を貸します」


 顔を上げる。そして、笑顔で続けた。


「私は⋯⋯私たちは、このリーヴェ村で暮らします。そして、リーヴェ村から王国を守ります」


 窓の外を見ると、フィルが嬉しそうに枝葉を揺らしていた。


 さわさわ。


 ここが、私の帰る場所なんだ。


「もちろんだ」


 ガイアス殿下も笑った。


「君の帰る場所は、君が決めればいい」


 その言葉を聞いた瞬間。

 胸につかえていた最後のわだかまりが、ふっと消えていった。

次回は本日19時に投稿いたします。

1日に複数話投稿しますので、ご注意ください。


***


評価、ブックマーク、感想など励みになります。

モチベーションになりますので、よろしくお願いします。


また、作者Xにて更新通知を行っております。

新作の通知なども行いますので、ぜひフォローお願いします。

@MokaSufure

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ