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悪人面最強冒険者の美少女TSリスタート  作者: 藤咲理久


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第四話 ゴブリン達とゴブリン級冒険者

「おー! ちゃんとまだ薬草が群生しているね!」


 眼の前にはいろいろな種類の薬草が群生していた。

 ニ年ぶりに来たが、荒らされたりしてもいなくてありがたい。


「まだってことは、前にもここで薬草採取したことがあるの?」


「うん。ニ年前にねー。……ほら、冒険者ギルドのある街でステライリス様の神域に一番近いのはグラディアでしょ? だからステライリス様の試練を受けていた頃はよく来ていたの。ここはその頃に発見して、何度か薬草採取をしたんだ」


「へぇ……じゃあ、そのときにも薬草採取の依頼を受けたこともあるんだ」


「あ、依頼は受けてないよ」


 依頼書にある数種類の薬草を見繕いながら、ルナの予想を訂正する。


 えっと、こっちは葉っぱだけ採取するやつ、こっちは種を採るやつ……あ、こっちは根っこから土ごと掘り起こして、そのまま土ごと運ばないといけないやつだ。


「え? でもここに薬草を採りに来たことがあるのよね?」


「薬草採取って常設の依頼もあってね。そっちは依頼を受けなくても、納品物だけ届ければ達成にしてくれるの。今回は薬草不足で、常設とは別に報酬に色を付けた緊急の依頼があったって感じ。そっちの場合は受注が必要だから、今回はちゃんと受注手続きをしたの。……二年前のときは緊急依頼は出ていなかったんだけど……薬屋が困ってそうだったんだ。だから他の依頼の片手間で採取して、最後の報告時に一緒に処理してもらったわけ」


「ふーん」


 ふとルナを見ると、花に顔を近づけて、その香りを嗅いでいた。

 ああ、あの花は香りのいい花なんだよなぁ。香料になる。……魔力の濃い地域にしか生えないのが難点。


「ま、二年前に今回と同じ依頼があっても、たぶん常設として処理しただろうけどね」


「それはなんで?」


「いくら緊急って言っても、薬草採取をドラゴン級冒険者が受けたりしたら、変な勘ぐりをされかねないから。特に、その頃の私みたいな悪人面だとね。……別に、緊急じゃなくて常設で受けたとしても、薬草さえ届けられれば依頼主の困りごとは解消されるから。できるだけ波風を立てないためにも、そっちを選んだだろうと思う」


「そこで無視せずわざわざ気を回すあたり……なんというか、お人好しね」


 お人好しかぁ、初めて言われた。

 一応、以前からどういう人をお人好しって言うかは知っていたけれど……私はお人好し的な行動をしても、そう言われたことはなかった。きっと、裏があると思われていたんだろう。


 そんなことを考えている内に、必要な薬草の採取は終わった。

 後は帰って報告するだけだ。


「というか、こんな群生地があるなら、誰でも簡単に採取できるでしょうに」


 ルナが不思議そうに言う。

 それに私は笑って応えた。


「あはは、そう簡単じゃないよ。だってここ、バジリスクの縄張りだから。薬草採取なんて受けるような等級の人は近づかないよ」


「……なるほどね。……それなら、あんたもここに来るところを他人に見られないようにしなきゃね」


「もちろん、気をつけるよ」


 そう言って採取した薬草を背嚢に丁寧にしまい、荷物を纏めて薬草の群生地を後にした。


※※※


 そして、薬草の群生地、バジリスクの縄張りから帰る途中。


 私は戦いの気配を感じ取った。


「何か戦ってる。……んー、たぶんかなり弱め。……ゴブリンの集団と、新人冒険者って感じかな?」


「え? どこ?」


「あはは、目では見えないよ。えーっと……あっちに500メルトルぐらい先かな?」


 グラディアの門がある方向より、少しだけそれた方に指を差す。その先は森の中だ。

 その距離を聞いて、ルナは困惑した。


「……毎回思うけど、どうしてそんな距離でわかるのよ」


「なんとなく? 経験?」


 高ランク冒険者の依頼なんて、「ノーヒントで小さな希少種のトカゲを、森の中から三日以内に見つけ出す」みたいなものだってある。

 確かに私の気配察知能力は、常人では考えられないようなものかもしれない。だが、そのぐらい身に付けないとサイクロプス級以上の依頼をソロでこなすのは困難なのだ。


「んー……状況の詳細まではわからないけれど、気配の数が多そうなんだよなぁ。……ちょっと様子みるか。いざってときは助けよう」


「いいの? 助けにはいったらあんたの実力がバレるでしょ? あんた、実力は隠したいんじゃないの?」


 実力を隠す。それが私の今の方針だ。


「まぁそうだね。……高ランクになるとしがらみが増えるから、ランクは上げたくない。だから実力を隠す。その方針は変わってないよ。でも、ランクを上げたくないからって人を見捨てるようなことをするつもりもない。……まぁ、最悪の場合、正体を隠して助けることにするよ」


 冒険者ランクを上げるには、それに見合った戦闘能力が必須だ。その戦闘能力重視の方針は、冒険者ランクが対応する魔物の名称で表されていることからもわかるだろう。

 ゴブリン級は新人全員に付与されるので例外だが、他全ての等級はその等級に見合った戦闘能力が必須となる。つまり、コボルドに一対一で勝てると評価されなければ、他がどれだけ優秀でもコボルド級にはなれない。

 逆に言うと、仕事の内容でどれだけ評価されても、戦闘能力さえ低く見積もってもらえば、冒険者ランクは低く保てる。……戦闘能力さえ低く見せれば、他は全く手を抜かずに済む。

 そういうわけで、私は戦闘に関する実力を隠す方針なのだ。


「正体を隠すというと、あの仮面をつけるのね。……でも、あれのデビュー戦がゴブリン相手でいいの?」


 私はどうしても戦闘をしないといけないときに備え、正体を隠すための仮面を用意している。その仮面をつけて、装備の見た目や髪色を変えて戦うわけだ。正体不明のヒーロー活動みたいでちょっとそれを披露できるときを楽しみにしていたりする。

 ……だが当然、自分が納得いく場面になるかどうかよりも、人命の方が遥かに大事だ。


「人命が懸かってるときに、相手を選り好みしたりしないよ。……それに、介入する必要があるとも限らないしね」


 そう言いながら、私は仮面を準備し、気配のする方向に歩を進めた。


 森と言っても、別に歩くのが困難なほどの森ではない。すぐに目的地位に着いた。


「あらら、結構きつそうな状況ね? どうする? アシュリー」


 ルナが小声で訊いてくる。


 ルナの言う通り、状況はあまり芳しくなかった。


 冒険者の少年が五人。ゴブリンが十一体ほど。……一体死んでいるゴブリンが居るようだから、元は十二体いたのか。

 少年たちの実力は残念ながらゴブリン級相当しかない。……新人ながら一応戦闘の心得があるようだが、それでもコボルド級には達しない程度である。


 ゴブリン級というのは、ゴブリンに一対一で勝てる程度の強さとされる。

 が、新人の誰もがゴブリン級でスタートするため、実際にはゴブリンに勝てない子供もいる。

 今回の少年達は、正しくゴブリン級の実力があるようだ。……だが、それは一対一でなら勝てるというだけの話。倍以上の数を相手にするのは厳しい。……むしろ、よく一体倒せたものである。


 少年達の持つ武器は……剣、剣、剣、槍、棍棒&盾か。

 魔法が使われた気配はなし。少年達もゴブリン達も魔法は使えない。

 少年達には負傷者はいないものの、全員にかなりの疲れが見えるな。

 ゴブリン達はそんな少年達に対し、代わる代わる攻撃する素振りを見せては退くというのを繰り返している。フェイントだと思っていても、間合いを測りそこねて殴られるわけにはいかない。ずっとプレッシャーが掛かっている。……それに、ゴブリンの中には後ろから石を投げているやつもいるな。石に気を取られて殴られかけたりという場面もある。危なっかしい。

 ……正直、少年達にとってはやりづらいだろう。いっそ突っ込んでくれれば、反撃で敵の数を減らせるだろうに。

 ……ゴブリン達の動きも妙ではある。ゴブリンは普通、こんなに慎重に相手の体力を削るような戦い方はしない。それに、十二体なんて数での行動も普通はしないはず。普通はもっと少ない。

 ……ちょっと嫌な予感がするな。ただ、その予感についてはこの場では一旦考えなくてもいいだろう。影響があるとしたら今後だ。


 さて、悩みどころだ。

 正直、このままだと少年達はジリ貧だ。主導権をゴブリン達に握られた状態で、少しずつ体力と精神を削られている。いずれ致命的なミスを犯してもおかしくない。


 となると、私のやるべきことは……よし、決めた。

 私がか弱い新人冒険者だという印象を広めてもらおう。


「偶然通りがかったか弱い私が、偶然囮の役割を果たし、結果的に少年達が勝利する……みたいな方針でいくよ」


「なるほど? 私はなにか手伝う?」


「んーん、別にいいよ。私一人で問題ない」


 小声でルナとやり取りし、方針を固めた。

 後はタイミングと……演技力だな。私の。


 さ、新人冒険者アシュリーとして初めての戦闘だ。しっかりか弱さを演出しよう。

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