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Fランクダンジョンの平和な日常〜ダンジョンコアになって十数年いろんなことがありました〜  作者: 弌黑流人
【第一部】 第七章 ライバル出現と共生への道

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第69話 香水師ギルドの卑劣な罠

 エルフの使節団が去った後、迷宮のスタッフたちが次なるライバルの出現に気を引き締めていた矢先。最初の「攻撃」は、意外なところから、そして極めて卑劣な形で届けられた。


 舞台は、迷宮の外にある王都の直営ショップであった。ザックが手塩にかけて育て上げ、連日行列が絶えなかったその店に、突如として王都衛兵の一団が踏み込んだのだ。


 「営業を停止せよ! この店で売られている『安寧の滴』には、人体の精神を著しく損なう禁忌の薬物が混入されているとの疑いがある!」


 衛兵隊長の厳しい声が店内に響き渡る。並んでいた客たちは悲鳴を上げ、混乱の中で店は瞬く間に封鎖された。それは、伝統ある香水師ギルドの長、エドワードが裏で糸を引いた、巧妙な陥れであった。


 (フム。王都の方向から、負の感情が爆発的に流れ込んできているな。……ザック、状況を報告しろ。何が起きている?)


 俺はコアルームの深淵から、震える魔力の波長を捉え、即座にザックへ念話で問いかけた。


 「旦那、最悪です! 香水師ギルドの連中、とんでもねえ捏造をやりやがりました。うちの香水を吸った客が意識を失って倒れたって、偽の被害者まで用意してやがる。今、王都の店は衛兵に囲まれて、商品はすべて没収されちまいました……!」


 ザックの声は怒りで震えていた。商売人にとって、商品の信頼を汚されることは何よりも許しがたい侮辱だ。


 「落ち着け、ザック。……リナ、王都の店にいるスタッフの安全を確保しろ。手を出してはならないが、一方的に捕らえられることも許さん。テオは、実際に被害者が出たとされる場所の情報を集めるんだ」


 「了解よ、コア様。……あいつら、自分たちの香水が売れないからって、こんな汚い手を……。絶対に許さないわ」


 リナの念話には、静かだが鋭い殺意が混じっていた。


 その頃、王都の香水師ギルド本部では、エドワードが優雅にワイングラスを傾けていた。彼の前には、迷宮から没収されたばかりの香水の小瓶が並べられている。


 「ふん、チョロいものだ。どんなに優れた品であっても、一度『毒』という噂を流してしまえば、大衆は一気に手のひらを返す。……ギルド長、例の『成分分析書』の改ざんは完璧だろうな?」


 「はっ、エドワード殿。本部の鑑定官にはたっぷりと握らせてあります。迷宮特有の魔力反応を『精神を混濁させる毒性物質』として記録させました。これで、あの迷宮の香水は王国全土で販売禁止となるでしょう」


 エドワードは満足げに目を細めた。彼らにとって、真実がどうであるかは問題ではない。自分たちの既得権益を脅かす芽を、最も効率的に摘み取ることだけが正義なのだ。


 しかし、彼らは大きな計算違いをしていた。わが迷宮の主である俺が、ただの「ダンジョンコア」ではないということを。


 「アムネ、お前の力が必要だ。……敵が捏造したという『毒性』の正体を、お前の精霊視で暴き出せるか?」


 「うん、コア様。……見てきたよ。彼らが没収していった香水に、後から別の魔法薬を混ぜているのが見える。……すごく、嫌な色の魔力。これを私たちのせいにしようとするなんて、絶対に間違ってる!」


 アムネはコアルームの中で、怒りと悲しみで身体を淡く光らせていた。彼女にとって、自身が丹精込めて調合した香りを汚されることは、自分の魂を汚されるも同然だった。


 「いいだろう。……敵が卑劣な策謀で攻めてくるなら、こちらは『真実』を以て、奴らの権威を根底から腐らせてやろう。……ザック、これより反撃の準備に入る。王都の店が閉鎖されている間に、我々はさらなる『究極の証拠』を用意するのだ」


 俺は念話に揺るぎない確信を込めてスタッフたちに告げた。


 伝統という名の厚い壁に守られた老舗香水師たち。彼らは自分たちが安全な場所にいると信じ切っている。だが、俺の演算はすでに、彼らが積み上げてきた虚飾の城が崩れ落ちる瞬間を明確に予測していた。


 (フム。王都の連中、自分たちがどれほど恐ろしい存在を怒らせたか、まだ理解していないようだな。……徹底的にしのぎを削ると決めた以上、情けは無用だ)


 俺はコアを、警告を告げる鮮やかな紫と、静かな怒りを宿すエメラルド色の二色に激しく明滅させた。わが迷宮の誇りと、スタッフたちの努力を汚した代償は、高くつくことになるだろう。


 暗雲立ち込める王都の空の下で、火熱の迷宮による静かな、しかし苛烈な反撃の歯車が、ゆっくりと、確実に回り始めた。


 ご拝読ありがとうございます。いよいよ卑劣な手段に出てきましたね。よい商品と分かっているなら、せめて汚さず買収するくらいの気概がほしい。

 さて次回は、第70話『真実の香り、アムネの公開調香』をお送りいたします。いよいよ逆転の幕が上がります。それでは次回をお楽しみに!!

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