↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fランクダンジョンの平和な日常〜ダンジョンコアになって十数年いろんなことがありました〜  作者: 弌黑流人
【第一部】 第七章 ライバル出現と共生への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/140

第66話 王都の影、老舗香水師の会合。

 第7章 烈火の商戦・聖域の包囲網

 「敵対勢力が本気でこちらを潰しにくる、血の通わない商戦と権力争い」のはじまり。

 王都の一等地に居を構える、石造りの重厚な邸宅。その奥まった一室では、時代錯誤なほど豪華な装飾が施された円卓を囲み、数人の男たちが苦虫を噛み潰したような表情で沈黙していた。


 室内に漂うのは、何十種類もの高級香料が混ざり合った、頭痛を催すほどに濃厚で、それでいてどこか「古臭い」香りだ。


 「……それで、いつまであの『ドブネズミの香水』を放置しておくつもりだね? ギルド長殿」


 沈黙を破ったのは、円卓の上座に座る初老の男、ド・ラ・メール家の現当主、エドワードであった。彼は王国で三代続く由緒正しき香水師であり、その調合は王妃様すらも愛用するという、この業界の絶対的な支配者である。


 だが、その端正に整えられた指先は、苛立ちからか、テーブルのクロスを執拗に叩いていた。


 「エドワード殿、そうおっしゃられましても……。あちらは王女シルフィア様が後ろ盾となっております。下手に動けば、こちらが王室を侮辱したことになりかねません」


 香水師ギルドの長が、額の汗を拭いながら弁明する。しかし、その言葉がさらにエドワードの神経を逆撫でした。


 「ふん、王女殿下も所詮は小娘。魔物が吐き出した不浄な魔力水を、こともあろうに肌につけるなど……。我ら人間が、何百年もの歳月をかけて磨き上げてきた天然香料の芸術を、あんな得体の知れない『迷宮産』と一緒にされては堪らんのだよ。これはもはや、文化に対する冒涜だ」


 エドワードの瞳には、新興勢力に対する純然たる憎悪と、己の利権を脅かされることへの恐怖が混じり合っていた。彼らにとって、香水とは「高貴な者だけの特権」であり、それを「安らぎ」などという安っぽい言葉で大衆に売り捌くザックの商法は、到底許容できるものではなかった。


 「ですが、実際に王都の市場はあの『安寧の滴』に席巻されております。我がギルドの若手たちの中にも、あちらの製法を学ぼうとする不届き者が現れる始末で……」


 「ならば、叩き潰すまでだ。……幸い、あそこは『Aランク』に昇格したばかり。注目が集まっている今こそ、その評価をどん底に叩き落としてやればいい」


 エドワードは冷酷な笑みを浮かべ、傍らに控えていた秘書にある書簡を差し出した。


 そこには、迷宮産の香料が人体に悪影響を及ぼし、精神を混濁させるという、巧妙に捏造された実験データが記されていた。


 「魔物の魔力とは、本来人間を害するもの。それを抽出し、霧にして吸わせるなど、毒を撒き散らしているのと同じだ。……明日の朝には、ギルドの公式見解としてこれを発表させろ。あんなFランク上がりの成金迷宮、一瞬で廃墟にしてくれるわ」


 一方、その頃。火熱の迷宮の最深部、コアルームでは。


 (フム。王都の方向から、実に不快で淀んだ思念が逆流してきているな。……嫉妬、傲慢、そして根拠のない優越感。伝統という名の殻に閉じこもった者たちの、断末魔のような叫びか)


 俺はコアを、警告の色である鋭い紫に明滅させた。


 敵対勢力が動き出した。彼らは、俺たちが築き上げてきた「おもてなし」を、汚い策謀で塗り潰そうとしている。


 「テオ、リナ。……客の中に、不自然な動きをする者が混ざっていないか、さらに注意を払え。それからザック、王都の店に刺客が送られる可能性がある。防衛の準備を急げ」


 「了解しました、主様。嫌な予感がしていたんです。あの老舗連中、黙って引き下がるとは思えませんからね」


 「へっ、旦那。あいつら、俺たちがただの『幸運な店主』だと思っていやがる。……本物の迷宮の底力を、思い知らせてやりましょうや」


 平和だった迷宮の入り口に、冷たい秋の風が吹き抜ける。それは、これから始まる「情け容赦ない商戦」の幕開けを告げる合図であった。


 (来るなら来い。伝統を重んじるというのなら、その伝統ごと、わが迷宮の『ととのい』の深淵に沈めてやろう。……演算はすでに、奴らの敗北までの最短ルートを描き出しているのだからな)


 俺の意志は、深夜の迷宮の隅々にまで静謐な波紋となって染み渡り、大切な場所を守り抜くための迎撃体制を、音もなく整え始めていた。


 ご拝読ありがとうございます。敵対する勢力のやっかみシーンで、王族への発言は不敬罪にあたりますよね(汗)そんな精神だから迷宮産に取って代わられようとしているのでは?と気づけば救いがあるんですけどね……。

 さて次回、第67話。迅速なる「バフ」の衝撃、チェーン店『クイック・ブースト』上陸をお送りします。それでは次回をお楽しみ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。