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Fランクダンジョンの平和な日常〜ダンジョンコアになって十数年いろんなことがありました〜  作者: 弌黑流人
【第一部】 第五章 風評被害との対峙

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第54話 安寧の勝利と、新たな信頼。

 嵐は去った。

 風評被害という名の暗雲は、皮肉にも『火熱の迷宮』の揺るぎない「信頼」を、より鮮明に照らし出す結果となった。


 「迷宮管理局」の査察官たちは、報告書にこう記したという。


 ――『当該迷宮において、薬物や洗脳の事実は一切確認されず。あるのは、他では類を見ない徹底した衛生管理と、精神の回復を促す高度な環境設計である。むしろ王宮の保養施設の見本とすべきである』


 この公式発表により、バルトンたちが撒き散らした嘘の噂は、瞬く間に「嫉妬に狂った三流宿主の妄言」として霧散した。


 後日。

 迷宮の受付ロビーには、以前の威勢を失い、ボロ雑巾のように疲れ果てたバルトンの姿があった。

 彼は虚偽の告発による重い罰金を科せられ、運営していた宿も差し押さえの危機に瀕していた。


 「……頼む。ここで働かせてくれ。何でもする。……もう、あの地獄のような経営には戻れないんだ」


 (フム。人を陥れようとした結果、自分が『ととのい』の虜になってしまうとは。皮肉なものだな)


 俺はリナとザックに判断を任せた。


 リナは冷たく言い放つ。

 「うちのガイドになるには、心が濁りすぎているわ。不合格ね」


 だが、ザックはニヤリと笑った。

 「まあ、そんなに言うなら……ポリッシュ四人衆の『見習い』として、便所掃除のそのまた下から始めてもらいやしょうかね。あいつらの掃除は、指がちぎれるほど厳しいぜ?」


 こうして、かつての首謀者は、自らが破壊しようとした迷宮の「清潔さ」を底辺で支える労働者として、その人生を再スタートさせることになった。


 この騒動を経て、迷宮内の結束はさらに固まっていた。


 ガイドたちは、自分たちが提供する「おもてなし」が、嘘の噂を打ち破る武器になることを学んだ。そして魔物たちは、自分たちの仕事がお客様の笑顔に直結していることを、改めて誇りに感じていた。


 「カタカタ(床の輝きが、迷宮の真実を語ります)」


 ブライト・ポリッシュたちが、かつてないほど気合を入れて床を磨き上げる。


 地下では、キュイがイグニスの腹の上で、お祝いの「特製たまご(本物)」を満足そうに突っついていた。


 「キュイ! キュイーッ!」


 その温かな波動が、迷宮全体を包み込み、訪れる人々の心を再び「ととのえて」いく。


 (フム。ピンチをチャンスに変える。経営の基本だが、今回はお客様たちの自発的な行動に救われた。……これはもう、ただのダンジョンではなく、一つの『共同体』と言えるかもしれないな)


 俺は、クリスタルコアをこれまでにないほど澄み切った青色に輝かせた。


 固定客――いわゆる「常連」の力。それは数字以上の魔力(EXP)となって、俺の中に蓄積されている。


 今回の勝利により、国王からも「国定保養地」としての正式な招待状が届きつつあった。迷宮の知名度は、もはや一地方の噂のレベルを超え、国家規模の重要施設へと駆け上がろうとしている。


 (さて、平和な日常を守るための戦いは、これからも続く。だが、今の俺たちなら、どんな悪意も『最高のロウリュ』で蒸発させてしまえるだろう)


 俺は、賑わいを取り戻したロビーを見守りながら、次なる「安らぎの拡張計画」に向けて、静かに思考を巡らせ始めた。


 ご拝読ありがとうございます。ここまでで『風評被害編』は終わりとなります。短い内容の章でしたが次につなげるために必要でした。そう、「国定保養地」としての認定、そして広大な「第5層・深森のリゾートエリア」の開拓など、さらにワクワクする展開を考えいます!次が今年最後の締めくくり。新章スタートにて年の瀬をお迎えください。

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