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Fランクダンジョンの平和な日常〜ダンジョンコアになって十数年いろんなことがありました〜  作者: 弌黑流人
【第一部】 第四章 マグマ下の秘密と火竜の育成計画

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第47話 迷宮ガイドの初陣と、奥様方の熱烈な洗礼。

 リナ教官のスパルタ講習を潜り抜けた第一期『迷宮公認ガイド』たちに、ついに最大の試練が訪れた。


 それは、隣町の婦人会総勢五十名による「日帰り・ととのい体験ツアー」の受け入れである。


 これまでの観光客は、物珍しさに訪れる個人客や、礼儀正しい王都の官僚が主だった。しかし、今回の相手は「街の経済と噂話を牛耳る」と言っても過言ではない、パワフルな奥様方の集団である。


 (フム。彼女たちの満足度は、そのまま近隣諸国への口コミとなって広がる。ここが正念場だな)


 俺はコアルームのモニターを凝視し、各エリアの魔物たちに「夜間モード以上の厳戒態勢おもてなし」を指示した。


 「皆様、本日はようこそ『火熱の迷宮』へ! 私が本日ご案内する、公認ガイドのハンスです!」


 若きガイドのハンスが、ザックプロデュースの制服をびしっと着こなし、引き締まった笑顔で挨拶する。だが、相手は強敵だった。


 「あら、ハンスちゃんじゃない! 立派になって。ねえ、この迷宮って本当に肌がツヤツヤになるの?」

 「おばちゃん、膝が悪いのよ。階段は少ないって聞いたけど本当?」

 「あら見て、あそこの掃除してる子たち、動きがキビキビしてて素敵ねぇ!」


 ハンスの説明を遮るように、四方八方から飛んでくる質問と感嘆の嵐。ハンスはリナ教官の「どんな時も笑顔を絶やすな」という教えを胸に、必死に誘導を開始した。


 「はい、奥様! 美肌効果については、この先のサウナエリアで詳しくご説明しますからね! 足元は……あちらの清掃隊が完璧に整えておりますので、ご安心ください!」


 ガイドたちが表舞台で奮闘する裏で、王都へ派遣中のマスターポリッシュから迷宮の管理を任された四人の弟子たちが、一糸乱れぬ連携を見せていた。


 まず動いたのは、ブライト・ポリッシュだ。

 「カタカタ!(床に一点の曇りも残すな!)」


 彼が特殊なワックスで磨き上げた通路は、五十人の足跡を瞬時に消し去り、鏡のように奥様方の驚きの顔を映し出す。


 次に、コーナー・ポリッシュとエッジ・ポリッシュが壁際を走る。

 奥様方がふと触れるかもしれない手すりの裏、視線が届きにくい隅のホコリを、彼らは音もなく除去していく。


 「カタカタ(ここは指が触れる場所。エッジに微かなバリも許しません)」


 仕上げは、ミスト・ポリッシュだ。

 彼はアムネと連携し、空気中に微細な魔力の霧を散布する。


 「カタカタ(埃を沈め、アロマの香りを定着させます)」


 彼らが通り過ぎた後には、泥炭の汚れ一つ残らず、代わりに清涼な空気が漂う。奥様方が「あら、なんだか空気が美味しいわね」と呟くのは、彼らの影の努力の賜物であった。


 そして一行は、ツアーのメインイベントであるサウナエリアへと到着した。


 あれほど賑やかだった奥様方も、アムネが演出した「地下湖のせせらぎ」と、地熱による深い熱気に包まれると、自然と静かになっていった。


 サウナ室の窓から見える幻想的な光景。そして、熟練のガイドによる「セルフロウリュ」のデモンストレーション。

 

 「奥様方。これより、迷宮の息吹……蒸気の舞をお見せします」

 

 ハンスが恭しくアロマ水を石にかけると、心地よい音が響き、サウナ室全体を至福の熱気が満たした。


 「……はぁ……。なんだか、亭主の小言も、昨日の特売の争奪戦も、どうでもよくなっちゃったわ……」

 「極楽ねぇ……。ここ、毎週来てもいいかしら……」


 水風呂、そして外気浴。


 最後に提供されたのは、地下深くで冷やされた特製の果実水だ。リクライニングチェアに深く沈み込み、幻想的な発光植物を眺める彼女たちの顔には、一人の「癒やされた女性」としての柔らかな微笑みが浮かんでいた。


 (フム。五十名規模の団体客を、混乱なく満足させたか。ハンスたちガイドの成長、そしてブライトら四人衆の連携。わが迷宮の組織力は、当初の予想を超えて成熟しつつあるな)


 ツアーの最後、彼女たちはザックの店で「迷宮直送・美肌の素」を、飛ぶように買い込んでいった。


 「ハンスちゃん、次はお父さんも連れてくるわね!」

 

 見送りを終え、ハンスはその場にへなへなと座り込んだ。


 「リナ教官……奥様方のパワー、すごすぎます……」

 「でも、全員を笑顔で帰せたじゃない。合格よ」


 物陰から見守っていたリナが、珍しく優しく弟子の肩を叩く。


 (やれやれ。女性の口コミほど恐ろしく、かつ心強い武器はない。これでこの近隣の『安寧』は揺るぎないものになったな)


 俺は、彼女たちの満足感から生まれた、今までで最も「華やかで濃厚なEXP」をゆっくりと吸収した。わがダンジョンは、もはや街の生活に欠かせない最高の「憩いの場」となったのである。


 ご拝読ありがとうございます。見事、団体客を満足へと導きました。日帰り弾丸ツアー。宿泊してナイトサービス、保養地としてかなりレベルがあかったと思いますね。次は、第48話。宿泊施設の特別室に、正体を隠した「あの貴族」が訪れる……? それでは次回もお楽しみに!!

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