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Fランクダンジョンの平和な日常〜ダンジョンコアになって十数年いろんなことがありました〜  作者: 弌黑流人
【第一部】 第四章 マグマ下の秘密と火竜の育成計画

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第46話 北の勇猛者と、戦う意欲を奪う「ととのい」。

 「話にならんな。Fランクだと? そんな軟弱な場所に、我が国の貴重な予算を割く価値があるとは思えん」


 ダンジョンの入り口に、冷ややかな声が響いた。現れたのは、隣国から視察に訪れた高ランク冒険者のパーティ『鋼鉄の牙』。彼らは、隣町の男爵が「あそこは天国だ」と絶賛する噂を聞きつけ、鼻で笑いながらやってきたのだ。


 リーダーのガルドは、全身を傷だらけの重鎧で固めた、実戦至上主義の男である。


 「いらっしゃいませ! 視察のお客様ですね。本日担当するガイドのテオです!」


 リナの厳しい講習を卒業した新人ガイドのテオが、爽やかな笑顔で迎える。だが、ガルドはそれを無視して、腰の剣に手をかけた。


 「おい、小僧。魔物はどこだ? 罠はどうした? この迷宮は、死の香りがこれっぽっちもしないぞ」


 (フム。殺気立った客だな。だが、そんな棘だらけの心でうちの敷地を歩かれては、他のお客様の安寧が乱れる)


 俺はアムネに合図を送り、彼らのために「最高濃度のリラックス・トラップ」を発動させることにした。


 彼らがまず案内されたのは、マスターポリッシュが磨き上げた「クリスタル回廊」だった。


 「……なんだこの床は。俺の剣が映るほど磨かれている。罠か? 踏むと滑る仕掛けか!?」


 ガルドが警戒するが、ただただ足触りが良いだけだ。次に案内されたのは、アムネがハーブの香りを絶妙に調整した休憩スペース。そこで出されたのは、冷えた天然水と、焼き立ての『火竜のたまご焼き(風)』だった。


 「ふん、食い物で釣る気か。……モグッ……!? ……な、なんだこの濃厚な甘みは。戦いの疲れが、指先から溶けていくようだ……」


 屈強な男たちの顔が、一口ごとに緩んでいく。そして仕上げは、地下から響くキュイとイグニスの「トントン」という心地よい振動が伝わる、特設のサウナエリアだ。


 数時間後。


 そこには、重い鎧を脱ぎ捨て、真っ白なガウン姿で「ふわぁ……」と気の抜けた声を漏らすガルドたちの姿があった。


 「ガルドさん……俺、もう剣を握るのが馬鹿らしくなってきました……」

「ああ、俺もだ。あんなにピカピカに床を磨く連中マスターポリッシュがいる場所で、血を流すなんて無作法すぎる……」


 ガルドは、テオが手渡した「キンキンに冷えた牛乳」を飲み干し、空を仰いだ。


 「負けだ。Fランクだとか、ランクがどうとか、そんなことはどうでもいい。……ここは、人間が『人間』に戻れる場所だ」


 (フム。ようやく『ととのった』ようだな。剣を抜くよりも、サウナの桶を置く方が勇気がいることもある。それを理解したなら、お前たちも立派なリピーター候補だ)


 俺の元には、彼らから放出された「戦意の消滅」という、非常に重厚で高密度なEXPが流れ込んできた。

殺伐とした世界からやってくる者ほど、このダンジョンの「安寧」という罠には深くハマるのだ。


 視察団は、帰り際にザックから「自宅用サウナセット」と「キュイちゃんぬいぐるみ(限定黒色バージョン)」を大量に買い込み、骨抜きにされた状態で帰路についた。


 ご拝読ありがとうございます。どんな屈強な者も骨抜きにする、恐ろしいダンジョンだ。でも、Win-Winならいいよね。ただすごいのは、自宅用サウナセットを買わせて「やっぱりダンジョンの方がいい」って思わせる手法かな。ザックやるなぁ。と、感心しつつ、次は、第47話。「ダンジョン公認ガイドたちが、初めての大型団体客(街の婦人会)を案内するドタバタ劇と、裏でサポートする魔物たち」という、より賑やかな日常回をお楽しみに!!

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