第45話 迷宮ガイドの誕生と、リナ教官のスパルタ(?)講習。
観光客が激増し、宿泊施設まで満室となった『火熱の迷宮』では、ある深刻な問題が発生していた。
それは、「案内役の不足」だ。
一般市民や他国からの観光客は、冒険者のように「魔物の習性」や「迷宮の歩き方」を知らない。俺がいくら安全に調整しているとはいえ、彼らが迷子になったり、スライムの粘液で滑って転んだりするのを防ぐ「専門家」が必要になったのだ。
「【提案】――ダンジョンの安全とサービス維持のため、公認ガイドを育成・認定するシステムを構築する。」
俺の提案に、真っ先に賛同したのはバルカス爺さんだった。
「それはいい!引退した冒険者や、職を求める若者たちの新たな雇用にもなりますな」
こうして、俺のダンジョン独自の資格『迷宮公認ガイド』が創設された。その初代筆頭教官に任命されたのは、エージェントのリナである。
「いい!? あなたたちは単なる案内人じゃないの! お客様に『安寧』を届ける、ととのいの伝道師なのよ!」
迷宮の一角に設けられた講習場では、リナの鋭い声が響いていた。
受講生は、かつて俺にボコボコにされた(教育された)若手冒険者や、真面目さが取り柄の街の青年たちだ。
実技: 「襲ってこないアイスゼリーとの上手な記念撮影のさせ方」
知識: 「サウナにおける『ロウリュ』のベストなタイミングと作法」
危機管理: 「キュイちゃんがひょっこり現れた際の、観客のパニック抑制術」
リナは、俺とアムネが監修した分厚い『接客マニュアル』を手に、生徒たちを厳しく、しかし愛を持って鍛え上げていく。
「リナさん、怖ぇよ……」「でも、彼女の言う通りに動くと、お客様がみんな笑顔になるんだよな」
(フム。かつてダンジョンと言えば『魔物を間引いて素材を獲る』場所だったが、今や『ガイドを雇って経済を回す』場所になったか。面白いものだ)
ガイドたちの制服は、転売屋ザックがプロデュースした「清潔感のある特製ユニフォーム(ダンジョンロゴ入り)」。これがまた格好いいと評判になり、若者たちの間でガイドは「なりたい職業ナンバーワン」に急浮上した。
俺は、キビキビと働くガイド候補生たちを見守りながら、新たなEXPの流れを観測した。
「案内された満足感」と「働く喜び」。この二つが合わさったEXPは、非常に純度が高く、地下のキュイへの最高のご馳走となった。
(これで、俺が直接手を下さずとも、現場の安寧は維持される。組織化こそが、長期経営の鍵だな)
俺は、教官として忙しく走り回るリナに、労いの意味を込めて、アムネ経由で「特製ハーブティー」を差し入れさせた。
「あ、コア様、ありがとう!……って、ちょっとそこ! スライムの歩幅に合わせなさいって言ったでしょ!」
リナの怒号(情熱)が響く中、俺のダンジョンはまた一歩、完成された「観光都市」へと近づいていった。
ご拝読ありがとうございます。よい感じに組織化され、ダンジョン雇用が受け入れられていますね。素晴らしいぞー!鬼教官リナ…、新米だった冒険者の頃がはるか遠くに感じます(しみじみ)。それでは、次回第46話。「ガイドの活躍でさらに評判が広まり、ついに『隣国の視察団』がやってくる。しかしその正体は、かつてダンジョンを馬鹿にしていた鼻持ちならない高ランク冒険者で……?」という、少しスパイスの効いたお話をお送りいたします。お楽しみに!!




