第42話 リモートパレードと、領主様の敗北。
【ダンジョンコアよりお知らせ】
「【報告】――当ダンジョンの規模拡大に伴い、看板を掛け替えました。」
当初は冒険者の育成がメインでしたが、マスターポリッシュの活躍やキュイちゃんの人気により、今や立派な観光名所となりました。
新しいサブタイトルは『戦わない魔物と究極の「ととのい」。気づけば街一番の観光名所になっていました』です。
殺伐とした戦闘よりも、ゆったりとした「ととのい」の時間を。
新装開店(?)した本作を、これからもよろしくお願いいたします。
隣町のグラドス男爵からの「キュイちゃん出張依頼」。
本物の火竜の幼体を外に出すリスクは冒せないが、断りすぎて街の流通を止められるのも「安寧」に反する。
俺が出した答えは、「リモート出張」――すなわち、俺の視覚共有と幻影魔法を組み合わせた、最先端のエンターテインメントだった。
俺はザックに命じて、四方を魔力伝導率の高いクリスタルガラスで囲った、豪華な「移動式神輿」を作らせた。
「ザック。この箱の中に、俺が遠隔で幻影を投影する。見た目も、鳴き声も、熱も本物と同じだ。だが、中身は空だ。」
「なるほど! これなら誘拐される心配もねえし、キュイちゃんを移動させる手間もいらねえ。コア様、あんた天才だ!」
ザックは「本物のキュイちゃんは大変デリケートな精霊のため、この聖なる箱越しにしかお姿を拝見できません」という、いかにもらしい触れ込みを広めた。
収穫祭当日。隣町の目抜き通りには、一目「キュイちゃん」を見ようと、数千人の観衆が集まっていた。
豪華な神輿が通りかかると、箱の中で幻影のキュイが「キュイッ!」と愛らしく鳴き、小さな鼻から(無害な)煙を吹き出した。
「わあぁ! 本物だ! 可愛い!」
「見て、こっちを見て尻尾を振ったわ!」
幻影を操作しているのは、コアルームにいるアムネだ。彼女は地下でイグニスと遊んでいる本物のキュイの動きをリアルタイムでトレースし、神輿の中に投影していた。
隣町の子供たちは熱狂し、大人たちもその愛くるしさに顔を綻ばせる。
グラドス男爵も、最初は「たかがFランクダンジョンのトカゲごときが」と高を括っていたが、神輿から放たれる心地よい暖かさと、キュイの純粋な瞳(幻影)を間近で見て、一瞬で陥落した。
「……おお……。なんという、なんという神々しくも愛らしい……。心が、心が洗われるようだ……」
パレード終了後、グラドス男爵はバルカス爺さんの手を握りしめ、涙ながらに語った。
「バルカス殿、疑って申し訳なかった! 我が街の物流は今後も全面的に協力する。それどころか、我が街の街道を整備し、貴殿の街のダンジョンへ通いやすくしよう!」
男爵は、その日のうちに「キュイちゃんファンクラブ・隣町支部」を設立。さらに、自分の執務室に飾るための特大キュイちゃんぬいぐるみをザックに特注した(通常の十倍の価格だったが、男爵は喜んで支払った)。
(フム。「実体」を見せずとも、満足を与えることは可能。これぞ究極の安全経営だな)
俺の元には、隣町の住民たちからの膨大な「感謝EXP」と、男爵からの多額の寄付金が流れ込んできた。一方、地下では本物のキュイが、自分の幻影が外で大騒ぎになっていることなど知らず、イグニスの背中をベッド代わりにして、ぐっすりと昼寝をしていた。
「【報告】 ―― 隣町との友好関係が『同盟』レベルに上昇。観光客の増加予測、前月比 200%。火竜の幼体への給餌用 EXP、十分に確保完了。」
俺は満足感に浸りながら、次のサービスの構想を練り始めた。
ご拝読ありがとうございます。リモートホログラム、映像技術が発展していない世界では、立体映像が本物に見えるでしょうね。大成功でよかった。これを期に『マスコットブーム』が各地で流行ったするかもしれないですね。それでは次回もお楽しみに!!




