第33話 猛者たちの決起と、セリカの反撃命令。
王族の避難誘導が終わり、王国守備隊から「マグマの膨張は収まり、地殻変動の危険は一時的に去った」という報告が高台の避難所に伝えられた。
人々は安堵したが、その直後、高台から三方向から押し寄せてくる、おびただしい数の強力なモンスターの群れをその目で確認した。
「あれは……Aランク級の魔物だ!しかも、三箇所から同時に!」
その光景を見た瞬間、一人の老人が叫んだ。
「俺たちの街は俺たちの力で守るんだ!」
その声に呼応し、避難所にいた多くの住民が動き出した。彼らは、見た目こそ穏やかな街の住人だったが、その実態は、かつて冒険者として名を馳せた経験豊富な猛者たちだった。彼らは、Fランクダンジョン『火熱の迷宮』のサウナやアイテムの恩恵を受け続けた結果、老いてなお全盛期に近い状態を維持していたのだ。
「フン、久しぶりに暴れてやるか。」「ちょうど体がなまってると思ったところだ!」「今日こそコアの世話になった分を返すときだな。」「息子を連れて街を出たが、家まで壊させるわけにはいかない!行くぞ!」
彼らは、避難所を出て、守るべき故郷へと、熱い闘志を胸に戻っていった(非戦闘員や子供たちは引き続き結界を貼った高台で避難。王族の子どもたちの命令で残った守備隊が守りを固める)。
その頃、エージェントとなったリナは、所属するクラン【ととのいの鐘】のリーダー、セリカに事態の詳細を報告していた。セリカは、リナがかつて新人教練で教えを受けた女性冒険者で、コアのダンジョンでの経験を経て、「危険を犯さず、心身を健康に保ちながらFランクダンジョンを満喫する」という奇妙な志を掲げ、その動詞達でクランを結成したSランク冒険者だ。
「リナ、地脈干渉が、黒曜石のコアの自滅で終わったのに、今度は三連モンスターパレード……卑劣にもほどがあるわね!」セリカは怒りを滲ませた。
「リーダー、このままでは、街の皆さんが……コア様も、防御 EXP が尽きると……」リナは焦燥した。
セリカは、その優秀な頭脳で即座に現状を分析した。
「いいえ、違うわ、リナ。このモンスターパレードを街で沈めても、また次の波が来る。根本の原因は、魔物を生成しているAランクダンジョンコアが生きていることよ。」
彼女は、クランメンバーを前に、きっぱりと言い放った。
「コア様が、私たちに最高の『ととのい』と安全な稼ぎ場を与えてくれた。私たち【ととのいの鐘】の目的は、その平和な聖域を満喫すること。その平和を脅かす者は、容赦なく排除する!」
セリカは、クランメンバーに作戦を指示した。
「目標は、『鉄の心臓』『砂塵の塔』『氷の要塞』の三箇所のAランクダンジョンコアの破壊!リナ、あなたも行くわよ!」
クラン【ととのいの鐘】の精鋭たちは、各ダンジョンの特質に対応できる専門家(熱耐性、幻影対策、氷結対策など)を3班に分け、即座に出発した。彼らの背後には、Fランクダンジョンへの恩義と、「また平和なサウナを楽しむために」という強い意志があった。
一方、Fランクダンジョンの外では、避難を終えた街の猛者たちが、襲来するモンスター群を迎撃すべく、武器を構えていた。彼らの傍らには、転売屋ザックの姿があった。
「フン、馬鹿な奴らだ。Fランクダンジョンがなくなれば、俺の商売も終わりなんだよ。ただで武器を貸すなんて、金にならねえ!……だが、これが未来の顧客への投資だと思えばやる気もでらぁってな。」
ザックは、裏で集めた高品質の武器や回復アイテムを、無償で街の猛者たちに配り始めていた。これは、彼の落ちた評判を回復させるため、そして何よりも彼のビジネスを守るための、計算された後方支援だった。
コアの平和への執着が、ついに多くの協力者たちの「自己利益と恩義」という形で、大きなうねりとなって動き出したのだ。
ご拝読ありがとうございます。さぁさぁさぁ!盛り上がってきましたよ!さすがは元冒険者の皆さん、気合が違いますね。そして、3カ所同時Aランクダンジョン踏破という、こちらも前代未聞の展開!安寧の場所を守るために戦う。はたしてうまくいくのか?それでは次回もお楽しみに!!




