第26話 王の疑惑と、スパイを仕留める「サービス」。
王と王妃、そして厳重な捜索隊に囲まれたコアの部屋。浮遊するクリスタルコアから放たれた「あんたらの軍隊の中に、殺意を隠し持った毒が混ざっているぞ」という言葉は、その場を一瞬で静寂に包んだ。
王は、冷静な表情を崩さなかったが、その視線は捜索隊全体を鋭く見渡していた。
「ダンジョンコアよ。冗談はやめろ。貴様が我が国の王族を匿っているのではないか?」
「匿っている? 冗談じゃない。俺のダンジョンは、傷ついた客を『治療した』だけだ。そして、治療後の客を、再び殺し合いの場に戻すほど、俺の平和は脆弱ではない。」
俺は、王に対して、このダンジョンが持つ「絶対的な安寧の提供者」としての地位を主張した。
王妃はクリスタルコアに向かって、「どうか、あの子たちに会わせてください!」と涙ながらに懇願した。
「コアよ。貴様の言葉を信用できない。なぜ、子供たちを保護したとすぐに連絡しなかった? 貴様は、我々を脅すつもりか?」王は、俺が叔父と結託している可能性を探っている。
(チッ。連絡を忘れていたなど、口が裂けても言えん。理屈で押し通すしかない)
クリスタルコアは、王の目の前で、数センチメートルまで浮遊して接近した。
「国王。俺のダンジョンの最優先事項は『平和の維持』だ。あんたらの政治的な駆け引きではない。連絡しなかったのは、あんたらの王都の情報網が、叔父の『毒』に蝕まれているからだ。連絡すれば、子供たちの居場所を、あんたらの手で叔父に教えていたんだ。」
コアの理屈は完璧だった。王は反論できず、軍隊の中にスパイが潜んでいるという核心的な情報に、静かに思考を巡らせた。
王が周囲の軍隊に目を向けるわずかな隙を突いて、俺はスパイの魔力反応が、王妃の背後で最も警戒心が薄くなっていることを確認した。
(チャンスだ。軍隊を刺激せず、スパイだけを排除する。俺の非殺傷ルールを貫きつつ、効果的に無力化するサービスがある)
俺は、王と王妃に、ぶっきらぼうに提案した。
「しかたない。不本意だが、あんたらの身内がいるという証拠を提示しよう。だがその前に、俺のダンジョンが、貴様らの軍隊に『最高級のデトックスサービス』を提供したいと言っている。全員、サウナエリアで『心の毒』を洗い流すべきだ。」
王は警戒した。しかし、王妃の「子供たちが無事なら、何でも」という懇願と、コアの自信に満ちた態度に、王は渋々同意した。
「よかろう。だが、この場で異常があれば、貴様を、コアを破壊するぞ。」
「フン。心配は無用だ。」
王の許可を得た軍隊は、武装解除し、デトックス・サウナエリアへと誘導された。スパイも、王の命令に従い、サウナ室に入場した。彼は「ここで毒を使う」という命令を受けていたが、武装を解除した以上、行動は制限される。
俺は、精霊アムネと、熱波ゴブリンに指示を出した。
(アムネ。スパイの『殺意の澱み』を浄化しろ。ゴブリン。スパイに向けて、通常の3倍の熱波を、3回連続で叩き込め)
極限まで熱されたスパイが、汗と共に毒を排出し、精霊アムネの魔力に晒されると、彼の「殺意」が急激に揺らいだ。彼は武器を失い、精神まで浄化されるという、最も屈辱的な方法で無力化されたのだ。
スパイがサウナ室で熱中症のように倒れたのを確認した俺は、王に報告した。
「国王。あんたらの『毒』は、俺のダンジョンで完全に排出された。安寧は確保された。さあ、クリスタルコアの裏に来い。あんたらの子供たちと会わせてやる。」
俺は、王と王妃をクリスタルの裏の管理区域へと導き、彼らの目の前でカモフラージュ魔力を解除した。
ご拝読ありがとうございます。出ました!必殺!精神洗浄!これ、ほんとに怖いですね(汗)。とはいえ、危険を排除できたので良かった。あとは、王族間の問題なので、そちらで上手くやってほしいものです。しかし、物語の主役を外に話が解決するのは…、ウ~ン、その叔父をダンジョンに誘い込めば、あるいは…。ふふふ、考えるのが楽しくなってきたところで、次回も、乞うご期待!!




