魔境の復讐 19
「「ねぇ、明君、此処が、気持ち良いの?」」
俺は、結局の所、健闘空しく彼女達に捕まっていた。
手足を縛られ、身動きはとれず、上半身は半裸にされ、今は、ズボンのベルトを外されようとしている所だ。
「「でも? 割とあっさり捕まったわね。本当は、期待してるの? うふふ」」
当然、期待などしていない。しかし、俺の予定よりも、救援が遅かったのだ。
男子生徒の援軍が来ない所を見ると、岳が奴等の相手をしていると考えて良いだろう。
単純な戦力であれば、人間相手であれば、岳は、俺などよりも余程強い。
時間が掛かっていると言うことは、玲子に何かあったに違いない。
俺は、軽い焦燥感に襲われるが、人の事を心配している場合では無さそうだ。
このまま、彼女達の好きにさせてしまっては、非常に危険なのだ。彼女が。
「おい、悪いことは言わない。そろそろ、止めておけ。危険だぞ」
「「危険? この状態で? 我慢が出来無くなるって事?」」
「良いから、それ以上は止めろ! 出てしまう」
「「ああ、そういう事ね。我慢なんてしなくて良いのよ。あははは」」
そういう事では無いのだ。しかし、そんな事を考えても、最早、遅かった。
俺は、出してしまったのだ。叔父が封じてくれた、あの、厄介な者を。
俺の股間の辺りの床から、そいつは、にゅっと、現れた。
床から顔だけを出し、綾香を睨みつける。
「おい! そこの小娘。わっちの愛人に、手を出すとは、どういうつもりじゃ?」
「「え? 何!」」
綾香達は、驚き、咄嗟に跳び下がる。
普通に考えて、床から女性の顔が出てくるだけでも、かなりのホラーではあるが、彼女達はそれだけで威圧感を感じている筈だ。
床から現れた彼女は、識鬼である。新島家で代々、長男に引き継がれて来た識鬼神。
彼女の名前は、愛姫。もっと分かりやすく言うならば、橋姫である。
その見た目は、綺麗な着物を身に纏った可憐な少女でしかないが、彼女は、そんな可愛いものではない。
伝説に名前を残す、もっとも残虐で、もっとも嫉妬深い女。
並外れた霊力で、自らの身体を鬼に変えた、稀代の呪術師。
数多の英雄が立ち向かうも、誰一人して討伐を果たせなかった怪物。
それが、愛姫だ。
「「小娘ですって、貴方の方が、小さいじゃない。色々と、ね」」
綾香達は、一度は怯んだが、どうやら、今は余裕を取り戻したらしくい。
「わっちが、主より小さいだと? 馬鹿な事を、数多の男を魅了した。この......」
愛姫は、言いながらサイズの合わない着物を見て、動きを止める。
そして、着物を脱ぎ、自らの身体を見て絶句する。
そして、暫くの沈黙の後に叫びだした。
「ど、どうしてじゃ~! わっちの、魅惑のナイスバディが、大変な事になっておる~」
「そんなことより、取り敢えず、これを何とかして貰えないか?」
「そんな事! お前様は、妻の身体がこんなので良いのか! もしや、そう言う趣味なのか?」
愛姫は、叫びながら、俺にまとわり付いた、綾香の鞭を容易く引き裂く。
「力も、随分と弱くなっているようじゃな」
「お前は、元々が強すぎるんだよ」
「どうしてこうなった? さては、あの小僧の仕業だな。知らんうちに旦那が成長してるしな」
愛姫は、着物を羽織りなおす。すると、その着物のサイズは、彼女に合った物になる。
「まぁ、よいか。人の夫に手を出す小娘には。お仕置きをしてやらんとな」




