八話 竜について
「サウザンド、何でお前は竜に会いたいんだ?」
再びエドワードに執務室に呼び出され、その質問を受けた。
「いや、他の俺以外の竜に会ってみたいと思ってさ。」
俺がそう言うと、彼はより一層よくわからないという感じで首を傾げる。
可笑しな事言ったか?
「いや、お前は人間になれるのだから、人との子も作れる筈だ。何故そこまで竜に固執する?」
「いや、人間と竜じゃ多分合わないだろ?」
「お前ほど人間臭い竜は居ないぞ…」
そう言いながらも、エドワードは机の上に本らしき物を置いた。
なになに…魔物の生態?
「竜と言っても様々な種類が居る。先ず真龍、祖龍の純粋な子孫である極めてドラゴンに近い竜達だ。次に魔竜、ドラゴンとは違うが同じ竜目に分類される、強力な奴らだ。
後は偽竜、人間などが魔法などの手段で人為的に作り出した偽物の竜達だ。お前は…多分魔竜だ、ワイバーン自体が魔竜に分類されるからな。」
お、おう…。
なんか面倒臭い説明が始まったな。
「詳しい事はこの本を見ろ、俺はそれ以上はさっぱりわからんからな…何が言いたいかと言うと、海竜達は確かに竜だが、お前はワイバーンだ、種族が違う。白人と黒人なら子供は出来るが、海竜とワイバーンで子供が出来るかどうかは分からんぞ。
それに海竜も細かく分ければ様々な種類が居る。それでも、お前は…海竜に会いに行くのか?」
…あー、何だそんな事か。
「別に会っていきなりズッコンバッコンする訳じゃないですから、そんな事考える必要は無いっすよ。」
「そ、そうか…」
いやいや、何でまた寂しそうな顔をしやがった。
別にどうだって良いだろ、そんな事。
「なら話は早い。お前は竜を引きずり出してまで会おうとは思わなのだろう?
ならお前が竜に会うには、お前が深海まで潜る事になる。だが、幾らお前が竜でもワイバーン、空に生きる竜だ。お前は水中では呼吸出来ない。」
「スキューバダイビングでもすんのか?」
流石に何言ってんのか理解出来てないな。
当たり前だ、此処は異世界。しかも文明レベルは良くて近世、悪くて中世半ばくらいのレベルだ、ダイビングスーツなんてある訳が無い。
「まぁ、深海に潜るには人魚の力が要る。エーテ海から離れた先にミル海という海域がある、そこで人魚は出没する。彼らなら水中でも呼吸する術を持っているから、彼らからその術を学べ。
ミル海へ出航する船を明日までに用意しておくから、準備してくれ。」
「いやいや、別に俺は竜になったら空飛べるから、わざわざ船なんて用意しなくても…」
「…お前、竜の姿で人魚達に会おうとしてみろ。逃げられるだけだぞ。」
あ…。
セイレーン達の事が思い浮かんだ。
そうだよな、竜みたいなヤバい奴が飛んできたら、そら逃げるわな。
「それに、お前には恩を返さなければならないしな、それくらい大した事じゃ無い。港にアネッタって奴が居ると思うから、彼女について行ってくれ。」
「わざわざありがとな。」
とことん運が良いな俺。
わざわざ船出してくれる事なんてそうそう無いぞ。
「あと…コイツを持っていけ。」
エドワードはそう言って、鉄製のカードらしき物を渡してきた。何だこれ?
《サウザンド ランクD
称号:オーク残滅者》
…と書いてある。
「それはギルドカードだ、俺が裏で作っておいた。何かあった時に使えるだろうから、困った時はソイツを使ってくれ。」
「あ、ありがとな。」
…ギルドカードって、本人の意思無しで勝手に作って良いの?
…ああ、そういう事か。
海賊だからそこんところはどうだっていいのね。
その後、色んな奴から話を聞いたが、なんか大して竜に関する情報は入手出来なかった。
まぁ、竜を避けて生活してきたらそうなるわ。
それに普段は深海に居るんだから、会ったことある奴なんてそう居ないだろうし。
そんなこんなで次の日になった。
港に行くと、確かに…あの中性的な海賊が居た。
「…アネッタ、さん?」
「あぁ、来たのか。」
コイツやっぱ女だったんかい!
ま、海域は男じゃないとダメっていう戒律とかあったんだっけ…。
そりゃ男装するわな。
「君、本当にあのミル海に向かうのかい? 彼処は魔境と言われてるくらいだから…って、君はあの竜なんだっけ。それなら大丈夫か。」
「お、おう…。」
やっぱ今声聞くとどう考えても女だ。
なんか男にしては声のトーン高いと思ってたんだけどなぁ…。
「ほら、乗りなよ。君が乗ったらすぐ出航出来るからさ。」
「準備早いな…」
言われた通りさっさと俺は船に乗り込んだ。
おい、結構でかいぞこの船。
「みんな出航だ! 帆を広げて風を受け止めろ!」
「「「オウ!」」」
海賊乗組員達が巨大な帆を広げると、船はどんどんと速度を上げて前に進んでいく。
なかなか迫力のある光景だ。
よくよく考えたら、ファンタジー系の作品って、盗賊は敵なのに海賊は味方のゲームとかよくあったな。
海賊が主人公のゲームとか幾つあった?
どうでもいいか。
船が出航して暫く経った頃。
特に何事も無く船は進んで行った。
道中で飛び交う飛魚達とか、鴎とかが居て、景観は良かったな。
やっぱ海が綺麗だ、ホント地球の海がどれほど汚れてるのかが良くわかる。
道中でセイレーン達が自分達から船に乗って来た時は滅茶苦茶ビックリしたって。
ホント、なんか向こうから青い鳥が飛んでくるなーとか思ってたら、突然降りてきたんだから。
ただ、この世界のセイレーン達は友好的らしく、魚を一匹やったら喜んで帰ってった。
餌を貰いに来ただけかと思ったら、一人のセイレーンが上目遣いで俺を見つめてきて、撫でてやったら嬉しそうな顔してたな。
アレは萌えた。
…どうでもいいか。
「着いたぞ、此処がミル海だ。」
着いたらしい。
見てみると、他の海より岩が多くある気がするな。
「ここの岩にメロウ達がよく居座ってる…ほら、そこ」
指を指した方を見ると、確かに居た。
下半身が魚で、会の胸当てに赤い髪、帽子を被った人魚が。
…取り敢えず話しかけてみるか。




