第十一話 魔海竜シーサーペント
「シャッ!」
『早く寄越せ!』
…コイツが何言ってんのか分かる理由は、多分同じ竜種だからだろうな。
何となく言ってる事が分かるわ。
『…お前性別オスか?』
『へ? 見りゃわかるっしょ?』
お、話しかけたら意思疎通も出来るな。
にしてもコイツ、見ず知らずの竜にいきなり話しかけるとか度胸あんな。
『よし、女の子連れてきたら渡してやるよ。出来れば俺と同じくらいの、10歳くらいのヤツ』
『女連れてくりゃいいんだな? それくらいラクショー! 今読んでくるから、間違ってもソイツ食うんじゃねぇぞ?』
そう言うとこのシーサーペントは反転し、一気に加速して向こう側にまで泳いで行ってしまった。
『これで久々にクラーケン食えるぜ、イヤッホウ!』
…アイツそんなにこのイカが食いたかったの?
不味いかもしれないのに?
いや、久々にって言ってたから食った事はあるんだろう、じゃあコイツ美味いのか?
おっと、下手に食って美味しかったら全部食っちまうかもしれない。
アイツが来るまではとっとくか。
にしても、よくアイツ簡単に俺の言う事聞いたよな、アイツがどっか行ってるウチに全部食べちまってる可能性だってあるのに。
ま、俺はそんなゲスい事はしないけど。
なんせこれから可愛い竜の女の子ちゃんが来るかもしれないしな。
…あれ?
アイツに女の子連れに行かせた時点で俺ってゲスい気がする。
ま、気にしない気にしない。
『ぜ、ぜぇ…つ、連れてきたぜ…』
30分くらい待ってようやくシーサーペントが帰ってきた。
何でそんな全身ボロボロなの?
すっごい気になるんですけど。
『約束のクラーケンは…おぉ、あるじゃん。おーい、みんなコッチだー!』
そう言ってこのシーサーペントがギシャアっと叫ぶと、後ろから…え?
なんかざっと50匹以上はいませんかコレ?
ゾロゾロとシーサーペントがやってきてるんですけど、どうなってんの?
『おい、どういう事だコレ…』
『ん? 俺の知り合い全員連れて来た!』
バッキャロオオオ!!!
女の子を連れてこいっつったろォォォ!?
誰が知り合い全員連れて来いなんて言った!?
『お前、黒いのがクラーケンを倒したとか言っていたが…ソイツがやったんだな?』
『そうだぜじっちゃん! 久しぶりにクラーケンが食えるよ!』
ちょ、じっちゃんっつった今!?
竜って長生きなヤツほど強いんじゃなかった!?
しかもコイツ、他の奴より体が桁違いに長いな…しかもこの距離で異常なくらいの威圧を感じる。
やべぇ、コイツは絶対敵にするなって第六感が伝えてくる…!
『…ほう、見た所お前は地上に居た竜のようだな。その焼け焦げたクラーケン…成る程な、何らかの力でソイツを焼き殺したという事か』
なんかブツブツ言ってるよこの海竜。
さっきより威圧感が強くなってるし…
『クラーケンを討つ程の実力を持った飛竜か…面白い! お前と少し遊んでやる事にしよう!』
奴は長い尻尾を靡かせて、甲高く咆哮を上げた。
余りの音量に、海水がブルブル振動してるんですけど…俺、詰んだ?
『我はサルゴン、魔海竜の頂点に立つ竜! 貴様が我々の娘達と釣り合うかどうか、試させて貰うわッ!!!』
あのシーサーペント、コイツに俺の事言いやがったな!?
始めっから戦う積りだったんかいこの海竜!
ちょ、やべぇ、逃げようかな。
『キャーキャー!』
『がんばれー!』
いや、雌海竜達が応援してくれてるから頑張るか!
…一瞬お前を応援してる訳じゃねぇって声が聞こえた気がしたが、気のせいだろうな。
『では行くぞ!』
奴がそう言った途端、突然背ビレが虹色に輝いきだした。
…そういや、シーサーペントってリュウグウノツカイが元ネタって説もあったっけ。
…って、おい!?
なんか奴が三体に見えるんだけど!?
「「「ギシャアアアアァァァァァァッ!」」」
…クソッ、あの背ビレの発光は幻影を見せる効果があるのか!
どれが本物だ!?
…あ、一体だけ背ビレが光ってる奴がいる。
アイツが本体か!
「ゴガアッ!!!」
俺は口から重油ブレスを吐き、サルゴンの元に届いた辺りで速攻火を付けた。
水の中でも一気に油に火が渡り、メラメラと激しく燃えている。
さらにその炎は海流によりどんどん広がっていき…
え、海流?
『残念だな、ソイツは偽物だ』
罠でしたかッ!
ですよね、普通自分から本体バラす様な事しないよね!
もう俺の周りをシーサーペントの長い胴体が包囲している。
ちょ、これヤバイんじゃ…
「ギシャアッ!」
二体のシーサーペントの口から紫色をした霧が吐き出された。
あれは間違い無く触れると毒状態になる、良くある攻撃だろうな。
翼で無理矢理毒霧を跳ね返してやった。
けど、毒霧が晴れて綺麗な水が見える様になった時だ。奴は5匹に増えていて、全員口元が水色に光っていたのだ。
ヤバい、アイツの竜ブレスが来る…!
「「「ギシャアアアアッ!!!」」」
五体の口から一斉に大量の水が吐き出される。
余りに強力過ぎてビームに見えるくらいだ。
なんとか無理矢理旋回してブレスを掻い潜って、掻い潜って…避け切った頃には、もう目の前が奴の胴体で埋まっていた。
…クソ、あのブレスも全部幻影だったか!
それに気を取られてる隙に俺を囲んで絞め殺す積りだったか!
もう奴の胴体は俺の鼻先まで近づいてきている、このままだと単に絞め殺されてお終いだ。
…甘いな。
俺はその場でデタラメに暴れた。
『何ッ!?』
俺の鱗と奴の胴体がこすれ合うと、一瞬にして奴の胴体から赤い血が吹き出している。
俺の鱗に切れないものなど、あんまり無いんだよ。
『クソッ』
奴は一言そう言って一度離れると、今度は10体に増えやがった…!
まだやんのかよ…!
奴はまた口元から水流ブレスを吐く積りだ、何れが本体だ?
『…終わりだ』
突然奴がそう言うと、再び一体に戻って、突然背ビレの輝きが無くなった。
終わった?
『プハァ、美味かった!』
他のシーサーペント達の様子を見たら、もう既にクラーケンを食い尽くした所だった。
そんな美味かったのかソイツ?
『中々楽しかったぞ。俺と彼処まで太刀打ち出来た幼竜はお前が初めてだ。』
『は、はぁ…』
じゃあ他のシーサーペント達はあの水流ブレス一発で撃沈してたって事?
何それ怖い。




