第十話 海底の魔
…ん?
此処どこだ?
目の前にぼうしを被った人魚の顔が…
って、あん時の人魚?
「あ、起きたよシレナちゃん!」
「し、心配したよ〜!」
…横にあのセイレーンが居る。
お前ら知り合いだったんかい。
「ねぇ、城から突然光線が出てきたから焦って吹っ飛ばされたアンタを追ったんだけど、何があったの!?」
「ちょっとメアリアちゃん、怪我人にいきなりそれは…」
「いや、心配しなくて良い。実はな…」
俺は今まで起こった事をざっと話した。
いきなり女王の元に連れてこられて、水中呼吸の力を貰えたけど吹き飛ばされて国から追放された事とかな。
「…お疲れ。なんか色々ゴメンね、まさかいきなり兵士に捕まるなんて思っても無かったの。確かに女王様が変わったばかりでいろいろピリピリしてたんだけど…」
「あのデカブツ人魚はいきなり私達の国を襲って、前の女王様を殺して国を乗っ取ったの! 姫様は行方不明だし、いろいろ大変なのぉ…」
うわぁ、なんでそんな独裁支配されたばっかの国に連れてかれたんだ俺は。
そんな事は先言っといてくれよ…
「ねぇ、なんでアンタは水中で呼吸出来る力なんて欲しがったわけ?あんなの、人魚達の国に行けば簡単に手に入ったんだけど…」
…あ。
そうだ、コイツら俺がワイバーンって事伝えて無かったな。
仕方無い、本当の事を話すか。
「実はな、俺はワイバーンなんだ」
俺がそう言うと、二人は口を開けて唖然としている、絶対何言ってんだコイツってなってんだろうな。
「いやぁ、その…」
俺は本来のワイバーンの姿を想像する。
すると両腕から翼が生え、黒いローブが破れ皮膚に溶け込み、皮膚から黒いガラス質の鱗が生え、尾が生え、体付きがワイバーンの姿へと変化していく。
…よし、久しぶりに元に戻ったな。
「こう言う事なんだ」
変身を終え彼女達にそう告げた、その途端…
「「キィエアアアアアアアアアアアアアアアアアアシャベッタアアアアアアアアアアアアア!!?」」
と、大声を上げて抱き合ってブルブル震え出した。
…お前ら、反応が酷い。
「そういう訳で、俺はこの海にいる竜達に会う為に水中呼吸の力が欲しかったんだ」
「は!? ワイバーンがなんで海竜に会いに行くの!? 海竜とワイバーンじゃ種族全く違うじゃん!!!」
「ちょ、メアリアちゃん…」
同じ事を海賊達にも言われたな。
ま、竜ってのは同じだから何とかなると思うんだよな。
「ま、そういう事で。聞きたい事が有るんだけど、竜についてなんか教えてくんね?」
俺がそう尋ねると、二人は呆れた様子を見せながらも、面倒そうに口を開けた。
「竜なんてこの海の底を泳ぎ回ったら嫌になるくらい居るよ。シードランにシーフライア、メガロドンにシーサーペント…他にも色々。」
「リヴァイアサンとかティアマトとかも居るよ!」
…おい、海賊達から聞いてない奴が何体も出てきたぞ。やっぱ大半の人々は竜にそんな詳しく無いのだろうか。
まぁいいや。
「…まぁ、ありがとな。そんじゃ俺はもう此処に用は無いから、行ってくるわ」
そう言って俺は背を向け、真っ直ぐ道を進んで行った。
「死ぬんじゃないわよ!」
「頑張ってね〜!」
…取り敢えず俺は尻尾を振って返事を返した。
海の底をゆーらゆーらと、魚が泳ぐ様に進んでいく。
表現おかしいなコレ。
にしても、本当に水中で息が出来るし、水圧も全くと言っていいほど感じられない。
魔法の力ってスゲー。
暫く進むと、さっきまで岩肌しか見えなかった海の底に珊瑚がチラホラと見え始めた。
ん?
深海に珊瑚礁ってあんの?
いやいや、いくらファンタジー世界だからって深海に珊瑚礁はありえんだろ…
あ、さっきの人魚の国も深海か。
ちょっと、この世界の太陽の光ってどんなところまで届いてんの?
やっぱ異世界って色々おかしい。
いや、地球の常識とコッチの常識は違うんだろう。
そうだ、常識に囚われてはいけないって誰かさんが言ってたし。
やっぱ魚は危機感地の能力が高いっぽいな、もうどっか遠くまで逃げちまって、珊瑚礁があるのに魚が居ない。
ボッチは寂しいって…早く彼女見つけねぇと。
「ブッシュルオオオオッ!!!」
なんだぁ!?
突然俺の頬を触手らしきものが掠めた。
なんと俺はいつの間にやら白い触手らしきものに周りを包囲されていたのだ。
うわ、まさかコレって…
触手プレ…
「ブッシュルオオオオオ!!!」
うわっ、ふざけた事考えてる暇はねぇ!
コイツはどうやらアッチ系の事を考えないタイプの巨大なゲソだな、咄嗟に横に旋回して鋭い触手の一撃を回避した。
さて、攻撃してきたって事はやり返される覚悟はあるんだよな。
テメェが何を相手にしたのか思い知らせてやる、クラーケンめ!
「ゴガアッ!」
俺は口から黒い油を吐く。
そしたらそれは宙を漂いながら広がっていき、辺り全体がイカ墨に汚されたかの如くくろく染まっていく。
んじゃ…発火。
僅かに油に魔力を注ぎ、無理矢理発火させる。
ボオッ
「ブシュ!!?」
この巨大なイカ、クラーケンは火を見た事が無いのだろう、為すすべなく全身に纏わり付いた油に火が付き、どんどん全身が燃やされていく。
「ブッシュルオオオオオオオオ!!、」
やっべ、苦しさで暴れ出したな。
急いで奴から離れて距離を置く。
うわ、奴が触手を暴れさせる度に衝撃波が伝わってくる。
油断すると吹き飛んじまいそうだ。
奴は口から大量のイカ墨を吐き出しまくるが、逆にそのイカ墨に火が付いてもう大変な事になっている。
あのイカ墨、引火するのね。
目の前が海のはずなのに真っ赤なんだけど。
…そろそろイカ焼きも完成するだろ、俺は翼で炎を振り払い、クラーケンに纏わり付いてる油も全力で吹き飛ばす。
そして炎を振り払いきったクラーケンの体はこんがり焼けていて、見事なイカ焼きになっていた。
いっちょあがりっと。
でもダイオウイカってあんまり美味しくないって聞いたけど…
ま、クジラが食べるんだし大丈夫っしょ…
「シャアッ!」
『その獲物寄越せ!』
突然背後から声が聞こえたから振り向くと、そこには水色の鱗を持つ、長い体をした蛇がいた。
コイツは…シーサーペントか?
おい、初の竜種じゃねぇか!!!
…いや、二度めだわ。
俺の初めて返せあのブタ。




