トップゴッドチューバー・キュララの汚部屋突撃生配信!「みんな、ソウマのプライベートを暴いちゃうよー☆」
トップゴッドチューバー・キュララの汚部屋突撃生配信!「みんな、ソウマのプライベートを暴いちゃうよー☆」
満月の夜にヤンデレ村長キャルルがぶち抜いた101号室の壁の修繕が完了し、俺はようやく本来の静寂を取り戻した……かに見えた。
「ソウマ君、はいあーん♡」
「ソウマ様! ルチアナ様が私の取っておいたタローソンの半額プリンを食べましたの!」
「うるさいわねぇ! 神の恵みとして腹に納めてやったんだから光栄に思いなさい!」
金曜の夜。
俺の部屋のちゃぶ台は、完全に彼女たちの占領下にあった。
俺にリンゴを剥いて食べさせようとするキャルル、プリンの恨みでパンの耳を振り回すリーザ、そしてコタツ(まだ春先だが)を占拠して寝転がるジャージ姿の世界神ルチアナ。
大宇宙管理局カスハラ部の激務を終え、ただ静かに寝たい俺の願いは、今日も無残に打ち砕かれている。
「お前らなぁ……いい加減、自分の家に……」
俺がため息をつきながら言いかけた、その瞬間だった。
――バアァァァァンッ!!!
直したばかりの玄関のドアが、けたたましい音を立てて蹴り開けられた。
またか、と俺が額を押さえると、そこには眩いリングライトと最新型のエンジェルすまーとふぉんを構えた、金髪ツインテールの少女が立っていた。
「みんなー! こんキュラー☆ 神界ナンバーワン・ゴッドチューバーのキュララちゃんだよー!」
背中に純白の小さな羽を生やした下級天使、キュララ・アルセルラ(20歳)。
チャンネル登録者数は億を超え、月給は驚異の二億円。なにかと話題を振りまく超絶人気インフルエンサーだ。
「今日はね、なんと特別企画! 『謎に包まれた大宇宙管理局の凄腕執行官、ソウマの汚部屋に突撃生配信!』イェーイ!」
「……おい」
俺は低い声で立ち上がった。
キュララは俺の殺気などどこ吹く風で、カメラをぐいぐいと部屋の中に向けてくる。
「うわっ、コメント欄めっちゃ流れてる! 『ホントに突撃したww』『カスハラ部のヤバい奴だろ、消されるぞキュララ』……大丈夫大丈夫! 私の圧倒的アイドルオーラで、お堅い役人の素顔を丸裸にしてみせるから!」
キュララが部屋の中にカメラを向けると、ちゃぶ台を囲む三人の姿がバッチリと生配信の電波に乗った。
「えっ……ちょ、キャルル村長!? なんでエプロン姿でソウマにリンゴ食べさせてんの!? てか、リーザじゃん! 底辺アイドルのあんたがなんでこんなところに!?」
「きゅ、キュララ先輩!? 配信回さないでくださいませ、私の清純派サバイバルアイドルのイメージが!」
「いやあんたはただの極貧アイドルでしょ!」
コメント欄がさらに爆発する。
『村長と不倫同棲!?』『底辺人魚もいるww』『おい、あそこのコタツで鼻ほじってるジャージ女、世界神ルチアナ様に似てね?』
「あ、やべっ。私、今スッピン……」
ルチアナが慌てて『ルナミス新聞』で顔を隠すが、遅い。
「な、なんだこのカオス空間……!? ソウマの部屋って、こんなヤバいハーレム魔境だったの!?」
キュララ自身も想定外の光景にドン引きしている。
「おい、キュララ」
俺は冷静に、カメラを構えるキュララの前に歩み出た。
「人の家に勝手に上がり込んでカメラを回すのは、当世界線のプライバシー保護法および住居侵入罪に該当する。今すぐ配信を止めろ」
「えー! ソウマ君、堅いこと言わないでよ! これもエンタメじゃん! それに私、リスナーの期待には全力で応えるのがポリシーなんだから!」
キュララは得意げにウインクすると、突然、指を天に突き上げた。
「ホーリー・メイクアップ!!」
無駄に派手な閃光が部屋を包み込み、魔法少女風の変身シークエンスと共に、キュララは聖騎士の重装甲を身に纏った。
そして、どこから取り出したのか、彼女の手には重厚な『M4カービン』と対戦車ロケット『RPG-17』が握られていた。
「出たぁぁっ! キュララ名物、謎の近代兵器!」
キャルルが叫ぶ。
「さぁソウマ君! 私と絵になるバトルをして、同接を一千万人にまで引き上げよ——」
「室内で重火器を振り回すな、バカ」
俺は、一歩でキュララの懐に滑り込んだ。
彼女がM4カービンの引き金に指をかけるよりも早く、俺の左手が銃身を跳ね上げ、右手で彼女の手首を制圧する。
「えっ?」
魔法も神気も使わない、ただの合気柔術の極致。
体重移動とテコの原理だけで、キュララのバランスを完全に崩し、その体を床へと見事に投げ飛ばした。
ドサァッ!
「きゃんっ!?」
「銃器の不法所持、および発砲未遂。——ユニークスキル【規約執行】」
俺が冷たく宣告した瞬間、キュララが纏っていた重装甲が光の粒子となってフリーズし、ただの私服(ちょっと高そうなパーカー)に戻った。
「いっ、いたた……! ちょっと、マジで投げることないじゃん! 女の子だよ!?」
「女の子だろうが神だろうが、俺の睡眠時間を奪う奴には容赦しねぇ」
俺は床に倒れたキュララの背中に膝を乗せ、軽く腕を捻り上げて関節をキメたまま、落ちていた彼女のスマホ(配信カメラ)を拾い上げた。
「あ、痛い痛い! ギブギブ!」
「リスナーの皆様。彼女は現在、公務執行妨害および住居侵入で拘束されました。本日の配信はこれにて終了となります」
コメント欄には、
『キュララ瞬殺www』
『ソウマ主任まじカッケー』
『関節キメられながら悲鳴上げるキュララ助かる』
『スパチャ:10,000円(主任の残業代に)』
といった文字が滝のように流れていた。
「お前、月給二億も稼いでるトップ配信者なら、もうちょっとコンプラ意識を持て」
「うぅ……ごめんなさい……。でも、最近ちょっとネタ切れ気味で、ソウマ君の部屋なら絶対バズると思って……」
俺が腕の拘束を解くと、キュララは涙目で手首をさすりながら起き上がった。
「キュララ先輩! ソウマ様は私の大切な太客ですのよ! 勝手に再生回数稼ぎに使わないでくださいませ!」
リーザがプンスカと怒りながら抗議する。
「あんたねぇ、太客って……ソウマ君の月給三十万でしょ? 私なんて二億だよ? ソウマ君、私の方に乗り換えない?」
「お前みたいな騒がしいのはお断りだ」
「即答ぉぉっ!?」
キュララがガーンとショックを受けていると、ルチアナがコタツからぬっと顔を出した。
「ねぇキュララちゃん。月給二億なんでしょ? ちょっと私に五万——いや、十万貸してくれないかしら? 神の啓示ってことで」
「世界神が下級天使にタカらないでくださいよ! 見損ないましたよルチアナ様!」
101号室の人口密度とカオス度が、また一段と跳ね上がった。
「はぁ……。お前らなぁ、腹減ってないならもう帰れよ」
「えっ、ソウマ君ご飯奢ってくれるの!? やったぁ!」
「人の話を聞け」
結局、俺のボヤきは無視され、なぜかキュララが「お詫びに私がデリバリー頼むよ!」と言い出し、彼女のスマホ(自腹)で『ルナ・イーツ』の特上寿司セットが注文されることになった。
三十分後。
101号室のちゃぶ台には、豪華な特上寿司が並んでいた。
「わぁぁ……ウニですわ! イクラですわ! パンの耳とは違う海鮮の味がしますのーっ!」
リーザが涙を流しながら寿司を頬張っている。
「ソウマ君、あーん♡」
キャルルは俺に大トロを食べさせようと必死だ。
「もぐもぐ……ふぅ、やっぱ特上は違うわね。キュララちゃん、次は焼肉も頼んでいい?」
「ルチアナ様、図々しすぎません!? ……あ、ソウマ君、エンガワ食べる?」
「……どうも」
月給三十万の俺、月給二億の天使、年収一千五百万の村長、年収数千円の底辺人魚、そしてクレカ滞納の世界神。
経済格差も種族もバラバラな奴らが、俺の狭いアパートで寿司を囲んでいる。
(なんで俺の部屋が、こんな連中の溜まり場になってんだか……)
大宇宙管理局カスハラ部の激務で疲れ切った俺の休日は、こうしてまた、やかましくもどこか居心地の良い騒音の中で過ぎていくのだった。
「おいリーザ、醤油を絨毯にこぼすなよ。キュララ、室内でドローン飛ばすな。……ルチアナ様、俺のイクラ食いましたね?」
「あははっ、ごめんごめーん!」
この絶対聖域(101号室)の平和を守るため、俺のツッコミと物理制裁が休まる日は、まだまだ来そうにない。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「トップ配信者をワンパンで配信BANするソウマww」
「月給二億の天使に寿司を奢らせる流れ、最高!」
「101号室のヒロイン密度が限界突破してるww」
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次回第10話、
『朝チュン(物理)と、増える合鍵。ヤンデレ村長が「没収されないならOK!」と愛を重くする件』
に続きます! 引き続きよろしくお願いいたします!




